名プロデューサーになったつもりのエルウィンは張り切ってラルフとリオンの修復を試みていた。
どう考えても普段のエルウィンとは違うので、見ているクライスやエミリオはもうどうするべきか分からず、放っておく事に決定したわけだが。

放っておかれた一番の犠牲者ラルフは、王妃が夜のベッドの配置やリオンにプロポーズの指導までしているのを戦々恐々と見守っていた。
ラルフは病気になってから、妻であったフェレシアと看病をしてくれていた夫リオン以外と殆ど交流がない。結婚しても引きこもりの生活をしていたため、助けを求める友人や知人もいない。そのため王妃エルウィンの暴走を止める術は無かった。
もう少し社交的であったのなら、夫の従兄弟の妻エドガーに助けを求めて、弟を諌めてもらう事ができただろう。

「リオンさん、やはりお話を聞いていると突然何を言わずに押し倒したのがいけなかったのだと思います。だから今度はどんなに幼い頃からラルフさんを愛していたか、を強調してプロポーズをしましょう! で、勿論すぐに手を出してはいけません! 結婚式もしていないそうなので、結婚式をして、それからハネムーンに出かけ、ハネムーン先のベッドメイクも完璧ですから! そこで蜜月を過ごしてきてくださいΨ( `▽´ )Ψ」

「はい! ありがとうございます! 王妃様!!」

リオンは分かっているのだろう。王妃様にここまでプロデュースをされたらラルフは断わりきれないということを。だからニコニコ笑って、嬉しそうにしているのだ。



「あの!……違うんです! リオンからプロポーズがなかったとロマンがない初夜だったとか! リオンが性欲が強すぎるとか! 毛深すぎるとか!……大きすぎるとか! そんなのどうでも良いんですっ」

「ラルフさん、じゃあ何が問題なの?」

エルウィンが今夜は毛を剃るようにとか、今夜は一回に納めておこうとか、ロマンチックに行為を進めてくださいね、と具体的になるにつけラルフは気が重くなっていった。だいたいやり直しなのに、ラルフの目の前でセッティングしている意味はあるのだろうかと、どうでも良いことすら思っていた。

「………俺は、たぶんラルフを受けいられないのは……妻を捨てたからなんです」

「ラルフ! 君はまだフェレシアのことを!? もう気にしていないと言っていたじゃないか!」

「そうです! そう言いました。そういうしかないと思っていたんです……そう思い込まないと……もうフェレシアの人生には俺はいてはいけないからっ。俺といたらフェレシアは幸せにはなれないから!………俺に尽くして尽くして……そんなフェレシアを疎ましく思って……逃げた俺が、そんなことを言えるわけはないんです!……でも、俺が愛していたのは」

「要するに、ラルフさんは前妻のフェレシアさんのことが忘れられずに、リオンさんを愛せないわけなんですね? なら簡単ですよ。ラルフさんはフェレシアさんとやり直せば良いんです(^▽^)」

「お、王妃様!! な、なんて事をっ! ラルフは私の妻で、今更フェレシアなんかに渡すことなんかっ!」

「王妃様……俺も、今更フェレシアの元になんか戻れません。フェレシアも夫がいて子どももう二人もいるのに……」

「でも、話を聞くと、愛し合っているのはフェレシアさんとラルフさんで、リオンさんもリーセットさんという方も横恋慕でしょう? 潔く身を引くべきなんじゃないかなあ?」

「陛下〜〜陛下〜〜〜!!!!!隊長、助けてください!!!ヽ(´Д`ヽ)(/´Д`)/」



しかしリオンが隊長に助けを求めた所で、隊長にはどうにも出来ない。

「エ、エルウィン! 私はリオンとラルフの仲を取り持って欲しいと願ったが、ラルフとフェレシアを復縁させて欲しいとは」

「だって、本当に愛し合っているのはラルフさんとフェレシアさんなんでしょう? 愛し合うもの同士が結ばれるべきです! 俺とあなたとのように」

隊長は優しい。自分が満たされている時はその幸せを分け与えてやろうとするほどに。しかし、一番大事なのはエルウィンであって、エルウィンの気分を害させてまで親友に尽くす気はない隊長であった。

「そ、そうだな……よし、フェレシアをここに連れてこさせよう」

「た、隊長っ!!!!」

「俺もフェレシアと会う気はっ」

「エルウィンの言う事も一理あるぞ。お前たちは問題を棚に挙げて、解決しようとしてこなかった。フェレシアとラルフとの間に蟠りがあるままでは、このまま一生シコリが残るであろう。ここで、一度前妻と話し合って心の蟠りを取り除くべきだろう」

リーセットとリオンの間には取り決めがあった。生きているうちには二人を会わせない。フェレシアとの約束で、ラルフの死に目にだけは会わせることにはなっているが、少なくとも何十年後のことだ。今、会わせるつもりはなかった。

しかし流石にリオンとリーセットといえども、国王(王妃)の命令には逆らう事ができず、フェレシアとラルフを会わせることになってしまった。ただし、お互いの夫の監視の下という条件でだ。

開催者、エルウィンと隊長。監視役、リオンとリーセット(無茶苦茶不本意)

「ラルフ……本当に生きていたんだね。良かった」

フェレシアはリーセットの子を生んだ除隊した後、ほぼ監禁生活のような日々を過ごしていた。ラルフは生きていると聞かされていたし、実際に彼の手紙も読んだ。それでも元気になって生きている姿を見れて、思わず涙ぐんだのだ。

「フェレシア……俺は、フェレシアに会わせる顔なんてないのにっ……」

「良いんだよ。生きていてくれるだけで……生きている姿を見れただけで、幸せだよ」

「酷い事をたくさん言ったっ……」

「そうだね……初めは凄くショックだったよ。でもね、俺も悪かったんだ。ラルフの気持ちも考えずに、俺が勝手にラルフの負担をかけることばかりしていた。ラルフは俺と結婚もしたくなかったし、看病をされるだけの生活を厭っていたのに。ただ、俺はラルフと一緒にいたくて……ラルフがどんなに結婚を止めたほうが良いと言っても聞かず、無理矢理結婚をしてもらったようなものだし。俺の自己満足のために、たくさん我慢をさせたよね。ラルフは誰にも面倒をかけずに死にたがっていたのに……」

「フェレシア……フェレシアのお陰で、フェレシアが諦めなかったお陰で、今生きていられるんだっ……どんなに感謝をしても仕切れない」

これにはラルフの夫であるリオンはギリギリしていた。影でフェレシアが買った薬を高価な薬と入れ替えていたのはリオンである。今ラルフが生きているのはフェレシアのお陰なんかじゃなく自分なのに!!!と

「仲直りできたよね? じゃあ、お互いの夫に引いてもらって、ラルフさんとフェレシアさんが復縁をすべきだと思うんですけど、どうかな?」

「え?……あ、あの……王妃様?」

「だって、どう見ても、今も愛し合っているのはラルフさんとフェレシアさんだよね? ラルフさんはリオンさんのこと愛していないし、フェレシアさんもリーセットさんのことを愛していないし」

「待て! エルウィン」

「リーセット! エルウィンは王妃だ! 昔のようにただの部下として扱うことは許さん!」

実はエルウィンは分隊長リーセットの直属の部下だったのだ。隊長が当時唯一の既婚者(安全パイ)であった分隊長リーセットの部下として配置したわけであった。

「……申し訳ございません。王妃様っ! しかし、今はもうフェレシアは私の妻であり、子どもも二人います。今更幸せな家族を引き裂かないで下さい!」

「だって、幸せなのって夫のリオンさんとリーセットさんだけなんでしょう? 今でも奥さん二人が不幸なんだから、今度は奥さん二人に幸せになってもらって、夫二人が不幸になっても良いんじゃないかな? 子どもはラルフさんとフェレシアさんの子どもとして育てれば良いと思います(^▽^) 陛下なら、離婚はできないですが、結婚無効の宣言をしてもらます。そうすれば晴れて独身になれますし。昔夫たちの事情で離れ離れにさせられた純愛の二人が結婚できるんです。良かったですよね、あなた」




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