「あ、あの……結婚って?」
「当然だろう? この馬鹿息子が今日、君の純潔を奪ったんだから責任をすぐにでも取らせないと。本当だったら結婚後にすべきなのに、堪え性のない息子で申し訳ない」
「純潔って……」
そんなものとうの昔に無くなっている。今日無くしたわけじゃない。今は併合されてしまったが、生まれた国は処女をささげたからといって結婚するような風習でもなかった。
俺がエレインと初めてした13歳の時、エレインと結婚をしたいなどと考えたこともない。
「本当! どうしてうちの息子達は婚前交渉ばかりするんだろうか! エレインだけは期待していたのに……俺に顔が似ているから、ちゃんと結婚してからしてくれるものだとばかり思っていたのに。やっぱり教育は血筋に負けてしまうものなんですね。エレインは顔だけ俺に似ていてあとは皆、父親に似てしまったんだ……俺の顔をして、性欲過多で、常識なくって、股間が緩くて……」
「あの……結婚はしません」
「サンディ!」
「……ひょっとして、やっぱり、無理矢理されたんだね!? この馬鹿息子に!」
さっきは俺は嫌だといった。嫌だと言ったがエレインは有無を言わさず俺を抱いた。
だけど、無理矢理でしたと言い出しても、今さらだという感がある。俺はどれだけエレインに抱かれたか最早数えるのが馬鹿馬鹿しいほどだし、無理強いされたと言ったところで俺はエレインに抱かれて感じていた。
それに男娼が無理矢理抱かれました、なんて言っても仕方がない。金で体を売るんだ。そういうリスクだってある。エレインだってずっと体を許してきたのに、嫌だと言っても何を言っているんだと思うだけだろう。今さら惜しむような体でもないと笑われるだけで、言う事なんか聞いてもらえないに決まっている。
「違います……」
「違うの!? 凄い、良かった!……どうしよう、初めて合意の上での婚前交渉か。野外っていうのがちょっとアレだったけど、とにかく良かった」
「でもっ!……俺は、こんな大きなお城の王子様のような身分の人と結婚できるような家じゃ……ありません」
「え? 身分? そんなの全く気にしなくて良いんだよ。そもそも、昔から誘拐しまくっている家系に、家柄とか関係ないし。俺も昔は身分の差を気にしたものだったんだけどね、蓋を開けてみたらただの変態だから、気にする必要はないよ。エレインは末っ子で家を継ぐとか全くないし、安心してお嫁に来てね。変態の家系で申し訳ないんだけど……たぶん子どもができたら子どもも変態になる確率が高くて申し訳ないんだけど……」
なんだか物凄く変態を連呼されたけれど、エレインはそんなに変態だっただろうか?
俺はエレインとしか寝たことがないので、他との比較対象はないけれど、特に変わったことをされた覚えはない。
変な道具を使うこともなければ、奉仕を要求されたこともない。少し性欲が強すぎると思わないわけでもないけれど、それだけだ。
「無理強いだったら結婚を止めたけど、そうじゃないんだったら問題ないよね。エレイン、野外は褒められたものじゃないけど合意の上なのは褒めてやろう」
「はい! お母様。サンディとやっと結婚できて嬉しいです」
「待ってください! 俺、一度もエレインと結婚なんて考えた事ないですし、そもそもプロポーズなんてされていません」
「は? エレイン? お前、お父様だって駄目な男だったけど、初日にちゃんとプロポーズしたぞ? なのに、お前していなかったのか?」
「さっきしました!」
「さっき? さっきのって……最中に言ったこと?」
結婚しようなんて言われなかった……確かに僕の妻になるんだとか、僕はサンディの夫になるとかは言っていたけど。突然変なことを言い出したとしか思っていなかった。それにああいうのってプロポーズって言うのだろうか。
「最中? ふざけるな! ちゃんとOK貰ってからその股間を開放しろ!」
「まあまあ、仕方がなかろう。やっと解禁できたのだから、プロポーズの前に股間が爆発してしまうエレインの気持ちも察してやってくれ。この通り、この子は無理矢理ではなかったといっているし」
「だからエレインにどうしてそう甘いんですか! だからこんなに股間の制御ができない子に成長してしまったんじゃないですか!!! 俺もさっき知りましたよ! 股間は父親似だったということにね!」
「待望の妻に似た子が嫁に行くよりも、股間の我慢の出来ない子として育つほうがマシなんだもん!(´;ω;`)(´;ω;`)(´;ω;`)」
「エレイン! もうお前が父親に似てしまったことは諦める。最後の子がまともに育ってくれるかもしれないという幻想はなくなったが……血筋だから仕方がないんだろうな。プロポーズもまともにできない子だったなんて……」
「お母様が僕に制限をお父様にかけさせなければ、とっくの昔にサンディにプロポーズしていましたよ! 好きだとか愛しているとか好意の言葉を口に出すこともできないようにさせたのに! でも、サンディには全身全霊で好意を示していたので口になんかせずとも分かってくれていたはずです! サンディが僕を受け入れてくれた時からサンディは僕の妻になる決意をしていてくれたはずだし、僕もずっとサンディの夫のつもりでいました、今さら言葉なんか必要ありません!」
「馬鹿! 言葉は必要に決まっているだろう! ただでさえ思い込みが激しい一族の血を引いているんだぞ! お前は!確かに……制限を加えて成人するまで色々言えない様にしたのは悪かった。だが暴走を事前に食い止めるためだったんだ! サンディ君、この子はね……子どもの頃魔法を暴発させて行方不明になったことがあって、その時に君に一目惚れをしたんだ。一緒にいたい、連れて行くと泣き喚いて、誘拐しそうな勢いで、何度止めても会いに行く始末で。勝手に小学校の教師まで洗脳して勝手に生徒になったりして……流石に小学生で外国人だった君を誘拐するのは駄目だったので、仕方がなくエレインに色んな制限を加えて、この城から毎日登校させていたんだ。大人になったらサンディ君と結婚するってずっと言っていたから、制限を加えたことも忘れて、もうとうに結婚する約束をしていると思っていたんだけど……エレイン、今からちゃんとプロポーズしなさい。いくら両思いだからといってもケジメが必要だよ」
「はい、お母様!!!」
俺は色んなことを言われて混乱していた。
エレインの両親は、俺がエレインと結婚することが当たり前だと思っていて、恋人同士のように思っているのだろうか。
本当は俺はエレインに金を貰っているだけの関係なのに。それを言ったほうが良いのだろうか。
お宅のお子さんは13歳の時から股間を解放させまくっていましたと。
それに今からエレインは俺にプロポーズするらしいが、せめて服くらい着ようと、両親は思わないのだろうか。全裸で跪いているんだけど……
「サンディ、僕はサンディを7歳の時に初めて見た時から愛していました。あの時からずっと僕のお嫁さんにしようと思って生きてきました。僕の純潔を捧げたサンディ……僕と結婚して下さい」
「嫌です」
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