この国で絶倫な男ランキングや性欲過剰な夫ランキングなどをつけたら、誰もが甲乙つけがたくなるだろう。
ちなみに、性欲過剰なのは最も奥様にゴキブリのような目で見られている綺麗な顔をした辺境伯リオンであるかもしれない。辺境伯家の男は、可愛い顔をしているので結婚当初は嫌われても、性格がいいので妻に可愛がられるケースが多い。
リオンは辺境伯家には珍しく、綺麗な顔立ちをしているせいか、妻に可愛がられていない。

ちなみに唯一性欲過剰ではない夫は、ロアルドである。毎回奥様に搾り取られているので、性欲を感じる暇もない……

そして、エッチな奥様ランキングと言えば、ランキングに乗せる人材が殆ど無い有様ではあるが、ここに夫を愛し嫉妬深さではロアルドの妻とはる妻がいた。

「アンリ様……僕、アンリ様の赤ちゃんが欲しいんです」

エッチな奥様ランキング2位に殿堂入りする、美しい妻ユアリスだ。

「ユアリス、私はユアリスを愛しているが……子どもはもう無理だろう?」

夫であるアンリも猛烈に妻を愛していて、何でも妻の願いをかなえてきたが、唯一妻の願いを拒否した事は子作りだった。アンリはもう子どもは二人もいるし、これ以上ユアリスを妊娠させるつもりはなかったため、3人目は作らないと宣言して久しい。
ユアリスもアンリ似の子どもが二人産めたので、当時は満足していたが、孫のサラが生まれて、自分にそっくりの孫を夫が可愛がっているのを見て、孫にすら猛烈な嫉妬心を抱いた。

自分がアンリのために自分そっくりの息子をプレゼントしてやりたかったと。

そのときも何とかアンリはユアリスを諌めたが、今度ばかりは手のつけようが無かった。

「だってメリアージュが! 僕よりも年上なのに、また子どもを妊娠したんだってっ! 僕、メリアージュに負けたりしないよ! アンリ様のこと誰よりも愛しているから、僕もアンリ様の赤ちゃん、また産みたい」

「ユアリス……もう高齢出産の年齢だし、無理だろう?」

「メリアージュだって妊娠できたんだから、僕だって産めるよ! 僕のほうがメリアージュよりも若いし」

「メリアージュは祖母の血を受け継いだのか、高齢でも妊娠しやすいんだろう。だがユアリスは違うだろう? 今も出会ったばかりの頃と変わらない美しさだが、ユリアスに危険が及ぶような事は避けたいんだ。もう孫も5人もいるし、私がいるんだ。もう子どもは必要ないだろう?」

******

「って言われて、アンリ様僕に赤ちゃんくれないって言うんだ! 僕、エッチに迫ったのに……もう、アンリ様僕に魅力を感じていないのかな……」

「じゃあ、エッチも断わられてしまったんですか?」

義両親の性生活を聞くのが辛い。だが何故か聞くかと言うと、聞かないと去ってくれないからだ。ユアリス様は夫のノロケを話すのが大好きだからだ。

「ううん……それは情熱的に抱いてくれたけど……でも、赤ちゃんは無理だって聞いてくれなかったの」

「それは仕方がないですよ。ユアリス様の身体を思ってのことでしょう? ほら、淫らな体になるかもって……」

都市伝説らしいけど……

「でも、もうアンリ様、軍を退いて仕事ないし! 淫らな体になったって構わないのに!!」

同居って何が辛いかって!!!
アンリ様は優しいし、煩いこと言わないけど……というか、滅多に話しかけては来ないし。孫を見に来るが、俺に何か言う事はない。けれどこのユアリス様! 夫のノロケを聞いて欲しくて仕方がないらしく、こうやって折につけてはやってきて、エッチな話をしていくんだ。勘弁してくれと思う……その点エルウィンは良いな。
王城に行くまでは、一緒に暮らしていたからエルウィンも巻き込んだのに、今は俺だけになっている……ああ、これは嫁姑問題と言うやつか……

「メリアージュでも産めるのに! 僕もアンリ様に、僕似の子を抱かせてあげたかったのに! これでメリアージュがメリアージュ似の子を産んだらっ!!!」

メリアージュって誰?
分からなくてエミリオにヘルプを出そうとしたが、エミリオは今妊娠中でこちらから話しかけても一方通行になるだけで、答えは来ない。

『ユーリ、メリアージュって誰だ?』
『う〜ん……よく知らないけど、父の婚約者だった人らしいよ』

アンリ様の婚約者……それはこのユアリス様が一生憎むに相応しい人なのだろう……嫉妬深いからな。

「誰だか知りませんが、別にメリアージュって方、アンリ様が愛していたわけじゃないんでしょう? だってアンリ様はユアリス様のことを熱愛していますから」

「そうなんだけど……でも、アンリ様にとってメリアージュは特別なんだ……今でも大事に思っているみたいだし。それにオーレリー様と義父様がメリアージュの孫と、自分のひ孫を結婚させたいって言ってきて!!! 絶対嫌!!!!」

メリアージュって人の孫が誰だか知らないけど、オーレリー様のひ孫って、俺の子どもじゃないのか?
いや、他にもいるか。エルウィンの子もいるが、二人は王子だから……いくら公爵家の意向でも勝手に結婚させられないだろうし。あとは、ユーリの従兄弟のジゼリアとアレクシアの子どももオーレリー様のひ孫だけど……でも、ユアリス様が絶対に嫌と叫んでいるからには、ユアリス様の孫の俺の子なんじゃないか?

「あの、俺だって、俺の子を勝手に見ず知らずの子と結婚させるのは嫌ですよ」

「見ず知らずじゃないんじゃないの? だってメリアージュの息子の妻は、クライスの兄でしょ?」

え? そこに繋がるのか? アンリ様の婚約者の孫は兄さんの子どもということなのか??

「じゃあ、アルベルのことなのかな?」

アルベルは可愛い甥だし、とても良い子だ。俺の子たちと会わせた事はないけれど、あの子だったらお嫁に来てくれたら嬉しい。

「俺は構いませんが……」

「駄目!!!! ぜーーーーったい駄目!!!! アンリ様に良く似たジュリスやユリアと絶対にメリアージュの孫とは結婚させない!!!!!」

こ、怖い……


「ユーリ……あのな……最近、俺……ユアリス様と一緒に暮らしていく自信がなくなってきた」

まさかこの俺が嫁姑問題に悩む日が来るとは……

「まあ、母上はああいう方だから……我慢は出来ない? 悪気はないと思うんだけど」

「悪気は無いのはわかっている。無邪気な方だし……だけど、あわせるのが難しいというか……一人で対応するのが苦痛と言うか……エルウィンがいた頃だったら何とかなったんだが……お互い押し付けあえたし、あとで苦笑いのネタになったし。だけど一人だとなあ」

ユーリは跡取りだから仕方がないけれど……好き好んでユーリと結婚したわけじゃないので、とりわけ辛い。

「分かった、母上に言っておくよ。愚痴を言いに来るなって。ごめんね、俺たちだけで暮らそうか?」

「それは……」

そこら中に城があるだろうし、この王都の公爵邸に拘る必要はない。ユーリなら仕事に行くのも、転移でことが済むし、俺も魔法でことが足りる。

ただ、ユーリと子どもたちだけで移り住むのか……勿論使用人はいるだろうけど……

「遠慮しておく……子どもたちも従兄弟たちと気楽に遊べなくなるし」

「そう? クライスがそれで良いんだったら、良いけど」

なんとなく、そんな田舎に引っ込んで親族の目が届かなくなったら……監禁されそうで怖い……と思ってしまったのだ。いや、しないよな。わざわざ。する必要もないし……だけど、なんとなく誰の目も届かない場所に行くのは怖いと思ってしまった。

ちなみに、どうでも良いが、エッチな奥様ランキングではクライスは圏外であったりする。

その義母ユアリスはランキング二位で、一位は兄マリウスだったりするので、身内にはエッチな奥様が多いのにクライスは縁遠い話なので、普段は親族一同から恋愛結婚の神と崇められているユーリだが、ロベルトや従兄弟アレクシアを羨ましく思っているらしい。

「ねえ、クライス。たまにはエッチな気分になったり、俺に抱かれたいな……と思うときってない?」

「全く無いな」

「そう……(´・_・`) 」


END




- 227 -
  back  






×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -