「ねえ……クライスって100キロマラソンできる?」

「え?……それは当然俺も副隊長だったのでそれくらいは……なあ、エルウィン」

「はい、俺でもできますよ。というか騎士採用試験は、80キロを2時間で完走すること。腕立て・腹筋はそれぞれ300回、懸垂100回。100メートル走10秒で走れなければ合格できませんよ」

「ほ、本当?」

「勿論魔力も必要ですが、基礎体力がなければ合格できません。これに満たない場合は補充兵ということになりますけど……何で突然興味を持ったんですか? ユアリス様」

「お、奥様になる人だと、腹筋300回もしていたら、腹筋が割れて……」

「いいえ、普段は500回ですよ」

「そんなにしたら、腹筋ムキムキになって、旦那様に嫌われちゃうよ!!!!!」

「え? ユアリス様も王子様だったので、軍にいたんでしょう? 当然500回くらいできますよね? 腹筋だって……俺は体質なのかムキムキにはならなかったですけど」

「俺もですね。けど、それなりに筋肉は綺麗についていたと思いますよ。当然軍人なんですから……入隊するとき、将来妻になるとか考えて鍛えない人なんか合格できませんよ」

「ぼ、僕っ………」

二人は義理の母がポンコツなのを知らない。魔力は高いのでそれなりに戦えるだろうと思っていたが、魔力の使い方ですらノーコンで、全然違う方向を攻撃したり、魔法の発動が遅すぎて使い物にならないのである。
魔力だけは高い。ただそれだけなのである。

「ユアリス様は隊長とユーリの母なので、きっと素晴らしい魔法の使い手だったんでしょうね」

「僕は、僕は! アンリ様がムキムキの腹筋嫌いなんだから! だから鍛えなかったんだもんっ!」

答えになっていない答えを泣きながら、主張したのである。

「え?……軍人なら鍛えた腹筋嫌いとかないんでは? まあ、俺もエルも夫の好みに合わせて体形変えたりしないですが」

「俺もそう思います。軍人なんて同性愛者しかいないんですから。筋肉好きじゃないんですか?」

「アンリ様は、変わった趣味なんですね」

「違うもんっ! アンリ様は僕が趣味なんだもんっ!」

「だったらユアリス様がどんな体形でも気にしないんじゃないですか?」

「そういえばユアリス様……柔らかそうですから……体脂肪凄いんじゃないですか?」

Σ( ̄ロ ̄lll)

「ぼく、ぼく!!! もうお茶会に来ないんだから!!!!」

こうしてクライスにパワハラ(アンリとのノロケ)を言ってクライスに迷惑をかけていたユアリスは、二人の嫁に虐められて泣いて本宅に戻ったのだった。

「僕……ダイエットしたほうが良いのかな。お、おなかプニプニ……こんな身体じゃあ、アンリ様に嫌われちゃうっ!」



どう考えても今更なのだがその自覚は無い。若い頃から運動不足だったため体脂肪率は鍛えた軍人の5倍ほどあるユアリスだったが、別段太っているわけではない。ただ筋肉が無くいだけなのだが、二人の嫁に比べれば確かに太っている、と思われても仕方がないだろう。

 


「アンリ様の馬鹿っ! 僕が何も出来ない子だって分かっていて奥さんにしたのにっ……今更太っているって言って僕を捨てるなんてっ!!」

「ユアリス、私が何時お前を捨てるなんて言ったんだっ!」

「だってだってっ! エルウィンやクライスみたいに引き締まった身体じゃないしっ! もう若くないもんっ!」

「ユアリス、ユアリスは出会った頃のままの変わらない美しさだ。私は何時もユアリスに惚れ直しているほどだ……それに、引き締まった身体よりも、ユアリスの抱いたら柔らかい体のほうが好きだから、筋肉なんかつけないでくれ」

「アンリ様……っ!」



しかし別にアンリはユアリスがおデブになろうが、ムキムキになろうが、気にしないと言えば気にしない。何でもいいのであるが、その息子たちはといえば……

「え? 脂肪がついた体と、筋肉質な身体とどっちか趣味だって? 決まっているよ、俺はクライスが好みだっ!」

「あっそ………」

「初めてクライスのその肢体を見た時の感動といったらっ! いつもは騎士服に包まれて、指先一つ見せてくれたことは無かっただろう?首からのぞく白い肌を見て、ずっとずっと脱がしたいと思っていたんだっ……白い肌に、引き締まった肢体、これほど美しい肉体は誰もいないと感動したよ。俺の奥様になる、俺の好みそのものだって……俺の事を痛いほど締め付けるのは、鍛え上げた肉体だからかなって」

「はいはいはいはい……」

「クライスは俺の体好みじゃないの?」

「………外見だけは好みだけど……」

「え?! 本当???!!! 今までそんな事言ってくれたことっ」

「隊長と良く似ているからな」

「そう……(´・_・`) 」

昔、兄の身代わりにして良いと言った手前、悲しむに悲しめないユーリであった。

「俺の顔は好みなんだ……俺の体はクライスは好きなんだ……嫌いって言われるより良いと思おう……」

と、なんとかマインドコントロールをしてやり過ごす夫だった。

ちなみにその兄は……

「エルウィンの引き締まった太ももとお尻が大好きだ!!!!! この前の素股最高だったっ!!!!!!!!!!またやりたい(´;ω;`)何故一回だけなのだ??? 何故???」
END



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