おばあ様であるオーレリー様が主催のお茶会に招待をしてくれた。
実際はロベルト伯父夫婦なのだが、メリアージュ様にとって第二の母の方なので、俺もおばあ様と呼ばせてもらっている。

オーレリー様もおばあ様と呼びなさいとおっしゃってくれている。

「それにしても、マリウスはお淑やかだな。うちの嫁たちに少し見習わせたい」

「そんなことはないですけど……」

俺は別にお淑やかとかって、程遠いような気がする。昔から家の外では、自分の自信のなさを隠すかのように、乱暴な口のきき方もしたことがあったし、気が強いと良く言われたこともあった。

今は、そんなことをする必要もなくなったから、そう見えるだけかもしれない。

「ユアリスは気が強くって、我侭だしな。まあ、王子だったから仕方がないだろうが……メリアージュの勘当を解いて系譜に戻そうとしたときも、アンリにメリアージュに会わないでって、泣いて癇癪を起こしていたそうだしな。お陰で、未だに外部的には勘当したままが続いている」

「まあ、俺は構わないが。ロアルドに煩わしい親戚付き合いをさせないで済むので、逆にありがたいほどだ」

「まあ、あんな堅物だった息子に嫁いでくれただけありがたいと思わないといけないがな。次男のブランシュは無茶苦茶しているし、目も当てられない……」

えっと……俺はメリアージュお母さまが何処の家の出なのか知らないし、オーレリーおばあ様やアルフおじい様の家のことも知らない。
が、アンリ様やユアリス王子といえば……

「ブランシュ……あいつ、性格けっこう穏やかで善行をしていたのに、どうしてああなったんだろう?」

「もうブランシュのことは諦めているけれど、私は孫のほうが心配なんだ。国王になったのに、あの恥ずかしい行いの数々は何なんだ? 少しはユーリ夫婦みたいに円満にできなのか?」

やっぱり……オーレリー様って前公爵夫人なのか?
今クライスの夫の名前が出たし。

「あの……おばあ様は、ユーリ様の祖母なんですか?」

「ああ、マリウスの弟はクライスだったよな。両方の孫の嫁が兄弟なんて、奇遇だな」

全然違う家だと思ったのに、まさかメリアージュ様が公爵家の出だったなんて。
そしておじい様やおばあ様から見たら、同じ孫の嫁だなんて……同じ嫁でもクライスと俺とじゃ、比べる価値も無いほどなのに。

「お母様! ロベルトにも俺の実家のことを言っていないのに、マリウスに余計なことを言わないでください! マリウス、偶然、お母様から見たら同じ孫の嫁ということになってしまったかもしれないが、ただの偶然だし母は比べるような事はしない。それに公爵家とは全く親戚付き合いをしていないし、ロベルトだって自分が公爵アンリと従兄弟なのも知らないほどだ。だから、そう気にするな」

「悪い。そんなつもりで言ったんじゃない。勿論比べたりしない。こんな可愛い嫁が来てくれたのに、何で比べるんだ? ロベルトが幸せそうで嬉しいのに。だいたいもし比べるって言うんだったら、エルウィンなんてもっと魔力が低いし爵位も低い家の出だぞ。だが、そんなことどうでもいい。孫が幸せならそれで良いんだ」

決して俺を慰めるつもりとかじゃなく、本音で言ってくれているのが分かって思わず涙が出そうになった。
メリアージュ様もオーレリー様も俺を受け入れて入れて、家族として接してくれている。
こんなに優しく向い入れてくれるなんて想像もしていなかった。

「まあ、アンリやユーリのほうが不思議な夫婦だよな。あんなに愛してもらえる妻がいて。それをいうのならロベルトもか。公爵家の血を引く男で、愛される夫なんてレア中のレアだぞ。私も夫を愛していないが、やはり自分の子どもや孫を見ると、妻に愛されていて欲しいとは思う。その点、7人中、4人も夫婦円満ななんて、これまで無かったな」

オーレリー様のお子様や孫の夫は。
アンリ様は王子ユアリス様と円満。
次男ブランシュ様は………詳しくは分からなかったけれど、暗黒非道に走ったらしい。
孫の国王陛下は王妃様に拒否されて久しいと言う噂が……
ユーリ隊長はクライスとラブラブで。
ロベルトは……俺が寝取ってしまったけど、一応円満夫婦にカウントしても良いらしい。
あとは、暗黒の孫が一名にアレクシア様はお見合いだけど、幸せそうな夫婦らしい。

「お母様が一番円満じゃない夫婦だろうに。うるう年に一回だなんて兄上も流石に可哀想だと思うが……」

「アンリが生まれるまでは、好きなだけやらせてやったんだから、跡継ぎができたら不要だろう」

「だからブランシュは4年に一回の子だって拗ねて、あんな捻くれた大人になってしまったんだろうに」

どうやらブランシュ様はうるう年に一回の際に出来た子だそうで、それが原因ではないが相当捻くれてしまったそうだ。

「私はちゃんとアルフに選ばせてやった。はじめはまあ、アンリが生まれたから義務は果たしたのでもう夜の生活はナシなと言ったら、盛大に泣かれて、半年くらい泣いて煩かったから仕方が無く妥協案を出してやった。うるう年に一回(+一緒に死ぬ魔法をかけることに合意)か一年に一回を。アルフは悩んで悩んでうるう年に一回を受け入れた」

アルフ様はそれはもうオーレリー様のことを愛しているのに、そんな究極の選択をさせたんですか。今もアルフ様は俺たちのお茶会を角のほうで見ています。どこに行くにも一緒についていくほど愛されているオーレリー様は、とても羨ましいのに、オーレリー様にとっては鬱陶しいだけのようで。
俺だったらこんなにロベルトに愛されていたら凄く嬉しいのに。

「え? オーレリーおばあ様、一緒に死ぬ魔法をかけているんですか?」

物凄く意外と言うか、あれは両思いの夫婦が死ぬ時もずっと一緒にいたいっていうことで、かける魔法なんだけれど。通常は魔力の高いほうの夫が妻にかけるものだが、同意がないと駄目なのでこの魔法をかけるということは、相思相愛の夫婦の証明でもあった。

「まあな。どうしても一緒に死にたいと泣いて喚く夫を見ているのが辛くなってだな。私も我慢の限界というものがあって、どうせ私が先に死んだらアルフも死ぬんだろうし、私のほうが年上だからな、たぶん先に死ぬだろうから結果は一緒だから夫を黙らせるために、ああいう条件で魔法をかけさせてやった」

「物凄い苦渋の選択だった。一年に一回か4年に一回(´;ω;`)勿論、1年の一回のほうが良いに決まっている! だがそれだと、私が先に死んでしまったらオーレリーを置いていってしまう事になる。私がいない世界にオーレリーを置いていく事などできない! だから、私は4年に一回をそれはそれは楽しみに待っているんだ。次のうるう年まで私は生きているだろうか?」

そんなことを角のほうから聞こえてきた。

「おばあ様……アルフおじい様ももう歳ですし、何時亡くなってしまうか分かりません。次のうるう年までまだ3年半近くありますよ。アルフおじい様は聞く限りとても我慢してきたと思います。そろそろ解禁させてあげてはどうでしょうか?」

余計なお世話かもしれないが、本当の孫のように接してくれるアルフ様にもう少し幸せになってもらいたいと思ってそんな事を言ってしまった。オーレリー様も嫌いと言っているが、それでも二人も子どもを儲けて、今はひ孫も8人いる仲だろう。少しは情というものがあるのではないだろうか。

「私はこいつに騙され決闘で無様に負けたんだぞ? いや、負けたこと事体は私が弱かったので仕方がないが、こいつは卑怯にも自分の実力を隠していたんだ。これが公爵家の男がすることなのか? 男らしくない」

「……だって、どうしても結婚したかったんだもん」

「だいたい、何で青姦なんだ!? たった1秒でも我慢できたら転移して寝室でできただろうに、部下たちが見守りながら声援を聞きながら俺は処女じゃなくなったんだぞ! 有り得ないだろう!」

「だってだって、股間が限界だったんだもん!(´;ω;`) それに皆は見ていなかった! 背を向けてアドバイスもくれた」

「それが余計なお世話だろう! 普通だったら邪魔になるから、消えていなくなるべきなのに、あいつらは何だ!」

「私が股間が限界過ぎてちゃんとできるのか心配してくれていたのだ! ちゃんと役に立つアドバイスもたくさん投げかけてくれた! いきなり入れてはいけません、まずは指一本から慣らして上げてくださいとか! 一発目は入れたらすぐ爆発してあげたほうが奥様のためになります! とか、(実際は、挿入一発目は、早漏のほうが助かります、だった(嫁視点の声援)物凄く役にたったもん!!!!」

「それが余計なお世話だって言うんだ! 貴様が挿入してすぐ爆発した後、皆から盛大な拍手をもらった俺の身にもなってみろ! どれだけの屈辱だったか!!!!」

そ、それは確かに酷い……公爵家の方々って、恋愛は上手じゃないのだろうか。
ロベルトは何時もスマートで、優しくて、時にはロマンティックに俺を抱いてくれるのに。

「まあ、もう60年も前のことを何時までも根に持っているのも、どうかと思うが……お母様もそろそろ許してあげてはどうですか? 兄上も反省して50年近く、股間を良い子にしてきただろうし」

「50年も良い子って……50年の間に12回くらいしかできていないってことでしょうか?……」

そう計算すると少しオーレリー様は罰の悪そうな顔をした。こうやって数字にしてみるとけっこう酷い。
アルフ様が泣きたくなるのも分かる気がする。

「だがなあ……今さら解禁して嬉しいか? もうお互い90代だぞ? 今さら増やしたって」

「嬉しい嬉しい嬉しいに決まっているだろう!!! この50年近く、数えるほどしか出来ていないのに、死ぬ前に少しくらい良いことがあっても!(´;ω;`)!(´;ω;`)」

「お母様、亡くなった母上だって父上のことを30年で許したんです。50年我慢していた兄上を、60年経って許してやることはできないんですか? 二人とも、この子の誕生を仲良く迎えて欲しい」

「………まあ、今はもうそれほど怒ってはいない」

オーレリー様はメリアージュ様に弱いんですね。
アルフ様はそれはそれは喜んでいて、週1良い? とオネダリをしていました。

きっとメリアージュ様は自分の本当のご両親のように仲良く晩年を過ごしてほしいと思ってらっしゃるんですね。

「メリアージュ、お前もどうなんだ?」

「俺が何ですか?」

「一緒に死ぬ魔法を掛け合っていないんだろう? どうしてなんだ? あれほどロアルドを愛しているのに」

「……死んでまで束縛したらロアルドが可哀想でしょう。ただでさえ、俺のほうが年上だって言うのに……」

「ロアルドは何て言っているんだ?」

「……あいつの意思は関係ありません。そもそも子どもが生まれるんだから、今、魔法をかけたら困るでしょう」

「まあ、そうだが……人のことを気にするんだったらメリアージュ、お前もロアルドのことを少しは信じてやれ。あいつはどうしようもなくメリアージュに惚れているぞ」


******

「おかえり」

「ただいま、今日も問題なかったか?」

「うん、お母様とおばあ様たちと楽しくお茶会をしていたんだ」

そういえば、ロベルトにはアルフ様たちが前公爵だって内緒にしておいてくれって言われたので、会話の内容は詳しく話せないけれど。

「お父様ってお母様のこと愛しているよな?」

「ああ、俺も子どもの頃疑っていたが、どうやら本当に愛しているようだ。母は未だに疑っているが。そういうところはマリウスも良く似ているよな?」

「え?」

「俺がどれだけ愛していると言っても、完全には信じてくれていない。何時も疑っているだろ?」

「それはっ……」

何時も疑っているわけじゃない。一緒にいてくれる程度には好かれているんだろうけれど……でも、ロベルトの運命の人は俺じゃないとは思っている。

「良いよ……死ぬまでに信じてくれれば……今は子どもが小さいから無理だけど、大きくなったら一緒に死んでくれるか? 俺はマリウスが心配で先に逝けない」

「……でも」

「今すぐじゃないんだ。ずっと先のことだから、考えておいてくれれば良い……ただ、俺はマリウスがいない世界では生きていきたくないし、俺のいない世界で残しておけない」

「ロベルト……」

本当に、ロベルトと死ぬときも一緒なら、きっと凄く幸せだろう。

「俺、こんなに幸せで良いのかな?……だって」

「良いんだよ……お前はこれまで苦労してきたんだから、これから先は俺がずっと幸せにしてやる。愛している……ずっと一緒にいよう」


******

お茶会を同じように角で聞いていたロアルド(アルフの前の席で物凄く肩身の狭い思いで一言も発せられなかった)

「メリアージュ様、ご両親、仲直りされて良かったですね」

「まあな……両親もロベルトの顔を見て逝ってしまったので、あの二人もひょっとしてと思ってな」

「あのお二人でも一緒に死ぬのに、私は駄目なんでしょうか?」

「お前は俺より若い……今までこれほど束縛してきたのに、死ぬ時も俺が束縛はできない」

生きている間は、どうやっても俺はロアルドを束縛してしまう。それは本能で逆らうことができない。でも死んだ後はロアルドに自由に生きて欲しいと思う。俺がロアルドの人生を奪ったのか。最後のほんの少しの時間だけでも返してやりたい。

「メリアージュ様! 私は自由になりたいなんて思ったことはありませんよ! むしろ束縛していて下さったほうがメリアージュ様の愛を感じられて幸せでした! 考えても見てください! 今までメリアージュ様が何でも決めてくださって、愛してくださったのに、突然一人にされて、私は生きていけると思いますか?」

それは……確かに俺が束縛しすぎていて、ロアルドは自分で何でも決める権利すらなかった。
そんな生活が当たり前になっているロアルドが、俺が死んでいなくなってしまったら……

「生きていけません! どうか、メリアージュ様、一緒に連れて行って下さい。メリアージュ様はご自分が先に死んでしまうと決め付けていますが、たった4歳差です。私のほうが先に死ぬ可能性も高いんです。私もメリアージュ様を残していきたくありません。どうか一緒に……」

俺は……もし、お前が先に死んだら父のようにあとを追うだろう。だからそんな心配はしなくて良い。

「……お前、これから子どもが生まれるんだぞ! 今から死ぬときの心配をしてどうするんだ! 孫の顔を見る気で長生きしろ!」

「はい! 分かっています。メリアージュ様、俺たちこの大陸で最も魔力の差かない夫婦で子どもを作った、というのに続いて、もっとも高齢の夫婦で子どもを作ったと言うのにもノミネートされたらしいんですよ。一番長生きした夫婦というのでも、大陸記録にものりましょう」

「……ああ。100歳になったら一緒に死んでやっても良いかもな」


END
メリ様なりの譲歩(笑)
三夫婦LOVEでお送りしました★




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