「エミリオ分隊長の赤ちゃん可愛かったですよ。セシリアちゃんって言うんです。ルカのお嫁さんになってくれないかなあ」

三男だからお嫁に来てもいいよね。ウィルバーもエミリオ分隊長に似ているし、どっちでも良いなと思いながら隊長ににこやかに話していると、隊長は泣いていた。

「エミリオは……サラと長男が同じ日に生まれたのに、私たちにはあれから子どもはできていないのに、その間にエミリオは二人もっ……」

「仕方がないじゃないですか。ギルフォード王子は良い夫だし、そもそも隊長があのお二人を結婚させたんでしょう? 隊長、結婚運、エミリオ分隊長たちに奪われちゃったんじゃないですか? あ、あと兄のところとかも」

隊長は無茶振りをするが、何故か隊長がくっつけた夫婦は上手くいくんだよな。兄なんか、隊長と従兄弟と結婚して大丈夫なのか? と心配したけれど、兄はどうやら夫に恋しているようで……始めは隊長を叱ったんだけど、良い縁談を持ってきてくれたと最近は感謝をしているけれど、褒める様なことは言っていない。

「私ももっと子どもが欲しいのだっ!」

「二人いれば充分でしょう……」

「正直に言えば、エッチをしたいのだっ!!」

「……この前素股させてあげたでしょう」

「たったの一回ではないか!!! それは素晴らしかったが、たったの一回だし、交われていないので、エルウィンと一つになりたいのだっ!」

「俺はもう隊長と一つになる気はありません。素股もクライス様の命令がなければしなかったでしょう。王妃として二人子どもを儲けた事でお役目ごめんになりました。何度も言っていますがもう隊長には騙されません。もう二度とエッチはしません! 分かりましたか!!!???」

いつもだったら隊長は盛大に泣く所だった。しかし今日はショボンとはしているが、泣かない。何故なんだろう?悪い予感がする。

*****
俺は政治に関与をしていない。王妃になっても子育てをしながらのんびり過ごしている。

国賓を迎える時や、儀式や夜会などには参加するが、そもそも国賓を迎えることじたい殆どない。そう、誰もがこの国とは余り関わらないように、しかし失礼の無いように国交をしているようだ。皆、夜会ばかりしていたら面倒だということもあるのか、他国のように毎日のように開かれる事もない。

しかし、今日は隊長が国王として勅令を出すと言われ、俺も王妃として参加している。どんな勅令を出すんだろう。国王自ら法を制定するほどの重要事項ってあったのだろうか。
この国問題はあるが、伝統にも煩い国なので、滅多に法律を変えたりしない。誘拐が合法とかどんでもないものもあるけど誰も変えようとはしないし。

「王妃陛下。お初にお目にかかります。私は辺境伯リオンと申しまして、恐れ多くも陛下の顧問件親友に命じていただいております」

「貴方がリオン辺境伯閣下なのですね。陛下よりお話をよく聞いています。何でもとても気の合う友人ができたと喜んでいました」

「ありがとうございます。こちらが私の妻のラルフです。私と陛下のように王妃様と仲良くなってくれればと思い連れてきました」

「こんにちは」

ラルフさん、魔力高いなあ。それはまあ、辺境伯家といえば、開祖の名門だし当然だろう。俺は庶民に近い貴族だったけど、今は近くにいる人は皆高貴な家の出で、魔力も高いので、辺境伯夫人ラルフさんと接しても恐れ多いとかは思わないようになってきた。

「あの……申し訳ございません」

「え? 何で謝るの?」

「俺のせいで、こんな法令が……」

こんな法令? と思っていたら、隊長が玉座に座り法令を発布した。

「最近の妻たちは夫を蔑ろにし、大事な夜の生活を断わる鬼嫁が多くなってきた! そのため欲求不満になった夫たちは仕事も手につかず、子ども達にもかわいそうな目でいずれ見られるようになり、夫婦生活が悪化し、家族の関係も悪くなる! だからここに法を制定する!!! 週に二回の性交渉を義務化することにする!!!!」

「陛下万歳!!!!」

「陛下、素晴らしい法案です!!!!」

「陛下一生ついていきます!!!!!!!!」

「陛下、妻の次に愛しています!!!!!!!」

と、一部の妻に愛されていない夫たちからの熱烈な歓迎を受けながら、法案が発布された。

一方、ブリザードのような空気を纏っているのは妻たちだった。

「クライス様とエミリオ分隊長がいたら一緒に隊長をボコって貰うのにっ!」

「申し訳ございませんっ……止められなくて! あんな法案を出したのは、俺がリオンを受け入れなかったせいなんです! 陛下と一緒にあんな法案を作っているのを知っていたのに、俺はリオンを拒否し続けました!」

「えっと、ラルフさん。ラルフさんは別に悪くないよ。俺だってずっと隊長を毛虫のように寄せ付けなかったし。隊長は暴走したら何をしでかすか分からないって知っていたから別に平気だよ」

アホな法案を作って恥ずかしいと思う心は盛大にある。隊長は自分のこことは言わなかったが、誰が考えたって自分の利益のために隊長が考えた法案だって分かるだろう。国王自らセックスレスなんですと叫んでもいるも同然だ。あとで怒られるって分かっていて、どうしてああいうことをするかな。
しかし、一部の夫からは尊敬され歓迎されている法案だな。そんなに妻に拒絶されている夫たちは多いのかな。
まあ、妻に嫌われていて無理矢理結婚をする夫が多すぎるから仕方が無いのか。

「俺は毛虫じゃなくって、リオンをゴキブリのような目で見てきました。あんなに綺麗な顔をしているのに、どうしてあんなに性欲が強いんだろうかとか、綺麗な顔で大きすぎるとか、毛深すぎるとか……もう、どうでもいいことまで全部が気になって……でも、もうこんな法案ができてしまった今、リオンを拒否できないんですよね」

「いや、そんなことはないでしょう。夫たちは喜んでいますが、とんだザル法案だって分かっているのかな?」

俺はラルフさんと話しながら、世の中には俺よりも鬼嫁がいるって分かって安心した。ラルフさんは総合計、俺よりもはるかに少ないほどしか夫に身体を許していないみたいだった。

「子どもまでできたのに、俺は……どうしてリオンを受け入れないのか。子どもにも悪影響があるでしょうに」

「まあ、仕方がないでしょう。愛してもいない男とセックスしろって言ってもね。嫌でしょう」

クライス様なんかはよく愛してもいない夫と寝れるんだと関心するくらいだから。まあ、クライス様プライドが高いから、夫と不仲なのを知られたがっていないし、結婚したからにはって覚悟を決めている偉い方なんだと尊敬しているけど。

「無理に妥協する事もないと思いますよ。嫌ならこれまでどおり、拒否し続けるべきだと思います!!!!」

「はい……ありがとうございます。王妃様っ」

あんなに罪悪感を抱いて、良い人だよな。ラルフさん。あの人とならエミリオ分隊長やクライス様とじゃあ分かり合えない話もできそう。

「ラルフさん、話が合いました。またリオンさん、王宮に連れてきてくれないかな?」

「おお、気が合ったのか!? リオンの妻は家に閉じこもってばかりいるそうだから、良い話し相手になるとリオンも喜ぶだろう!」

「俺が辺境伯家に遊びに行ってもいいですしね」

俺がにこやかに話すから、隊長は今日の法案を怒られると思ってビクビクしていたようだったが、段々モジモジして俺に何かいいたそうにしていた。

「どうしたんですか? 隊長」

「……そ、その今日の法案で週二回の夫婦生活は義務化された! だから、エルウィンっ今日こそっ!!!!」

「しませんよ」

「な、何故だっ!! 法令でっ!!!???」

「法令って……破ったらどんな罰則があるんですか?」

罰則って、勝手に国が決めた法律だから制約の誓をしているわけでもないし、破ったってどうなるっていうんだろう。

「罰則はっ! その週、義務を果たさなければ、次の週に4回にっ」

「で、その次破ったら、その次の週は今度は6回ですか。で、積み重なっていって、毎日になるわけですか。で、それを破ったらどうなるんですか?」

「どうなるって!(´;ω;`)ま、毎日するんだっ」

「だからしないって言っているでしょう!!! 罰則だって、何の強制力も無いじゃないですか! なんか罰を加えますか? 鞭打ち? 処刑? 愛する妻を傷つける罰則なんて隊長作れないでしょう!? だからザル法案だって言っているんです! 分かったら外国にこれ以上笑われるような法案作らないで下さい!」

罰則が無い法案なんて、誰も守るはずは無い。何か罰則をくわえようにも、愛する妻を苦しめるような過酷な罰則など夫たちの誰もが嫌がって作れるはずがない。
要するに義務が積み重なっていくだけの罰則なんて、無視していれば終わりだ。どうしてこんな抜け穴思いつかないのかなあ。作る前に。

「ひ、酷いっ!!! 一生懸命リオンと考えたのにっ!(´;ω;`)(´;ω;`)」

「どっちが酷いんですか!!!! こんなアホな夫だと国中に知られた俺の立場は?!!」

「だってだって!!! エッチさせてくれないからっ!!!」

「仕方がないでしょう!!! 俺は異性愛者で、男とエッチしたくないんです! 特に隊長みたいな変態とはっ! 非常識で恥ずかしい男とはねっ!!!!」

「わあああああああああ!(´;ω;`)(´;ω;`)(´;ω;`)」

「泣きたいのはこっちです!……ああ、もういっそ記憶を失ってこれまでの恥ずかしい情けない隊長の記憶を全部消去して、同性愛者になれればっ!」

俺はそのとき心底そう思った。

「ひ、酷いっ!(´;ω;`)」




「…………貴方、誰ですか?」

俺の知らない男が泣きながら目の前に立っていた。


*待望?の隊長編です!



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