「サンディ、前にもそんな酷いことを言っていたよね? この僕がそんなことを許すとでも思うの? 二度とそんなこと、口に出すだけでも許さない。いいや、想像することもね。サンディを抱いて良いのは僕だけだし、サンディの夫は僕だよ」
エレインの言葉はどれも俺には受け入れがたい物ばかりだった。
俺はエレインから金を貰っていた。それと引き換えに体を許した。体を売っていた。
けれどそれだけだ。どんな約束をしたこともなければ、将来の約束なんか一度もしていない。
百歩譲って金を払ってもらっているのだから俺がエレインの物というのを認めたとする。けれど、エレインが俺の夫になんかなるはずがない。
「いやっ……っ」
俺の否定の声なんか聞こえなかったかのようにエレインの手が俺の体をまさぐる。
良く知っている手だ。エレインに触れられると慣れた体が疼いて堪らない。嫌なのにエレインを欲しがってしまう。
「綺麗なサンディ……僕が18歳になる日をずっと待っていたよ。正式にサンディの夫になれるって」
こんな外で俺はエレインに全裸にされている。嫌なのに俺は自分から脚を開いてエレインの腰に足を巻きつけていた。
「ねえ、僕のお嫁さんになってくれるよね? 何でもあげるよ、サンディ」
「……やっ」
「どうして? サンディ僕に抱かれるの好きでしょう? 結婚したら毎日抱いてあげる……サンディのことだけ考えて凄く大事にするよ」
頷いてしまえばきっと楽になれる。俺はエレインなしでは生きられない体なのかもしれない。金のためにエレインに初めて体を売ったときから、俺はずっと金のためだと言い聞かせてきた。けれど俺は俺のものだし、心までエレインに売る渡したつもりはなかった。
なのに、何時の間にか体はエレインを拒否できなくなっていっていた。俺は体だけじゃなくて心まで男娼になっていたんだ。
「サンディ、出すよ。早くサンディが僕の赤ちゃんを孕んでくれないかな?」
エレインの射精を体は喜んで受け入れていた。ずっと避妊をしてくれと言っていたけれどエレインは一度も聞いてくれたことはなかった。
「もっとしたい? サンディ。僕ももっとサンディを抱きたいっ」
「このアホ息子が!」
エレインに抱き寄せされてもう一度抱かれるんだと思った時に、誰かがエレインを蹴り飛ばし罵声が浴びせられた。
「お、お母様っ!」
「18歳になった途端、何を破廉恥なことをしているんだ! しかも野外でっ! お父様から野外でやっているアホがいると聞いたときは目の前が真っ暗になった……お前だけは違うと思っていたのに……大丈夫かな? すまない、馬鹿息子が酷いことをして」
誰だか分からなかったけれど、会話からおそらくエレインの母親だと思わしき人が俺に手を伸ばしてきた。
その手を握ろうか迷ったけれど、俺の体は精で汚れていてできなかった。エレインの母だけあってエレインに良く似た人だった。
「まあ、待て。仕方がないだろう、エレインも年頃だ。好きな子を目の前にして解禁されたら我慢もできず野外でいたしてしまうのも当然だ。むしろ、今までよく我慢したと褒めてやらなければならん」
「そうやって甘やかすからこんな子になってしまったんですよ!」
エレインの母らしい人が、父らしい人に怒っていて俺はどうしたら良いか分からなかった。
エレインの両親にほぼ全裸で、しかも情事の跡が残っている姿を見られたのだ。勿論すぐに服をかき集めて羽織ったが、エレインは全裸で母親に足蹴にされている。
「だってエレインは待望のっ」
「俺似だからって甘やかした結果がこんなアホに育ってしまったんですよ! 解禁日当日に青姦を仕出かすなんてっ……ごめんね、起きれるかな? 汚れを落としてあげるから一緒に行けるかな?」
「俺……家に帰りたいです」
「帰してあげたいけど、こんな状態では返せれないし、今後のことも話し合いたいから」
帰りたいと何度もお願いしたが、こんな状態では駄目だといわれ、風呂に通された。そこは見たこともないほどの豪華さで、しり込みをしてしまうほどだった。用意されていた服もきっとこれだけで俺の年収よりも高いんじゃないかと思わされた。
エレインは本当に誰なんだろう。王子様みたいな暮らしだ。王子様みたいなエレインが俺を妻になんて本当に馬鹿らしい。あのご両親だって認めないだろう。13歳の時からずっとエレインに体を売っていた男娼の俺と結婚させようなんて絶対に思うはずがない。
こんな豪華な服をと躊躇しながらも用意されていたので、仕方がなく来て外に出た。部屋には床に正座をしたエレインと、ご両親がいた。
「体は大丈夫? 話し合いたいけど、休みたいならまた後日にしようと思うけど」
「いいえ、大丈夫です」
嫌な事はすぐにでも済ませたかった。男娼なんか息子の嫁にはさせられないと言って貰って、手切れ金でも貰えたら凄く嬉しい。
ずっとエレインから貰う金額に不満を持っていたんだ。他の男相手だったらもっと高額な金を貰えていたはずなのに、エレインが他の男に体を売るのを許してくれなかった。俺は体を金のために売ったときから、どんな汚らしい親父だろうが抱かれる覚悟はしてきた。今さら一人から何百人に増えようが構いやしなかった。ただエレインの束縛が激しくて今までそれが適わなかっただけだ。
「結婚式は明日で良いかな? 体が辛かったら明後日にしようか?」
「え?……」
金を渡されて息子に二度と会うなと言われると思っていたのに、全裸で正座をしている息子と結婚させようとしている様に、驚きを隠せなかった。
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