メリアージュ様はとても不機嫌そうだった。
メリアージュ様の親友?であるイブちゃんの第二子誕生のお祝いと、第三子妊娠のダブルお祝いに来ていたわけだが。

ついでにイブちゃんの妻のアーロンは俺の親友でもあるので、俺たち夫婦の親友夫婦といえるだろう。

だが何が違うというと、アーロンたちはもう三人もできていて、俺たちには一人もいないということだ。

俺はメリアージュ様との間に子どもを持つのは不可能だと思っていたので、子どもができないことに何の疑問も持っていなかったし、メリアージュ様がいてくれればそれで良いと思っていた。こんなに高貴で凛々しく美しい方が、俺なんかの妻になってくれたんだ。
確かに嫉妬深く、俺には何の自由もないけれど、それでもこれだけ俺を愛してくれる方がいてくれる。それだけで充分だと思っていた。

跡継ぎは、兄弟がいないので従兄弟の誰かに任せれば良い。

だがそう思っていたのは俺だけで、メリアージュ様は絶対に俺の子どもを産む気でいらっしゃったらしい。

「どうしてお前らはポコポコ3人も作って、俺には出来ないんだ!!!??? 俺より後に結婚したアンリですら、もう子どもがいるのに!」

メリアージュ様の婚約者(父と兄夫婦が決めた)のアンリ様は、メリアージュ様が実家をとび出て俺と結婚した後にすぐに、に王子ユアリス様と結婚し、お互い魔力が高いながら5年後に子どもを儲けていた。

自分より後に結婚したアンリ様や親友が子どもができていって、ご自分だけ出来ないのが悔しいのだろう。
しかし、俺とメリアージュ様は本当に魔力が僅差なのだ。
一見しただけではどちらが高いか分からないほどに。

私のほうがかろうじて高い。それだけが、私が夫でいられる唯一のメリアージュ様に勝っている点だ。

「メリアージュ、夫婦生活ちゃんとしいるの?」

イブちゃんは可愛い顔をして、夫だ。俺の親友アーロンに三人も妊娠させたんだ。それはもうやり手なのだろう。顔は相変わらず可愛いけど、夕方になってくるともう顔に髭が……

「なんだと! しているに決まっているじゃないか!」

はい、メリアージュ様は男らしく俺に跨ってくださいます。

「……メリアージュちゃんと感じている?」

……はい、それは私も凄く知りたかったことです。

基本的にメリアージュ様はエッチの際に、私の快楽ばかりを優先して下さっていて、ご自分がどうされているか私には分からないのです。
本来だったら夫である私がメリアージュ様を気持ちよくして差し上げないといけないと言うのに。メリアージュ様は絶対に私に主導権を握らせてはくれないし、私から触れるのも禁止だ。何故なのだろう? 私は一応夫のはずなのに。かといって、エッチが禁止というわけでもない。メリアージュ様は情熱的に、私を求めてくる。ただ、その情熱はいかに私から搾り取ろうとするかという点でいて、決してメリアージュ様が淫らだという訳ではない。

「どういうエッチしているわけ? 妊娠って、奥様が感じてくれると受精率が上がるんだって」

「イブちゃん……その話だと、イブちゃんが物凄くエッチが上手いって自慢しているようにも聞こえるんだけど」

アーロンが遠い目をしていた。アーロンは確かにイブちゃんの子どもを短期間で三人も身篭った。けど、決してイブちゃんのエッチが上手いのかというと、激しく疑問が残す所だろう。
私は何度聞いた事だろうか、アーロンの泣き言を。イブちゃんのちんこがでかすぎる。子ども産んでも全然慣れない。大根を突っ込まれている気分になる。そんなことばかりを私は聞いていた。

辺境伯家は、開国の名門一族だ。あの公爵家とも引けを取らないが、可愛い顔をしてマッチョで毛深くてでかい一族という評判で、まったく嫁の来てがない一族でもあるらしい。花嫁を誘拐していたのは、国内でお嫁さんに来てくれる人がいなかったかららしい。では公爵家がもてる一族かと言われれば疑問が残るが……

そんなもてない一族の当主に嫁いだアーロンは、決して感じているから子どもに恵まれたのではなくて、イブちゃんのでかいちんこを敬遠して、身を守るために妊娠しやすいだけのような気がしないでもない。

「僕、エッチ上手じゃないの?」

「あ、いや、そのそういう夫婦の秘密を他人に話すのはちょっとね……」

「そうだ。お前は他人の性生活に卑しくも口出しをしやがって。だから、お前の一族はもてないんだ!」

「僕の一族は、毛深いからもてないんだよ! それにメリアージュの一族だって大陸中から誘拐公爵だ!って忌み嫌われているじゃないか!」

メリアージュ様とイブちゃんは同期で親友のくせに仲が悪い。
昔、お互い名門の家柄だったのでイブちゃんの家に嫁ぐ話とかなかったんですか?と聞いた事もあったが、イブちゃんとなんて有り得ないと怒られた。
まあ、俺もアーロンと結婚と言われたら、嫌だから気持ちは分からないでもない。

「僕はね、思うんだ、メリアージュ。メリアージュってロアルド君を支配しすぎていて、ベッドの中でもきっと君が仕切っているんだろう? それじゃあ、できるものもできないと思うんだよね。もっと奥様らしくしてみれば?」

メリアージュ様は震えている。ただし、怒りでだ……

「そんなことで、子どもができるできないが関係あるか!!!」

「あるよ。だってどう見たってメリアージュのほうが男らしいもん。そんなんじゃあ、ロベルト君だって抱いているとかじゃなくって、抱かされている、突っ込まされている、いいや……孕まそうとしているんじゃなくって、種付けを強制させられているっていうイメージなのかな?」

「イ、、イブちゃん……例え本当のことでも言ってはいけない事が」

「だって、こんな凛々しい妻相手に孕ませようとする魔力込めれないよ。どう見たって、ロアルド君が陵辱されているようにしか」

「もう帰るぞ! ロアルド!!!」

「は、はい!」

イブちゃんくらいだよ、こんなことメリアージュ様に言えるのは。

私の部下達も未だにメリアージュ様の命令を聞くし、親戚一同もすべてメリアージュ様の支配化にある。
誰もがメリアージュ様の言う事を聞くのに、イブちゃんだけがこんな調子だ。でもそれが親友なんだろうとは思う。

でもその親友に三人も子どもができて、甥も同様で、最近メリアージュ様は落ち込んでいるようだった。イライラなさっているし、ベッドでも執拗に私を責める様になり、余りの責め苦に私が泣きそうになると、悪かったといって抱きしめてくれ、メリアージュ様の腕の中で抱きしめられて眠りにつかされる日々だった。
確かにこれではどちらが夫だと分からない。

「何か、メリアージュ様に子どもができるような秘薬はないでしょうか?」

「貴様、誰に向って頼んでいるんだ!!!???」

「そうだ、そうだ!!!! 私達のかわいいメリアージュを孕ませようとなど、誰が協力するものか!!!」

私達から見て、義理の兄と父親に面会を頼んで、何かメリアージュ様の妊娠の手助けになる秘薬はないかと公爵家の方々に頼んでみた。
一度は面会は断わられたが、甥であるアンリ様のツテでようやく成功させたのだが、婿いびりが……

「私が気に入らないのは分かっています、ですが!」

「気に入らないに決まっているだろう! 貴様のような平凡な男に、夜毎メリアージュが奉仕していると思うと、パパは憤死しそうになるわ!!!」

「私だってです!!! 息子のような弟に、貴様の汚いちんこが挿入されていると思うと、今すぐにちょん切ってやりたいものを!!!」

相変わらず、私の息子に対する攻撃が凄い……

「ですが! メリアージュ様は私の子を欲しがっているのです!」

「我々はメリアージュに子どもができないからまだ正気を保っていられるのだ!」

「ですが!……メリアージュ様が可哀想だとは思わないんですか! 甥のアンリ様や親友のイブさんが子どもが生まれいくのを、ただじっと黙って耐えてみているだけなんですよ! ずっと、メリアージュ様は子どもを欲しがっていたと言うのに! 私が気に入らないのはわかります!……確かに公爵家の子息の婿としては物足りない存在でしょう!……ですが、そんな私を誰よりも愛してくださっているのはメリアージュ様です。メリアージュ様に幸せになってもらいたいのだったら、私と言う存在は無視しして、どうか協力をしていただけないでしょうか?」

「ふっ……貴様は我々が万能だとでも思っているのか!!??」

公爵家の方々でできないことはないとは思っております。莫大な魔力を持っていて、この家系でしか持たない独自魔法を山ほど持っている。

「万能だったら、私は30年も妻に嫌われていなかった!!!(´;ω;`)!!!!  妻にゴキブリのように嫌われて、子どもさえできれば愛されるかもと期待して、5年もかけて孕ましたのに、子どもは可愛いけれど貴様のことは憎いままだと言い切られたまま30年……私でも、30年かけて愛を勝ち取って! 子どもを作るのに5年かかったというのに! 愛と妊娠だけは我々でもどうにもならん! せいぜいが、花嫁の媚薬を花嫁に飲ませて快楽漬けにするくらいしかできないのだ!」

「父上! 父上などまだ良いですよ! 父上は30年かかって、母上に愛してもらえました! 私など未だに妻に嫌われていますよ!(´;ω;`) うるう年に一回くらいしかエッチさせてくれないんです! アンリが生まれたらもう義務は果たしただろうといわれ……うるう年に一回ですよ!!?? 私はそのうるう年の2月29日に、ありったけの逆行魔法を使って、毎回5分時間を戻し、その時だけエッチをしまくるんですよ! 妻には時間を戻している事は内緒ですよ」

「なんと不憫な息子だ!」

「そう思うと、アンリはなんと幸運なのだろうか。あれだけ愛してもらえる人と結婚できたなんて」

「我が家で初めての両思いの夫婦かもしれんな……」

すいません、私も涙が出てきました。義兄上、うるう年に一回しかさせてもらっていないんですね。それでもお二人もお子を儲けられて……義父上は誘拐してきたとは聞いていましたが、義兄上は恋愛結婚だと聞いていたんですが、義兄上の強烈な片思い結婚だったんですね。開国より長い歴史を誇る公爵家の両思い夫婦がアンリ様だけとは。

「残念だが、メリアージュのためとはいえ、我々でもどうにもならない問題だ」

「それに、メリアージュなら受精促進剤を花嫁の媚薬から抽出できるだろう。メリアージュの男の趣味は理解できんが、貴様のためにもうずっと前から服用しているはずだ……それでも駄目と言う事は、どうしようもない」

嘘は言っていないだろう。基本的にこの方達嘘が苦手で、嘘をつけない性格をしている。
メリアージュは花婿の秘薬の解毒剤も開発してくれた。そのメリアージュ様が確かに受精促進剤を使っていないはずがなかった。
それでもできないのだから、やはり私たち夫婦の間に子どもは無理なのだろう。

私は結婚したときから無理だとは分かっていたから、ただメリアージュ様のために何とかして差し上げたかった。

でも、万能の魔力を持つ公爵家の方々でも無理なのだ。メリアージュ様にもうこれ以上期待して傷ついて欲しくない。諦めてもらうより他はない。


「メリアージュ様……お話があります」

「何だ、真剣な顔をして」

「その……私はメリアージュ様がいてくだされば、子どもは必要ありません。跡取りは一族から優秀な者を選んで任せようと思っています。だから、もう無理をしないで下さい。私は貴方と結婚できただけで幸せです」

本当に嘘偽りない言葉だった。
初めは怖い奥様だ、勃起しなかったらどうしようと悩んでばかりだったし、しごいてくる上司だったのだ。恋愛感情がなくて当然だったが、この方なりの不器用な愛情表現だったのだと気がつき、この世で私をこれ以上愛してくださる方はいないと気がつき、同じように私もメリアージュ様を愛するようになった。

「二人だけで、生きていきましょう」

「……駄目だ」

メリアージュ様は私の言葉に、力なく否定の言葉を紡いだ。

「お前は……俺が無理矢理結婚をしなければ、きっと気立てのいい優しい妻を娶って、子どももできて……幸せな結婚生活をおくれたはずだ。それを俺が奪ったのに……子どもすら与えてやれないなんて……」

「メリアージュ様……」

「気力で生むと約束したんだ……俺は諦めない」




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