悲劇の妻フェレシアは一番目の子を妊娠した後、夫に軟禁されているように思われていたが、実は結構家庭では妻の権力が強い。
初めは元夫を恋しがって泣いてばかりいたが、元夫が再婚し子どもまで身篭っている事を知ってからは強くなった。

「もう帰ってきたの? もう少しゆっくりでも良かったのに」

「えっ………」

「ほら、夫は留守で元気がいいって言うだろう? でも、俺からしてみると、夫は留守で元気良くなくても良いんだけど」

「フェ、フェレシアッ……」

「冗談だよ(笑)だってリーセットに元気に生きていてもらわないと、俺、リオンさんからラルフを奪いたくなっちゃうかもしれないし」

「(絶対にフェレシアより先に死ねないっ)」

と決意した夫であった。



「ただいま、ラルフ!」

「おかえりなさい……」

両思いの夫婦だったら、おかえりなさい貴方。ごはん?それともお風呂?それとも俺?なんて会話がなされるだろう。
しかしこの国の上流階級でそんな素敵な言葉を言ってくれる妻は稀少だ。その中でも最も縁遠いのが、辺境伯夫人ラルフだった。

「キ、キスくらいっ!」

「進入禁止です」

「私はラルフの夫なのだぞ! なのに、週2どころか、年に二回しか許されないなんて! せめてキスや愛撫くらいっ!」

「どうしてそうリオンは性欲が強いんですか? 俺は年に二回でも憂鬱なのに……辺境伯家の男がもてない理由が分かります。可愛い(綺麗)な顔で毛深くて、おまけに性欲も強いとか……誰も夫にしたがらないですよね。リオルも可哀想に。でも、お母さまが婚約者を決めておいてあげたから、リオルはもてないって気にしないでも大丈夫だよ」

「リ、リオルにも兄弟をっ!」

「これ以上、性欲の強いもてない男を増やしてどうするんですか?」

ラルフは息子ですら最早、性欲が強くなってもてなくなると決め付けているのだった。

「だ、だが、我が一族も最近は両思いの夫婦もっ!」

「そんな奇跡に縋らなくても……リオルがいれば充分じゃないですか。とにかく、年に二回は譲れません。これ以上強要しようとするんだったら、年に一回になってその次は、日食に一回になりますよ(この世界では日食は20年に一回)」

「ううっ━━━━━。゜( ゚´Д`゜)゜。━━━━━」



さて、塩対応しかしない妻ばかりだと思われがちだが、世間では変態な夫を婿養子にしたと思われていたエミリオは、意外と夫に甘い対応なのである。
これは多分にエミリオの甘い性格と面倒くさがりが関係していると思われるが、世間の妻もこれくらいいい加減になるべきだと思われる。

「ただいま、母上。ギルフォードは?」

「ああ、閣議に出てくるらしい」

婿養子であるギルフォードは、すでにエミリオの領地の経営全般を担っており、自分の領地もある。ギルフォード自身には魔力はないが、その指令等は的確であり、領地の防衛や魔獣の退治などは一族の力を借りて滞りなく領地を守っている。
そしてその上で、最近は国王から親友にしては冷たい扱いを受けているが、信頼は厚く、閣議に出席をして意見を求められたり、外務大臣の席を用意され、かなり忙しい日々を送っている。その上で、妻よりも育児をしており、親戚からもいい婿を貰ったと褒められるのであった。
特に母からは、あんな良い婿はそうはいないと言われ、段々なんとなくエミリオはギルフォードを大事にしているのであった。

「ふ〜ん」

そういえば、最近していないな、と夫がいないと聞いて思い出したエミリオであった。最近といっても国王夫妻のように年単位ではなく、数日単位であったが若い夫が求めてくる夜は多い。
ギルフォードが忙しく、子ども達を寝かしつけている間に自分が眠ってしまうことがあり、まあ最近していないのであった。エミリオ自身はそれほど性欲が強いわけではないので、不満は無いが。

「今日は早く帰ってこれるみたいだな」

ギルフォードの現在地を魔法で確認すると、王城からここに戻ってくる途中のようで、あと10分もすれば着くだろう。

「まあ、仕事頑張っているみたいだから……」

どうせ、今夜は襲われるだろうからと思い、風呂に入って夫を迎えることにした。
どうせ襲われるのなら、恩を着せておけば、感激するだろうと思ってだ。

「ただいま……エ、エミリオっ!!!」





- 252 -
  back  






×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -