「ほら、エドガー。皆名門一族の、優秀な男達ばかりだ。誰と見合いをしたいのかな?」
こんにちは、エドガーです。かつて平凡な男爵家の次男であり、結婚相手は平民になる可能性すらあり、そのうち貴族ではなくなる可能性もあった者です。
しかし今は……未来の王妃の兄であり、未来の国王の伯父であり、公爵家の姻戚であり、伯爵家の次男に格上げとなってしまいました。
未来の国王の兄なので、変な結婚はできません。王家と公爵家に泥を塗ってしまいますので、義理の兄アレクシアの勧める結婚を考えるのも……仕方がないのだろう。
うう、弟とは違って異性愛者ではないが、俺の好みは可愛い顔をした男性だというのに。
「凄くイケメンばかりですね……」
「イケメンで美人なエドガー君に似合いそうな、魔力の高い男を選んできたのに不満かい?」
魔力が高い男なのは、もうどうしようもない。公爵家や王家と姻戚になったのに、俺だけ魔力の低い男と結婚するわけにはいかないだろう。面子というものがある。
エイドリアン兄さんだって我慢して、アレクシア義兄さんと結婚したんだ。俺だって我慢して、家のために見合いをするべきだと思う。
しかし可愛い顔は譲りたくない。一生見て過ごす顔だ。
「可愛い顔が好きなんです」
「可愛い顔をした夫が欲しいのか? 珍しい趣味だな」
「夫でも妻でも可愛い顔が良いんです!」
「……可愛い顔をした魔力の高い一族はいるが……ちょっと難があるんだが」
「どんな難ですか?」
「まず……毛深いんだ」
「そんなのどうでも良いです! 毎日俺が剃ります!」
毛深くたって、見ないようにして毎日魔法で剃れば良いだろう。そうしたら可愛い顔だけが残る。
「……なかなか前向きな考えだな……しかし、可愛い顔をして、でかいと有名な一族だぞ? 大根を突っ込まれている気分がするとまで言われると言うのに……そんな男と結婚したいのか?」
大根?
つまり、性器がでかいのか?
「……別に気にしません。だって、でかいって言ったって、アレクシア義兄さんだって相当なものだってエイドリアン兄さん言ってましたよ。上位貴族はどうせ皆でかいんでしょう? だったら俺は可愛い顔を取ります!」
「勇者だな……そこまで言い切った嫁候補は私ははじめて見た。きっと、あの一族も喜ぶだろう」
あの一族……公爵家と並ぶ開祖の名門一族を紹介された。皆可愛い顔だった!
俺は誰でも良い! 皆可愛い顔をしているから、好みだ!
「ほ、本当に僕で良いんですか? 僕達、お見合いしてもすぐに断わられてしまうんですが……」
「凄く好みの顔です! ぜひ結婚して欲しいと思っています」
顔合わせをした中で、俺の事が気に入ったという可愛い青年と正式にお見合いする事になった。
しかし相手は何か騙されているような表情で、おそるおそる俺に何度も問いただした。
何でそんなに懐疑的なんだろうか。毛深いのってそんなに人気がないのだろうか。ちんこがでかのってそんなに駄目なのか?
「僕の一族で、こんなに請われて結婚できるのは、僕くらいしかきっといないと思います! 凄く嬉しいです」
「その可愛い顔を毎日見せてください! あ、ただし、毛は毎日剃らせてくださいね」
★★★
「……可愛い顔だけのために、イアンの従兄弟と結婚したのか?」
俺は心底理解できなかった。イアンの一族の集まりで出会った青年は実はあの隊長の妻エルウィンの兄だった。
思わぬところで親戚になっていたとびっくりしたが、せまい上級社会だ。婚姻関係があってもおかしくない。
「おかしいですか?」
今日の集まりはエルウィンたちを真似て奥様会を開いた。
参加者はエルウィンの兄、エドガー。
長男リオンの妻、ラルフ。
次男アレンの妻、ファビアン。
そして俺の兄嫁、イーディスだ。
「おかしいだろう! もっと他に真剣に考えるべきところがあるんじゃないのか?」
「どうせ、恋愛結婚なんて出来ないんです。だったら俺好みの顔で、金持ちで、今までお見合いを断わり続けられた可哀想な男を救済して恩を売って、幸せにしてやろうというボランティア精神で結婚しても良いんじゃないんですか? 夫は俺にべた惚れです。確かに大根なちんこを持っていますが、俺別に苦だと思ったことないんで」
「でも、エドガー様の思考良いと思います。どうせ結婚しないといけないんだったら自分が有利になれる相手で好みの顔を選ぶべきだと思います。俺なんて何の選択肢もなかったんですから」
「まあ……エドガーさんの場合、自分で選べた分だけ成功者だよな……俺たち三人誰も夫を選べなかったのに、一応好みの相手を選べたのは……って、どうしてそれで辺境伯家の男を選ぼうと思うのかはやはり理解できない」
「いえ、俺はアレンのことが好きですよ。まあ、ちょっとでかいとは思うけど、毛深いのほど気になりません」
……4組の夫婦の中で2組も両思いのカップルがいるのか?
最近、辺境伯家では両思い結婚がかつていないほどあるという(といっても2組)
そのせいで、恋愛結婚ブームが巻き起こっているらしい。
どれだけもてない一族なんだ。俺の息子のイリヤも物凄く可愛い顔立ちをしているから、もてると思うんだけど、それでも成長すると毛深くなって、もてなくなるのか?
「でかいのって、そんなに苦ですか? 慣れれば気持ちが良いですよ」
な、慣れたら……気持ちが良いの、か?
「う、ん……確かに慣れれば、そんなに気にならなくは……なるな」
ただ、俺もそこまで気にした事はなかった。
それよりもイアンの変態な性格をなんとかしないと!と奮闘していて全裸を矯正しないと、とか、そういう根本的なところばかりが気になっていて、別に毛深いとかでかいとか問題視をしてこなかったな……
「俺の旦那様には、旦那様の大きすぎて俺壊れそうです! って涙を見せると、挿入回数少なくなって楽ですよ」
「イーディス、君の小悪魔振りは素晴らしいな、相変わらず」
わが弟子ながら、恐ろしい成長振りだ。兄は何時も脂汗をかきながら、しかしデレデレとした表情をして尻にひかれている。母と同じ顔をして要領の良い子だ。母もイーディスの半分でも要領がよければ軟禁生活をすることもなかっただろうに。
「別に俺は回数多くてもOKですから」
こ、こんな兵見たことない……俺の知っている妻達は、皆夫との性行為の回数を減らそうと必死だと言うのに。
エルウィンの兄とは思えない潔さだ。
少しは弟エルウィンに見習えといえないのだろうか。
「……」
「ん、ラルフ、どうして無言なんだ?」
「やはりリオン様って長男だけあって大きすぎるんですか?」
「……4回しかしていないので見ていません」
「え? って、まだ4回しかしていないのか? 義理母上とマグロでも良いからもっとやらせてやる計画だったはずだろう?」
「……」
「俺でも3回1回は快くさせてあげていますよ。4回はちょっと酷すぎるんじゃあ……」
「俺の弟は鬼嫁だって有名だけど、4回以上はさせていると思うんだけど……」
いや、エルウィンも4回だが。ただその4回は新婚旅行とかも含んでいるので、明らかにラルフのほうが回数が少ない。
「尊敬できないので……」
「いや、でも、リオン義兄上は、ラルフの命を救うために頑張ったじゃないか! 十分尊敬に値する方だろう!」
「イアンさんと、俺の事をネタに話していました。夫婦の性生活を弟にばらすなんて最悪です」
「……だが、今入った情報によると、リオン義兄上ははあの隊長と急接近中らしいぞ! お互い妻に性生活を我慢させられている者同士それはそれは仲良くなっているらしい。このままだと、変な法案を通す気らしいぞ。性生活を義務化する法案を通そうと尽力するリオン義兄上を見たいのか!?」
「余計尊敬が出来なくなりますね……」
話を聞く限り、リオン義兄上はとてもよい方なのに。兄弟同士でシモネタ言うくらい良いだろう?
相当潔癖な人だな。
「だったら、そんな恥ずかしい夫になる前にエッチをさせてやってやれ。少し夫の操縦が下手すぎるぞ」
イーディスもエドガーも相当の兵で、そしてファビアンもだ。
なのに、どうしてラルフだけ駄目なんだ?
そして第二回お茶会が開催された。
「ラルフ、上手くやったのか?」
「………本当にでかかったです」
「だから、でかい家系だって言っているでしょう」
「ですよね」
「今頃見たんでしょうか?」
「旦那様も、でかくて有名な家系じゃないですが大きいですよ」
まあ、辺境伯家がでかいので有名な家系なのは、ただ単に顔と似合わないからだと思うけどな……隊長もよくパイパンでぶらんぶらんさせていて、隊員たちを恐怖に陥れていたらしいからな。他の家の男が決して小さいわけではないだろう。
「見たということは、やったんだな?」
「……見ただけで嫌になって止めました」
「なんと言う生殺し……」
「ある意味、ラルフさんって最強の鬼嫁ですね」
「エルウィンに勝るな……」
皆から、影の最強鬼嫁と言われたラルフ。
その夫のリオンは……
「隊長、聞いてください! やっと、ラルフがさせてくれるというから、それはもう息子を勃起させてベッドに飛び上がって入ろうとしたら、私の自慢の息子を見せてくれと言うので全裸になったら、そんなでかいのとはしたくないと、物凄く嫌な顔をされて拒絶されたんです! だって4回とはいえ、今までしたんですよ! 今更でかいから嫌とかないでしょう!!!!(;Д;)一応、子どもまで作ったと言うのに!」
「わかる、分かるぞ! 私とて何度エルウィンの冷たい拒絶にあったことか!!! そんなにしたいんですか? 隊長の頭の中ってエッチしかないんですね。一人でやっていればどうですか? もう二度と妊娠したくないので、一生したくありませんと、まだ4回しかしていないというのに、もう打ち止め宣言なんだ!!!(´;ω;`)」
「やはり法案は通さなければいけません!」
「週に二度は必須だな!」
「はい、素晴らしい法案ですよ!」
「私もこんな同士に出会えるとは思っていなかった! 誰も私の気持ちなど分かってくれなかったのに、リオン君は私の親友だ!( ;∀;) 」
「( ´∀`)私こそ、こんな気の会う親友ができるとは思ってもいませんでした! 始祖同士は親友だったので、やはり運命ですね」
一番駄目な親友を作っていた。
END
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