僕は王子だった。ただ第四王子で中小国でしか過ぎない。一応次の王太子の親になるという立場だったけれど、それにそれほど重きを得ていなかった。

「ようこそ、ギルフォード王子。わが国にいる間は私が王子の警護を担当します」

隣国に遊学を兼ねて短い間滞在する事になっていた。隣国と言ってもあまりにも規模が違いすぎる。この国は大陸の半分近くを占める大国で、僕の国は最近負けてばかりいる国だった。でも一応僕は王子だったけれど、彼、エミリオのほうが余程王子に相応しいと思った。
濃蜜を思わせるような金髪に、凛々しく整った顔立ちに、高い魔力。王子だと言っても誰も疑わないだろう。実際に彼の母は国王の従兄弟で、王族の一員だった。そして高貴な家の跡取りでもある。

「エミリオ、そう呼んでも良いかな?」

「え……?……ええ、構いませんよ。ギルフォード王子」

いくら僕が国賓だからって、彼の身分と比べれば敬称もつけないなんて失礼に当たるだろう。でもどうしても彼に様や殿などつけたくなかった。
すぐに結婚を前提に付き合って欲しいと懇願をしたが、エミリオにも彼の家族にも国王にも、全てすげなく断わられてしまった。彼の家にしてみれば僕と結婚するメリットなんて何もないから仕方がないだろう。僕は外国人で小国の王子で、魔力もない。ただでさえ外国人とは結婚しない国の風潮だ(誘拐は除く)

それでも僕はどうしてもエミリオを諦めきれずに、国での地位を捨ててこの国に留まる事を選んだ。
いずれ父(母)は戻ってきてくれると思って、若い頃の我がままだからと許してくれたが、僕はもうエミリオから離れて戻るつもりは一切なかった。

「しつこいなっ! ギルフォード王子っ! 私は丁寧に何度もお断りをしたはずです。私には婚約者がいるので、残念ですが諦めてください」

何度もプロポーズする僕にエミリオはうんざりした顔をしていた。
好みじゃないともはっきり言われた。
エミリオの婚約者はこの国一の名門の跡取りで、国王の座に一番近い男でもあった。王妃に相応しいと見込まれて、僕のエミリオはあの隊長の婚約者に抜擢されたのだろう。当たり前だ。僕のエミリオはとっても格好良くて、凛々しくて、頭が良くて、何もかもが素敵過ぎる。

でもあの隊長の婚約者になったということは、妻という立場でも別段構わないということなのだろう。世の中には絶対に妻にはなりたくない。夫しか嫌だという思想の人もいる。特にエミリオのような高位魔力の持ち主は、端から妻という立場を考えた事がないという人も少なくない。
でも妻でも良いんだったら、エミリオは僕に抱かれても平気なんだよね。

エミリオは僕がエミリオのお嫁さんになりたいと勘違いをしているのは分かっていたけど、僕が魔力がないからそう思っているだけなんだよね。僕が無効化をしたらどんな魔力の持ち主でも、抱けるんだって分かったらきっと警戒すると思うからわざわざ言わない。
エミリオは僕が無力だと思っているから、僕が近寄っていっても邪険にはするけど、貞操の危機とか考えたことはないんだと思う。僕がエミリオを抱きたいって知ったらきっと驚愕するんだろうな。

「僕の事嫌い?」

「お前は部屋の片隅で置いておくために連れて来たんだ。まあ、子どものための偽装結婚だな」

エミリオは僕が赤ちゃんを無理矢理妊娠させたお陰で、部屋の片隅に置いておくためだけに結婚をしてくれてこの国の国籍をくれた。エミリオの夫になれるなら部屋の片隅の置物だって構わないよ!

でもエミリオは優しいから、僕がエミリオをいかに好きか、好きだからあんなことをしてしまったのだと理解をしてくれて、置物じゃなくって僕を本物の夫として扱ってくれた。
僕が一生懸命働くと褒めてくれるし、始めは僕のことを厄介者だとしか思っていなかった義両親も僕を婿と認めてくれた。
産まれた僕達の息子ギルバードの魔力が高かったのも、義両親が僕のことを邪魔者扱いしなかった大きな原因かもしれない。僕は魔力がないから、いくら魔力の高いエミリオが産むとしても、魔力の低い子どもが生まれる可能性は高いって思っていたんじゃないかな。

「ねえ……僕のせいで魔力の低い子が生まれたら……その子を疎んじる?」

「あまり私を見損なうな。確かに始めはお前にくれてやると、嘘をついたが……私の子だ。どんな子でも可愛がるし、魔力が低くても私の子に変わりはない」

「そうだよね! 僕達の子どもだもん!!! どんな子でも可愛いよね!」

やっぱりエミリオは僕の愛した人だっ!
エミリオくらいの大貴族家なら魔力の低い子だったら人間扱いされない可能性もあるけれど、エミリオやご両親を見る限りそれは無いんだろうなって考え直した。

生まれた子は結果物凄く魔力が高かったけど(エミリオよりも)でも、どんな子でも愛しいのに変わりはない。


エミリオ、大好き!

それから、片隅に置いておかれるだけじゃなくって、夫として信頼されるようになったと思う。何時も何かあると相談してくれるし、僕を頼ってくれる。

ただ、僕とのエッチが不満なのか、エミリオの友人たちに散々僕の事を早漏だとか、テクがないとか言われる。
僕とのエッチ、嫌なの?
最初は僕が無理矢理押し倒していたけど、最近だとエミリオから誘ってくれる事だってあったじゃない!!!
僕はエミリオに毎日迫ったら子育てて疲れているから悪いと思って、我慢している時があって、そんな時エミリオが我慢しなくて良いって、エッチさせてくれたり!

なのに、エッチが下手なのに我慢してくれていたの??!!!



「僕、そんなに下手?」

「最近は持続率高くなっているよね!?」

「エミリオだって僕とのエッチ嫌いじゃないって言ってくれたのに!!??」

「エミリオだって僕の赤ちゃん産みたいって言ってくれたのに!!!」

「あのな………大丈夫だ。早漏のお前のほうが好きだ」

「・+(*゜∀゜*)+・ほ、ほんと? 僕を好きだなんて初めて言ってくれたよね!」

「妻はな、夫が気にするほど、持続時間も固さも大きさも気にしないものだ。むしろ、速さのギルフォードのチャームポイントだ。最近の我慢して何とか持続時間を長くしようとするお前よりも、昔の情熱的で早かったお前のほうが好きだ」

「な、なら早漏でも良いよね.。゚+.(´∀`○)゚+.゚。無理して我慢する事ない?」

「ああ……」

****
第三子が生まれた!!
可愛い!
僕達の子ってどうして何時も可愛いんだろう!
エミリオが産んでくれるから、凄くすごくかわいい!
どっちに似ているかな。
ギルバードは僕に似たし、ウィルバーはエミリオだ。

「名前どうする?」

「お前やウィルフォードさんにあやかって名前はつけたし、悩むな」

「じゃあ、僕がつけても良い? ギルやウィルはエミリオがつけてくれたから」

「ああ、もう決めているのか?」

「セシリアってどうかなって思って」

「良い名前だけど……なんかセシルおじさんやエルシアの名前をつっくけたような感じが」

うん、セシルさんとエミリオのリとエルシアくんのアを貰ったんだ。エミリオは僕の父の名前をウィルにつけてくれたし、僕もエミリオは知らなくても本当の母や弟と縁のある名前をつけてあげたくて考えていたんだ。

うん、君はセシリアだよ。

「じゃあ、セシリアも生まれたことだし、もうお前はお役ごめんだな」

「え?……どういうこと?」

「三人もいればもう子どもは大丈夫だろ。だからもう夜の生活は終わりだって事だ」

「そ、そんな………」



ぼ、僕、そんなことになったらあの隊長や辺境伯リオンと同類になってしまう!!!

妻に虐待をされて泣いている二人と同類!!!!!
あの二人はいい方だけど、だけど! 同類になんかなりたくない!!!!!

「エ、エミリオ……」

「……冗談だ」

「じょ、冗談?」

「お前はまだ若いしな。三児の父になったとはいえまだ20代のお前に、禁欲令を出すほど私は鬼嫁じゃないぞ」

「だよね! エミリオ優しいもん!」

良かった、隊長や辺境伯と親友にならなくって!!!

今は産後だから頑張って禁欲するけど、あと一ヶ月したら………一ヶ月だけ我慢するよ!
僕良い夫だもん!!!!


そして一ヵ月後




僕エミリオと結婚できて良かった!!!!








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