「おめでとうございます、副隊長」

俺の直属の上司が妊娠し、産休ではなく退職をすることになった。後任の最有力候補は俺だった。今は分隊長を務め、血筋としては公爵家の直系ではないが、一員であり身分、実力とも申し分ないと言われている。

「ありがとう……オーレリー、お前を副隊長に押して入るが、隊長が……別の部隊から引き抜こうとしているらしい」

「……俺では隊長は不足だと思っているのでしょうか?」

「私も理由を聞いたんだが……どうやらただの直感で、お前は……妻属性で、そのうち結婚して専業主婦になるから副隊長は向かない、とか言っていてな」

「は、はあ? 俺が、妻ですか?」

考えた事もなかった。一族では平均程度だが、一般的に見れば充分高い魔力を持つ俺が妻になるなんて、想像もしてこなかった。というか、結婚したいと思った相手もいなかったので妻か夫どちらになりたいとも考えた事もない。ただ、普通は俺ほどの魔力の持つ主なら結婚するとしたら魔力の力関係上、夫になる確率が非常に高いだろう。

「というわけだから、オーレリーが副隊長になれるか、微妙だな」

出世欲が物凄く強いという訳ではないが、他所の隊から横取りされるのは良い気分ではない。
候補者は隣の第二部隊にいるらしいので、偵察に行く事にした。そして一目で分かった。
俺よりも高い魔力に、整った顔立ち。一族でよく見る顔だ。親族の一員かもしれない。

相手も俺がその男を見ているのが分かったのだろう。俺のほうに視線をやると、数秒、いや数分固まっていた。
首を傾げていると、その男は俺のほうにやってきた。
見慣れた顔のはずなのに、胸が何故か高鳴った。近くで見ると父に似ているが、この男のほうがハンサムだった。

「貴方を今すぐ押し倒して、私の息子を挿入したいです!」

あ……やっぱり、一族の男だ。

駄目な男の典型だ。

「お前の名前は?」

「アルフです!」

「そうか……変態が! 死ねっ!」

一瞬ときめいた自分が馬鹿すぎる!

「ど、どうしてですか!?」

「あんなプロポーズの言葉があるか? プロポーズなんだよな??」

人の貞操を奪う気でいるのなら当然結婚の申し込みのはずだ。

「そうです! 貴方は私の妻になる方だっ!」

「変態の妻になるつもりはないっ!」



出世欲が物凄く強いという訳ではないが、他所の隊から横取りされるのは良い気分ではない。
候補者は隣の第二部隊にいるらしいので、偵察に行く事にした。そして一目で分かった。
俺と同じくらいの魔力に、整った顔立ち。一族でよく見る顔だ。親族の一員かもしれない。

相手も俺がその男を見ているのが分かったのだろう。俺のほうに視線をやると、食い入るように俺のほうを見ていた。
首を傾げていると、その男は俺のほうにやってきた。
見慣れた顔のはずなのに、胸が何故か高鳴った。近くで見ると父に似ているが、この男のほうがハンサムだった。

「貴方を今すぐ押し倒して、私の息子を挿入したいです!」

あ……やっぱり、一族の男だ。

駄目な男の典型だ。

「お前の名前は?」

「アル、です!」

「そうか……変態が! 死ねっ!」

一瞬ときめいた自分が馬鹿すぎる!

「ま、間違えました! あ、貴方のその美しい微笑みを何時も見ていたいですっ……えっと、私の伴侶となって、私の息子を受け入れてくれて、私の息子を産んでください!」

間違えたというわりには、息子を受け入れてくれとか余計な言葉が入っていたぞ。

「お前、俺の親族か?」

「たぶん、そう、かと。お会いしたことはなかったのですが、残念です。もう少しはやく出会えていたらもっと早くプロポーズしたのに!」

「俺はな……一族の男は好きになれん。傲慢で自分勝手で力で何でも手に入れようとする男ばかりだ。お前もそのプロポーズからすぐに分かる。人の気持ちを考えもせず、欲望そのままに動く一族そのものだろう? 悪いが、俺はそんな男を妻にも夫にもしたくはない」

アルと今まで会わなかったのは、親族の集まりに殆ど出ないからだ。母が公爵家との付き合いを嫌っていて、親族との付き合いは限定的だ。

「貴方の名前は?」

「オーレリーだ。貴様と第三部隊副隊長の座を争う予定だ」

「オーレリー……貴方も同じ血が流れているなら分かるでしょう? 運命の妻に出会ったなら絶対に諦めないという事を。公爵家の男で、潔く諦めた男がいた例があったか?」

「不幸ながらないな……だが花嫁が無力だったからだ。俺はお前と同じくらいの魔力がある。なあなあとお前の言いなりにはならん」

そう、厄介な事にこいつらは諦めるという言葉を知らない。どんな卑怯な手を使ってでも手に入れるのが公爵家の男たちだ。

そして厄介な事に、俺は公爵家の血を引いているが、そんな男に惹かれた母の血も引いている。

駄目な男に引かれるという、母の気持ちが今までは理解できなかった。が、一目惚れをするという公爵家の血と、母の血が変にあわさって、アルという男を、変態だと分かっていて俺も一目惚れをしてしまったのだ。


「オーレリー……貴方のその細い腰を見るだけで」

「勃起するのか? 相変わらず変態だな」

「勃起して……出ちゃった(´;ω;`)」

「どれだけ早漏なんだ!!! さっさと着替えて来い!」

お互い一目惚れ同士なら何の問題があるのかと思うかもしれない。

だが考えてみてくれ……あんな変態なのの妻にはなりたくない。同じくらいの魔力だからどっちが妻で夫でも良いが、あの様子だとアルは俺を妻にするとしか考えていないし、俺もアルを抱きたいとは思っていない。しかし抱かれたいとも思っておらず、アルに惹かれる気持ちはあるが、結婚したいとは思わない。

それに母の破滅的な愛を見ているからだろうか。愛する人と結婚するという事が、どれほど恐ろしいか分かっているからかもしれない。

母は父と出会う前に結婚していた。妻がいたのだ。子どもは幸いなことにいなかった。
しかし母は父と出会った瞬間、全てが不要になったらしい。父のことを愛しすぎて、仕事も妻も家族も、父以外は何もかも見えなくなった。
父も同じだった。母が欲しくて、母の妻を殺そうとしたらしい。しかし母は、父にそんな事をさせられないと妻を自分の手で殺して両親も殺して、自分も自殺したかのように見せかけて、自分と言う存在を全て消して、父の元にやってきたのだ。
そして母は自分から閉じこもり、母の希望で父は母を監禁した。誰にも会わせない様にだ。

そうして俺が生まれたわけだが、勿論両親は俺に母の過去を知らせることはなかった。俺が勝手に過去視をしただけだ。異常な愛を持ち合わせている母は、どうしてこうなってしまったのか分からず、どうしても知りたかった。

確かに妻がいる身で父と結婚したくても適わない。それは分かるが、伴侶を殺し、反対するであろう両親すら殺す母は異常としか思えなかった。

俺はそんな血を引いている。だから愛する人と結婚したら、どうするか分からない。父方からでさえ、愛に異常な血を引いているのだ。ダブルでそんな血を受けついだ俺が、アルと結婚して上手く行くとは思えないし、母のようになりたくない。
いっそ一生結婚しないほうがいいのかもしれないと最近思うようになってきた。

「オーレリーが側にいると勃起するから仕事ができない……(´;ω;`)」

アルは部隊を移ってきて、副隊長を俺かアルか決めるまで一緒に仕事をし、どちらかが相応しいか決めることになった。しかしアルは俺といると常に勃起するようで、今もイタイイタイ勃起しすぎて痛いと蹲っていた………

「アル様っ。そんなに勃起ばかりしているとオーレリー様といざ合体となった時に瞬殺ですよ!」

「わが国では一発目の初夜は爆発が定番とはいえっ……早漏を探せば皆早漏で、遅漏を探すほうが宝探しよりも難しいと言われますがっ。このままでは入れる前に爆発しそうですから、もう少し勃起するのを抑えましょう!」

アルの部下たちが勃起を抑えようとしているようだが、上手くは言っていない様子だ。

「昨日オーレリーを妄想しながら10発も出してきたのにっ」

「今日は15発くらい抜いてきてくださいっ」

「昨日のオーレリーは凄かったんだっ……本当は私のことが好きだけど、素直になれずに、素直になるために誤った振りで花嫁の媚薬を飲むんだ。勿論、私に抱いてもらいたいがためだっ。身体が火照ってどうしようもない、私に宥めて欲しいと淫らに誘ってきて……自ら服を脱いで、足を大胆に開いて、むしろ私を押し倒しっ……自分から私の息子を咥えっ!処女を自ら破って」

「死ね」

アルが俺にプロポーズしてきても、公爵家の親族達は何も言って来ない。煩く言われるかと思ったが、当たり障りのない付き合いしかしていないせいか、特に何もないのがありがたい。これがアルが本家の跡取りだったら煩かったかもしれないが。父は特に母が本家の連中を嫌いと言うか、母は父が誰かと会うのすら嫌がるので、世情に疎い。だから父も何も言って来ない。

家の跡取りは弟に任せようかと最近思うようになった。母が二人産んでくれていたのが、今はとてもありがたい。

「……副隊長は、アルフ、じゃなくって(間違えた)アルに任せようと思っていたのだが……そんなに勃起ばかりされていると、仕事を任せられないし、どっちが相応しいか見比べられない」

と隊長は言うが、勃起ばかりしている時点でアルが相応しいわけはなく、どう考えても俺がなるべきだと思うのだが。

「私はオーレリーがいなければ勃起はせず、きちんと仕事ができます! 実際に第二部隊にいた時にはちゃんとしていましたっ。あ、痛い」

また勃起しているのか!

「これまでの経歴を買って引っ張ってきたんだが……もういっそ、決闘でもして決めてくれ。勝ったほうが副隊長だ」

「ですが、隊長! こいつが勝ったら、勃起ばかりして仕事をしないでしょう!」

「なら、負けたほうは結婚退職をしたらどうか……」

「ちょと待ってくださいよ! それって勝っても負けてもアルと結婚しろと言う事ですか!? 俺にとって何も良い事ないでしょう!」

「なら、負けたほうは勝ったほうの言う事を何でも聞くというのはどうだ? オーレリー、貴方が勝ったのなら私を辞めさせればいい」

「俺が負けたら、妻になれとでも言うんだろう? この変態がっ!!!!」

「うっ、ち、違うもん!(´;ω;`)」

「なら、妻になる、という以外のお前の条件を飲んでやろう」

魔力はほぼ同じ。アルがどんな独自魔法を持っているかで変わってくるだろうが、負けても妻にならないという条件を出してあるし、勝算も充分あるはず……だった。


「貴様っ、卑怯だぞ! 魔力を隠していたのか!」

「ああ、オーレリー……愛してるっ」

勃起ばかりしていたから早いだろうとは思っていたが、入れて数秒瞬殺だった。

「アルフ様っ! お二人が結ばれて我々も応援のし甲斐がありました!」

「アルフ様、良かったですね! 入れるまで持続できてっ!」


「……おい、お前……アルフって名前なのか? それって本家の跡取りの名前じゃあ……」

「オーレリーっ、全ては愛のためだっ! 私はオーレリーを愛してっ」

「死んでしまえっこの変態、早漏、瞬殺男がっ!!!!!!!!!!!!!!!!」




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