「メリアージュ様、メリアージュ様の肌はとても綺麗ですね。余りメリアージュ様は私に見せてくれないので、こうしてじっくりと拝見するのは初めてかもしれません」
ロアルドに見られているのが分かる。それだけで堪らなく恥ずかしいのに、許可を与えてもいないのに、俺の胸に唇を寄せてきた。勿論そんなことろを触れられるのも初めてだ。
思わずビクリと震えてしまう。
「……メリアージュ様……可愛いです」
「やめろっ……何も言うなっ」
俺は今まで性行為で自分の快楽などはどうでも良かった。ロアルドとして自分が気持ち良くなりたいと思った事はない。ただ、ロアルドに触れられていればそれで良かった。俺の体でロアルドが快楽を感じてくれれば、それだけで精神的に満足できた。愛する男と交わっているという事実があればそれだけで良かったのだ。
「ですが、妊娠するためにはメリアージュ様に気持ちが良くなってもらわないといけないんですよ……」
「そんなものっ!……ただの迷信だ…」
「迷信だって良いじゃないですか。私はメリアージュ様が私にしてくださって献身を知っています。だから、迷信でもいい。なんでもメリアージュ様にして差し上げたいんです」
「だから、黙ってやれ!」
もう何も言われたくない。こんな俺が可愛いわけもなく、そんなことをロアルドに言われたくない。
「なら、せめて顔を見せてください。枕に顔を押し付けていないで、私を見ていて下さい」
ロアルドが自分のことを俺ではなく、私と言い出したのは最近のことだった。部下もいますし、責任のある仕事になったのでと言っていたが、少しでも夫らしいところを見せたいと思ってそうしだした事を俺は知っている。
本当に良い夫になれただろう。俺なんかの夫にならなければ、もっと違う生き方が出来たはずなのに。
ロアルドの指が俺の後孔を探っているのが分かる。勿論触らせた事なんかなかった。
「どこが気持ちが良いんですか? ここですか? 教えてくれないと、メリアージュ様を気持ちよくして差し上げられません」
「……っ」
「メリアージュ様は、私ばかり開発しようとされますけれど、私もメリアージュ様にずっとこうしたかったんです」
ロアルドは自分が受身ではなく攻めるほうに回ったせいだろうか、酷く饒舌で、ベッドの中でこんなにしゃべるのを聞くのはこれまでなかった。
「…んっ」
「俺、凄く興奮しているみたいです。今だったらメリアージュ様を妊娠させることができるような気がします」
早急に押し入ってきたロアルドの堅さは確かにこれまで感じた以上のものだった。男としての本能が勝っているからだろう、ロアルドからするのは初めてなはずなのに、手なれた感じすらして俺を抱いていた。
上か下かだけの違いなのに、これまでとはまるで違った。
ロアルドに数度押し入れられただけで、達してしまっていた。呆然と自分が余りにも容易に達してしまったのを見ていると、ロアルドが嬉しそうな顔でそれを見ていた。顔が赤らむのを感じた。
「メリアージュ様……本当はとても感じやすかったんですね。この7年とても時間を無駄にしたみたいです……でもこれからは俺が感じさせてあげますから」
何時の間にかロアルドの口調が俺に戻っていた。興奮してくれている証拠なのだろうか。
「駄目だっ……もう、無理だっ」
「どうしてですか? 俺の子を孕みたいんでしょう?」
「俺がっ……俺でなくなるから」
「それで良いじゃないですか。俺で乱れてくれるメリアージュ様が見られるなんて、考えた事もなかったです。見たことのないメリアージュ様がもっと見たいです」
ロアルドはそれからも今までの態度からは考えられないほど強引だった。何度も貫かれ、体勢を変えては俺をむさぼるように抱いた。
俺はただ無様に喘いで、ロアルドのなるがままになっていた。
「メリアージュ様……とても素敵でした。これで、赤ちゃんできたかもしれませね」
「………ロアルド」
「はい? ぐああああああああああああ」
その後、ロアルドは第一部隊に国境付近で全裸で保護をされたという。第一部隊隊員達は、奥様を怒らせたのだろうと誰も全裸で倒れていたことに疑問を持たなかったという。
ちなみに第一部隊はアンリが隊長だが、部下に公爵家の者がいて、ロアルドの股間が危険だったらしい。アンリが隊長でなかったら公爵の指令で、息子が無き者になっていた可能性は高い。
「メリアージュ様……私何故か、ここ数日の記憶がないんですが……おかしいですね。殴られたくらいでは記憶無くならないのに」
「……」
「私が何かメリアージュ様の気に障ることをしましたか? 何故国境で全裸でいたのでしょう?(´・ω・`)」
俺は公爵家にしては魔力が弱い。独自魔法も兄弟に比べたら微々たるものしか持たない。唯一俺が持っている独自魔法は、記憶消去だ。
「すいません……きっと俺がメリアージュ様を怒らせてしまったんですよね。ただ、できれば今後殴る時は全裸ではないときにして欲しいです……」
「そうだな、俺も反省した。お前の裸を他の男に見せるなんて……お前の裸を見て良いのは、俺だけだ」
「はい! そうしていただけると大変助かります」
あの夜の記憶はもうロアルドにはない。俺だけはあの夜を知っている。
あんな俺はもう必要ない。あんな醜態は二度とロアルドには見せられない。
「ロアルド、貴様! また、可愛い男を部下にしたな!!??」
「許してくださいメリアージュ様! 私の部下をマッチョだけで占めるのにも限界があるんです! 差別していると訴えられて……マッチョの占有率を50%まで下げるように命令されたんです!」
「煩い! 俺がアイツ(部隊長なのですが、メリアージュ様の命令に従ってしまいます)に言って、そんな命令取り下げさせる!」
「ぐあ!……って、あれ? パンチが弱いですね」
普段は王都の端、より怒らせると国境まで飛ばされるのが恒例になっているだけに、パンチを食らったが魔力がこもっていなかったので、飛ばされる事もなかったのに疑問を持ったようだ。
「貴様は父親になるんだ! 父親になるという責任感を持って、可愛い男に目移りすることがないように精進しろ!!!!」
「いえ、私はメリアージュ様しか興味がありませんから他の男なんて……え? 父親ですか?」
「そうだ! 約束どおり、気力で妊娠した! だから、俺から逃げられると思うなよ?」
愛されていなくても良い。俺がロアルドを愛しているから。
他の男のほうがきっとロアルドを幸せに出来ただろう。でも、俺はどうしてもロアルドを諦められない。
だからせめて、子どもだけでもロアルドに与えてやりたかった。だからあの恥ずかしい一夜を我慢した。たった一度でできるとは思わなかったが。
ロアルド、これが公爵家の男に愛された男の運命だ。
一生俺はお前を束縛するし、絶対に離さない。
END
こうしてロアルドは漢になったはずですが、記憶にはないと・・・。
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