「これで引き裂かれた運命の恋人たちが、再び夫婦になれますね♪(^▽^)」

夫たち三人はエルウィンは記憶のある間は鬼嫁で、記憶を失ったら悪魔になるんだ………と、誰も手出しのできない最強っぷりに戦いていた。

夫である隊長はエルウィンを熱愛しているため、暴走を止められない。
リオンもリーセットも自分よりもはるかに弱いエルウィンは王妃なため、最強の隊長もついており、どうやっても手出しは出来ない。

だからといって最愛の妻達が奪われるのを黙ってみているわけにもいかないのだ。

「王妃様っ! ラルフは私の初恋の人で、私にとって見ればフェレシアがラルフを奪っていたほうなんです! やっと取り戻したのに奪わないで下さいっ!」

「私とて同様です! フェレシアは私の運命の恋人で、ただ出会うのが遅かっただけでその男に奪われたんです! 今幸せに暮らしているのに、子どもたちからも母を奪わないで下さいっ」

と必死に懇願をしていたが……


「今まで、フェレシアさんとラルフさんの仲を壊して幸せにしてきたんでしょう? 今度はリーセットさんとリオンさんが不幸になる番です(^▽^) 大丈夫ですよ、フェレシアさん、ラルフさん。陛下の名にかけて二人が復縁できるようにしますから。ね、あなた?」

「お、おお……そうだな」

と、こう隊長は答えるほかない。エルウィンに駄目だなど言えるはずは無かった。特に昨夜も甘い夜を味わったばかりの隊長にとって、ここで拒否をしたらまた今夜のパイパンがなくなる!と思ったことは間違いない。

「ラルフ! 私を捨てないでくれ! リオルだって父である私がいなくなったらどんなに寂しがる事かっ!」

お互いの夫たちは分かっていた。身の程は弁えていたのだ。妻に愛されていないと。愛されていないが、離婚は出来ない。そのことに胡坐をかいていたが、今は王妃のせいで離婚(結婚無効)ができてしまう!
だから愛に縋るのではなく、子どもが可哀想だと、子どもを盾にするしか思いつかないのだ。

「フェレシアと二人きりにさせてもらうわけにはいきませんか?」

「駄目だ駄目だ駄目に決まっている!」

「当たり前だ!!!!」

普段冷静沈着、陰険が服を着ている男と言われるリーレットすらもう冷静で入られなかった。リーセットは本当だったら戸籍上とはいえ愛する妻の夫だったラルフを許していない。
しかし生かしたのは、ひとえに病気のためフェレシアを処女のままにしておいたことと、リオンの思い人だったこと、そしてフェレシアを生かすためだけに、その命があったのだ。こうして再び会わせることも物凄いストレスになっているリーセットだった。

「王妃様……駄目ですか?」

「エルウィン! 夫たちの立場も考えてやれ! ここで二人きりにさせたら急性ストレス性胃炎でリオンもリーセットも死んでしまうぞ!」

隊長は優しい。ここでエルウィンが二人きりにさせてあげてくださいと言われてしまえば、隊長は拒否できない。なのでエルウィンに頼まれる前に、逆にエルウィンに頼んでみたのだった。

「そうですね、あなたにそう言われては……なら、リオンさんとリーセットさんのために二人きりにはさせませんが、お二人が邪魔をしないように、あなたが二人を動けないように拘束し、話せれないようにして、ただ見守るだけにしましょう。お二人はフェレシアさんとリオンさんの決めたことに従ってくださいね(^▽^)」

ある意味、密室にされるよりも拷問である。見ていて結果は分かるが、口出しも手出しも一切出来ないようにされてしまったのだ。

「ありがとうございます、王妃様」

「ラルフ、君がいなくなってから……ずっと心配していたんだ。元気になったって聞いていたけど……幸せだった?」

「フェレシアこそ………俺が見捨てて逃げて……俺を恨まなかったのか?」

「初めはね……あんなに尽くしたのにって思わないでも無かったよ。俺の幸せはラルフがいるだけで良かったのに……どんなに生活が苦しくてもラルフがいてくれるだけで、生きていてくれるだけで幸せだった。だから、今ラルフが生きている姿を見れるだけで、凄く幸せなんだ」

「フェレシアっ………」

「やっぱりこの二人が再婚すべきですよね? あなた」

その問いに隊長は答えることが出来なかった。リオンの親友だからである。しかし否定も出来ない。

「ずっと好きだったよ、ラルフ……今でも一番愛しているのはラルフだよ」

「フェレシア……俺もだ。俺も……フェレシアがこの世で一番大事な……汚す事のできない大事な思い出だ」

もはや夫たちは涙目どころか、号泣である。お互いの妻が、一番大事で愛し合っていると言っているのだから|ω;`)

「でもね……もう一度夫婦になって、ラルフに抱かれるのかって想像したら、無理かなって(笑)って思うんだ」

「フェレシア…」

「正直に言えばね、リーセットに抱かれた純潔じゃない身体でラルフに抱かれたくないって言うのもあるんだけど……もう何年間も俺はリーセットの妻で、それで納得して生きてきたんだ。リーセットは強引で、俺の気持ちなんか考えてくれなくて、恨んだときもあったよ。でもね、俺の事を愛しているのは嘘偽りないし、結婚してから、ううん、結婚する前もね、大事にしてくれていたんだ。ラルフを支えることに必死だった俺が、唯一頼れたのは皮肉な事にリーセットだけだった。ずっと夫として尽くしてくれて来たんだ。ラルフより愛しているかって言われたら……ごめん、二番目だよって言うけど。でも、リーセットのことも愛しているんだ。捨てたら可哀想だろう?」

というか、捨てようとしても絶対に無理だろうし、陛下のお力で離婚できたとしても、新しい新居にまでついてきて、絶対にラルフと再婚させてくれないよ、と笑った。

「そうだね。その通りだよ……俺なんかよりもきっとリーセットがフェレシアを幸せにしてくれる。ありがとう……リーセット、フェレシアを大事にしてくれて。君に託した事、間違いじゃなかったね」

大間違いであるが、フェレシアもラルフもお互いの夫が結託しまくっていたのを知らないので、これで良いのであろう。

「俺も……王妃様にフェレシアと結婚しろと言われて……どうしようとパニックになったんだ。フェレシア、君は俺にとって汚してはいけない存在で……夫婦でいた間も手も握ることも出来なかった。俺はフェレシアを……結婚していたのに性的な目で見ることができなかったし、今も……愛しているし、幸せでいて欲しいけど……俺がフェレシアを幸せにしてやることは、たぶんできないと思う」

「だよね……今さら、二人でベッドに放り込まれたって何して良いか分からない(笑)」

ようは、二人とも妻属性&ラルフが特に性欲も無い、というか潔癖症で、夫婦百合生活が長かったせいだろう。今さら再婚させてくれても、という感が否めないのであった。

「それに、俺もフェレシアと一緒だ。リオンは俺のために……たくさん尽くしてくれた。俺の面倒を見てくれて、俺のために治療法を見つけ出して……今生きているのはフェレシアとリオンのお陰なんだ。リオンを尊敬しているし感謝をしている。ここでリオンを捨てたら……」

その割には、普段はゴキブリのようにリオンを軽蔑し、ベッドにすら滅多に寄せ付けない(一緒にも寝てあげない)のだが。

「ありがとうございます、王妃様。でも、俺たち……このままで良いんです。お互い今の夫を捨てようとは思いません」

「……良いの? 本当に。本当に愛し合っているのはこの二人なのに」

「はい。こうして再び会わせていただけたことを感謝します。ラルフがこの世に生きているとはっきり分かっただけで、薔薇色になりました」

エルウィンはそこまで言われると、無理矢理結婚しろとも言えなかった。

「でも……フェレシアさんはリーセットさんで満足していても、ラルフさんはリオンさんで満足していないんでしょう。捨てられないけど、エッチはしたくないんだし。リオンさんが可哀想なことには変わりはないじゃない?」

「………そ、そうですけど! か、改善します!」

ここで改善すると言わないと、フェレシアの前でセックスレス云々、これまでのリオンへの所業が数々暴露されてしまう。フェレシアには知られたくないこと多数だったので、ラルフは改善すると言うしかなかった。

「本当?」

「本当です!」

「だって、良かったね。リオンさん(^▽^)あ、あなた、そろそろ二人を元に」

「あ、ちょっとだけ待ってください。王妃様。あと一分だけ」

フェレシアが夫たちの拘束&沈黙の魔法を解くのをあと一分だけ待って欲しいと頼んだ。

「俺、ラルフの死体(人形)を前に、生きている間にキスをしたかったなって後悔したんです……だから」

フェレシアはラルフを抱き寄せると、そっと触れ合うだけのキスを落とした。抱き寄せて、一分の間、ただ触れ合うだけの口付けを。

「リーセットや辺境伯様が動けたら、絶対に邪魔をすると思ったので。最初で最後の思い出です……嫌だった? ラルフ」

「ううん……」

意外と夫属性だったのはフェレシアのほうだったかもしれない……

それはさておき、動けるようになった夫たちの絶叫は……

ギャアァァァァ━━━━━━(|||゚Д゚)━━━━━━!!!!!!
( ||¶Α¶`)がーん

叫び、泣き、隊長にどうか時を戻して欲しいと、土下座をして懇願さえしていたのであったが。

全て妻であるエルウィンの暴走の結果であったが、本人は全く気にしていなかったし、夫である隊長も収集をつけようとはしなかった。いや、できなかったのである。



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