これまでずっと拒絶されていたリオンは、王妃のお陰で何年かぶりに妻を抱け、おまけに年に二回を勝ち取った?のである。
また国王の親族の青年たちは妻からリオンと同じようにゴキブリのように夜の生活を拒否または嫌悪されていたのだが、王妃のお陰で週二回、円満?に交渉できるようになった。

一般市民は知らなかったが、国王の関係者及び、親族の夫たちは王妃が鬼嫁だったことを知っているので、記憶喪失になっていることも知っていた。
しかし、一生記憶が戻らなければ良いのにと思い、誰もが積極的に記憶を取り戻そうとはしなかった。

ちなみにエミリオもクライスもエルウィンの記憶が無くなって以来面会をしていない。遠めで様子を見ていたが、隊長に悪の枢軸呼ばわりをされ、近づくなと命令をされていたわけであったが、小耳に挟んだのか王妃と一番仲が良かった二人とエルウィンが聞き、どうしても二人と会いたいと隊長に強請ったのだ。

隊長としてはエルウィンにお願いされたら断われないわけで。

「俺と皆さんとはこれまでどんなお話をよくしてきたんですか?」

「……そうだな。夫の悪口とか?」

「ああ、皆さん集まると夫の悪口を言うって奥様会ではよくあるそうですよね。公爵家の奥様と面談した際も、皆さん夫の悪口ばかり言って。皆さん、あなたに似て良い夫ばかりなのに、酷いですよね。ね、あなた」

「ふむ。皆妻を熱愛する良い夫たちばかりだ」

「でも、俺は夫の悪口を言っていませんでしたよね? クライスさんやエミリオさんの愚痴を聞いていてあげただけなんでしょう? だってあなたはこんな立派な夫なんですから、ね」

一番悪口が多かったのは言うまでも無くエルウィンである。クライスも夫に言いたい事は多数あるが、あまり言い過ぎると夫が聞き耳を立てているため、あとで愚痴愚痴と嫌みったらしく粘着質に責めて来るので、あまり悪口を言わないようにしていた。エミリオもそれなりに言ってはいたが、エルウィンほどではない。

「……エルウィンもそれなりに言っていたぞ。隊長が……早漏とか、早いとか、絶倫とか…」

「あ、それはそうかもしれないですね。陛下は情熱的というか、俺の裸を見ただけで出しちゃいますから」

それは早すぎ……と二人ともドン引きをしたが、これまで隊長はできなかったのである。二人の夫ユーリとギルフォードと比べてはいけないと反省した。

「それに入れる前にも出しちゃいますし、入れたときにすぐ出しちゃいます。けど、それって俺の事を愛していてのおとなので、俺は全然気にしていません(^▽^)むしろ、そんなあなたが愛おしいです」

「エ、エルウィン!!!!」

『早漏が愛の証とか言っているぞ……』
『ま、まあ……愛しているからすぐにイっちゃうんだろう』
『愛しているのもあるけど、経験が少なすぎるだけなのもあるだろう』
『ま、まあ。今回で大分経験を隊長もつんだだろうし……少しは早漏も改善されるかもしれないし』

「エルウィン、記憶が無くて心もとないとか不安とか、そういうのは全く無いのか?」

「いいえ、全く。陛下がいてくれているお陰かもしれません。陛下がこうしていてくれているだけで、何の不安もないですし、安心します。きっと記憶を失う前もこんなふうに仲の良い運命の夫婦だったんですよね」

運命の夫婦と言えばそうだったかもしれない。だから二人はあいまいな笑顔を浮かべた。

「おお、まさしく私とエルウィンは運命の夫婦だっ!」

「あなた愛しています。あなたも俺と一緒で幸せですか?」

「当たり前だっ! 愛している! こんな幸せな日々は感じた事がないっ!」

あ〜あ、イチャラブ夫婦、鬱陶しいと二人が思った瞬間だった。エルウィンは実は隊長のお膝の上にちょこんと座って、隊長に抱っこされていたのだが。

「……何やっているんですか? 隊長、気持ち悪いです。離して下さい」

「「「エ、エルウィン?」」」」

「き、記憶が戻ったのか?」

「は? 何の話ですか? いいから隊長離してどっか行ってください」

シッシっと追い払うようにエルウィンは、隊長を疎ましいものでも見るかのように追い払おうとした。

しかも呼び名があなたから隊長に戻っている。これはどう見ても記憶が……

「今いったい何があって、記憶が戻ったんだ?」

「隊長何かしましたか? ああ、泣いてないで考えたらどうですか!!!???」

「隊長! 取り合えず時間を巻き戻したら!!!???時間がなくなります」

タイムリミットは5分。5分の時間しか巻き戻せないのだ。

「おお!!!!そうか!!!!!」



「あなた? どうかしましたか?」

「無事戻ったようだな……」

ちなみに時間を戻す魔法は、基本的には施術者以外、記憶はない。しかし今回、隊長はこの事態をエミリオとクライスにも一緒に解明してもらいたいがため、二人の記憶をそのままにするようにして記憶を巻き戻した。当然エルウィンに記憶は無い。

『っていうか、クライス! お前、せっかくエルウィンの記憶が戻ったのに、隊長の味方をしてどうするんだ』

『すまん……つい』

『いや、クライスの判断は正しい! エルウィンは記憶が無いほうが幸せなのだ!!!!!!』

そう、そう思うのでついクライスも隊長の味方をしてしまったのだ。
クライスも今回の件で考えた事があった。陰険で好きになれない夫だが、もし自分が記憶喪失になったら。
何も知らないまま、夫に愛されて幸せになれたかもしれない。何も知らないほうが幸せということもある。そんなふうに思ったのだ。

『さっきのシーンを思い返してみると、最後、エルウィンは隊長に幸せかと聞いて、隊長は幸せだと答えた』

『ひょっとすると……この隊長の魔法、解除条件は。そもそもこの魔法何がなんだか分かっていないが、推測で隊長のひもじい思いから作り上げられた魔法だと思われる。そのひもじい思いが無くなって、幸せだと言ってしまったから解けてしまったんじゃないか?』

『そ、それではこれから先、私は幸せだと感じては駄目なのか!!!!??? 毎夜エルウィンのパイパンを堪能できて、好きなだけ射精ができて、これ以上ないほど幸福感を味わっているのに、不幸になれと!!!??エッチをしたら駄目なのか!!!……(´;ω;`)』

『いえ、そういうわけじゃないでしょう。エッチしていても幸せだと感じていても、これまで記憶は戻らなかったんですから。ようはエルウィンにそう言ってはいけないんじゃないのかな?……幸せだと答えたので、エルウィンは魔法を解除しても良いと解釈して、魔法が解けた? のか、幸せという言葉が解除コードなのかもしれません』

『なら、エルウィンに幸せだと言わなければそれで良いのか?』

『まあ、そうですね。たぶん……もし間違っていってしまっても時間を戻せば良いみたいなので、もし戻ったら今回のようにすぐに時間を戻しましょう。慌ててはいけませんよ隊長』

『おおっ! 皆、よくやってくれた! 悪の枢軸などと呼んで悪かったな。私の味方をしてくれるなんて……(´;ω;`)』

みな、同じ感想があったのだ。



エルウィンは記憶が無いほうが良い、と。




その夜、隊長は何時もどおりエルウィンと愛し合っていた。

「あなた、今日のはどうですか?」

愛し合った後、風呂に入ったが、エルウィンは再び隊長を刺激するようなことをしてきた。

物凄く刺激的な下着を着ていたのだ。普通の人が着たら、下の毛が見えてはけないような下着もエルウィンなら何の問題もなくはけれるのである。

「す、素晴らしいっ!!!……はあはあっエルウィン、私をそんなに誘惑してどうしようと……っ」

「あなたが喜ぶかと思って……好きじゃないですか?」

「好きだ! 好きだ! 好きに決まっているっ! まるで天国にいるかのようだ!!!!」

隊長はエルウィンから下着を剥ぎ取ると、その下着を大事そうにもらった。毎回、エルウィンは脱ぎたての下着をプレゼントしてくれるのだ。これまでは洗いたての下着しかくれなかったが、今は脱ぎたてのをくれる。なんて幸せなのだろうか。

そして次に着てもらう下着をチョイスし、悩んで、エルウィンに渡した。

「次はこれを」

「………これを何なんですか?……隊長」

エッチな下着を渡した瞬間冷気が漂った。

「エ、エルウィン??!!」

な、何故だっ!! 幸せなど言っていないのに!!

「そ、そうだっ、時間を巻き戻さないとっ……(´;ω;`)」

そして戻したが、5分戻した時点は隊長が下着を選んでいる場面に戻ってしまった。恐る恐る振り向くと、冷気が同じように漂っていた。

「エ、エルウィン?」

「隊長……何で、俺の下着を持っているんですか?」

「な、なぜっ!」

記憶が戻ってしまったのか? ま、まさか、天国だと言ったからか?そんな言葉が解除コードなのか?
これ以上時間をまき戻したくても、先ほど時間を戻した時が、巻き戻し地点となるので、あの時から5分からしかどんなに頑張っても時間を巻き戻すことができないのだ。敗因は下着を選ぶのに時間をかけすぎたせいだった。

「エ、エルウィンが下着をくれたんだっ! わ、私へのプレゼントだと言ってっ!(´;ω;`)」

「俺がですか? どうして……というか、あの法案のことで隊長を怒ってから、記憶があやふやなんですけど。もう夜ですよね?」

「エルウィンが……週2の変わりに脱ぎたてのパンツをくれるとっ……そう言ってくれて。これはエルウィンからの私へのプレゼントなんだっ!」

記憶を失っていたことを言ってはいけない。言ったらどんな目に会うかっ!
勿論、記憶をとりもした時にどんなに怒られるか覚悟をしていた隊長ではあった。目の前のパイパンのほうが大事だったのだ。
しかしいざ冷酷なエルウィンを目の前にすると……言えない!

「そう、だったんですか? そう言われればそんなような?」

「そうなのだっ! さあ、もう寝よう」

翌朝、隊長はエルウィンが記憶喪失だったことを内緒にするように伝達をした。エルウィンや隊長に感謝をしてきた夫たちは秘密厳守を誓ったし、自分の息子のルカでさえ隊長は買収をした。毎回のようにアンジェとの結婚を餌にしてげある。

「本当にばれないと思うか?」

「さあ……でも、俺たちも隊長に味方をしていた事がばれたらエルウィンに怒られるだろうし。このまま何も無かった事で済ませるのが一番だろう」

「本人も、あなたとか言いながら隊長に甘えて、エッチしまくっていた日々なんか知らないほうが幸せだろう」


冷酷で夫を禁欲させる妻が戻ってきて隊長は泣いた。泣いたが、あの満たされた日々を糧に細々と生きていた。

しかし皆は忘れていた。隊長の受精率の高さを。

「隊長? 俺に何をしたか、洗いざらい話して下さいね(^▽^)」

エックスデーは隊長の念願の第三子妊娠発覚の日だった。



END
久々に隊長エルのカップル楽しかったですw
何か感想があれば喜びます♪




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