イブちゃんに唆されて、メリアージュ様に還暦のお祝いに漢にしてもらおうと決意した!
しかし、パーティーが終わり二人っきりの時間になると途端にそんな気持ちも沈んでしまった。60歳になるまでメリアージュ様に任せきりだったのだ! 今更、私が主導権を握る事など本当に可能なのだろうか?
という気持ちと、あの恐ろしいメリアージュ様になんて迫ったら良いのか分からないという思いで、早くも意気消沈し始めていた。
しかし、還暦というこれ以上ないチャンスをふいにするのも勿体無い、これを逃したら生涯私は自分から妻を抱いた事のない男になってしまうという思いで葛藤もしていた。
「メ、メリアージュ様! 私ももう60歳になりました!」
「ああ、言われなくても分かっている。何だ? さっき、パーティーをしてやっただろう?」
今更宣言をしなくても分かっているというように、メリアージュ様はベッドに腰をかけながら足を組んで私を見ながら言った。相変わらず格好いいです。メリアージュ様は私よりも4歳年上なのですが、魔力のせいで全く老けないので結婚したままの凛々しく美しいままでいます。
「そ、その……お祝いをくれませんか?」
「何だ? たくさん用意をしてあるが?」
「私が欲しい物をメリアージュ様からいただきたいのですが……強請っても良いでしょうか?」
「何だ遠慮して。何でも言え、俺はお前が欲しい物は何でもかなえてやろう」
どう考えてもメリアージュ様が夫にしか見えない。
「本当に、絶対ですか?」
「俺のことを信用しないのか? 制約の誓いをしても良い。ロアルド、お前の願いなら何でも叶えてやる」
メリアージュ様は少し酔っているのかもしれない。普段だったら、こんな簡単に約束をしないだろう。いや、私からこんなふうにおねだりをすることがないからだろうか。酷く嬉しそうに見える。
「メリアージュ様……私を漢にして下さい!!」
「……漢? どういう意味だ?」
とぼけているのではなく、本当に意味が分からないようだ。
「その!……何時もはメリアージュ様が、夜……主導権を握っています。それを、今夜からは私が夫として、メリアージュ様を抱かせてください」
「……今までだって、俺は抱かれている立場だったが?」
嬉しそうな顔から一転、氷のような無表情になってしまったメリアージュ様に心が萎えそうになるが、挽回できる機会はもう、そうは無いに違いないと自分に言い聞かせて頑張った。
「そうではなく、私がメリアージュ様を愛撫して、私が上になってメリアージュ様を抱きたいんです!」
しばらくメリアージュ様は無言だった。無言のまま、私を睨みつけていた。
「……駄目だ」
「そんな! なんでも願いを叶えてくれるといったじゃないですか!?」
「駄目な物は駄目だ! これだけは無理だ!」
「どうしてですか?! 私はメリアージュ様の夫ですよ! 私だってメリアージュ様を抱きたいですし、私に抱かれるのはいやじゃないですよね? だって、奉仕はしてくれて乗ってくれるんですから私を厭っているわけじゃないんですから!」
世の中には夫を愛していない妻がいる。そんな妻達は夫との夜の回数を減らそうと必死だという。メリアージュ様の兄上は閏年に一回だし、他にもマグロの妻や恐れ多くも陛下などは奥様に拒絶をされて久しいという。そんな夫たちに比べ、メリアージュ様は情熱的に私を求めてくれ、恐ろしく凛々しく私に跨ってくれる。私のことが嫌いと言うのならそんなことをしないはずだ。
「制約の誓をしても良いと、私の願いをかなえてくれると言ったのに嘘だったんですか?」
実際に制約の誓いはしていない。メリアージュ様は冗談で、しても良いほど私の願いをかなえてくれるとおっしゃってくれたのだ。
「……それだけは無理だ。すまんな、ロアルド」
夫婦生活はちゃんとあったので、どうして私に主導権をくれないのですか? と恐ろしさもあって真剣に話し合ったことは一度もなかった。そして30年以上が過ぎてしまい、私は漢になれないまま還暦を迎えてしまった。
「だいたい、もう孫までいるんだ。今更……主導権がどうのこうのと言う様な年でもないだろう」
「そう、孫までいるんです! 孫までいて、私はただの一度もメリアージュ様を抱いていないんです! このまま、漢になれないまま……死んでしまうのかと思うと……不甲斐なくて」
「ロアルド……」
メリアージュ様を困らせている。私が我慢すれば円満な夫婦に戻れるんだ。もう我慢をしてほうが良いのかもしれない。そう心が萎えかけた。
「せめて、理由を教えてください。理由を聞けたら、私は納得して元に戻れると思います。納得できない理由でも良いんです……どうしてか分かったら、それでもう良いんですから……」
勿論主導権は握りたいし、夫らしくメリアージュ様は抱いてみたい。でもメリアージュ様をこんなに困らせてまで強制すべきことじゃない気がしてきたのだ。だが理由だけはしりたい。どうしてこれほど自分が主導権を握りたがるのかということを。
「……言えない」
「メリアージュ様」
「言いたくないんだ……」
顔を真っ赤にして俯くメリアージュ様……か、可愛い!
「そうだな……お前の還暦祝いだ。俺も願いをかなえてやるといった。かなえてやる……こい、ロアルド」
言い方は凛々しいが、真っ赤になったままベッドに横になって私が来るのを待っているメリアージュ様……い、いよいよ私が漢になるときが!!!!
「その代わり、これが最初で最後だ……もう、一生言い出すことは許さない」
そ、そんな! 主導権をこれから握れると思ったのに、今夜が最初で最後なんですか!?
「嫌なら、今夜もなしだ!」
「分かりました……今夜、メリアージュ様に漢にしてもらって、それを一生の思い出にしていきます……」
ここで言い争っては今夜は無しで、そして今後も永遠になしにされるだろう。今夜還暦の祝い+約束をしたということで、メリアージュ様はここまで譲歩をしてくださったのだ。
しかし、妻の服を脱がすのが孫までできたというのに初めてと言うのが……勿論裸は何度も見てきているが、脱がすとなると新鮮で興奮してくる。
そして、私は妻の裸で唯一見たことがない場所を一番初めに見ようと、服を脱がせ、納得していたはずなのに嫌がる足を広げて見た。
「メ、メリアージュ様……私、メリアージュ様のここ初めて見ました……何時も私を咥え込んでくれている大事な場所はこんなふうになっていたんですね!」
「黙ってやれ!」
いやらしく私を誘うようなそこに一番初めにキスをした。最初で最後なんだ! 今日出来る限りのことをしないといけない!
そうだ! パイパンというのは流行だったはずだ! 今夜を逃したら私は一生見ないまま人生を逃す事になってしまう!
妻のあそこを見たのが60歳になって初めてなら、パイパンも初めてになる!
メリアージュ様に文句を言われないように一瞬で魔法でパイパンにする!
「ロ、ロアルド! 何を考えている!」
「今夜が最初で最後なんですから、メリアージュ様の隅々まで見たいんです! 例え明日ボコボコにされようとも今夜はやりたい放題します!」
私は何故だかむしょうに強気でいられた。何故だか分からないが最初で最後という言葉に、今日死んでも良いのでやれることをやりきろうと思えたのだ。
「ほら、メリアージュ様。こことっても可愛くなりましたよ? 見ます?」
「やめろっ……」
「メリアージュ様のここも凄く柔らかくって、私の指をくわえ込んでくれます。私、初めての体験ばかりで、メリアージュ様の体のこと何も知りませんでした。凄く惜しいです。今夜だけしかメリアージュ様のこんな可愛い姿を見れないなんて」
メリアージュ様は私が何か言うたび、顔を赤らめて恥ずかしそうにしている。その顔を見たくて、意識して卑猥な事を言っているわけではないが、メリアージュ様いわく言葉責めをしているらしい。
「メリアージュ様入れますよ。私の初めてなので……二度目の純潔をささげるような物でしょうか?」
「ひっ……あっ」
メリアージュ様は物凄く感じやすかった。私が入れるだけで身悶えして、涙を流して私に縋ってくれた。
上に乗ってくれているときにはこんなメリアージュ様は見せてはくれなかった。何時も余裕そうで私を追い詰めてばかりで。
だが、今は私が動くたび悲鳴を上げて、足をビクビクさせていた。
「分かりました……メリアージュ様がどうして私に抱かれるのを嫌がるのか。こんなに淫らでいやらしい体だと知られたくなかったからなんですよね? こんなに素敵なメリアージュ様なのに、秘密にしていたなんでズルイですよ」
メリアージュ様は本当に私のことが好きなのだ。好きすぎて、私に抱かれるとこんなふうになってしまうのだろう。プライドの高いメリアージュ様には許せる事じゃない。だから、どんなに私が好きでも今まで許してくれなかったのかもしれない。
「凄く、可愛い……メリアージュ様、愛しています」
今夜は自由にして良いという許可のため、私はそれから朝が来るまでメリアージュ様をずっと抱いていた。今夜一日で一生分メリアージュ様を抱かないといけなかったからだ。
「ん? ここは何処だ?」
気がつくと私は3つ先の国で全裸で転がっていた。何があったか全く覚えていない。昨日は確か還暦パーティーがあって。それで何で外国で全裸で転がっているのだろうか?
以前にも何故か国境で全裸で転がっていたことがあったが、あの時も記憶があやふやになっていた。
本当だったら不法入国(+全裸)で罪に問われるはずだが、あの国の伯爵なんですと言えば、この国の国境警備の軍人たちは怖がって無罪放免かえしてくれた。
「メリアージュ様、私なんで外国で全裸でいたんでしょう?(´・ω・`)記憶が無いんですが……」
「昨日、パーティーで飲みすぎたせいだろう」
全く答えになっていなかったが、普段の私だったらそれで納得しただろう。しかし、朝起きて記憶がなかったのは嘘ではなかったが、すぐにメリアージュ様との淫らな一夜を思い出したのだ。
それだけではなく、昔、強気で攻めた一夜の記憶も蘇ってきて……メリアージュ様が恥ずかしくて記憶を消したのに気がついた。
昨日も記憶を消すつもりだったから、恥ずかしくても私との約束を破りたくない男気で、許してくれたんですよね?
これでもメリアージュ様より魔力は高いのだ。一度はあえなくかかってしまったが、二度目ともなるとそうはいかない。しっかり覚えているどころか、過去の記憶もばっちり思い出したのだ。しかし、きっとメリアージュ様は私に覚えていてほしくないんですよね?
恥ずかしがりやなので仕方がないんですよね(´;ω;`)
私はしっかり覚えていますが、メリアージュ様のために黙っておきます。
素晴らしい一夜をありがとうございました。私を漢にしてくれて……いえ、もっと昔にも一度漢にしてくれていましたよね。
そうそう、息子に訂正したいことがある!
ロベルト、お前の作成体位は騎乗位じゃなかったことだけは確かだ!
あの日は、他の体位ばかりしていたからな。だから騎乗位でできた子だと落ち込む必要はない!
あれ?
そういえば、漢にしてくれた日にロベルトはできた。
なら、昨夜は?……ま、まさか。まさかな……私ももう60歳だ。有り得るわけない……よね?
END
漢ロアルドでお送りしました・・・・メリアージュ様の念願の第二子・・・はどうなる??
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