「おじ様、おじ様、大丈夫?」

そう言われたのはあの日も同じだった。目覚めた時にエミールが加害者の癖にその母親の前で私を心配そうに見ていたのと同じ。

「もう……戻りなさい」

エミールが学校がある。朝になる前に帰さないといけない。

「ちゃんと戻るよ。結婚するまでちゃんと真面目に行動しているように見せるから、安心しておじ様」

もうエミールの中で私と結婚する事は規定路線になってしまっている。私は逃げる事でそれを避けようとしたが、逃げても結局こうなってしまったら私はどうエミールを諭せばいいのだろか。

「おじ様、僕は学校に戻るけど今夜も来るから。逃げても無駄だよ……おじ様には僕の魔力がたっぷり染み込んでいて、どこに逃げたとしてもすぐに分かってしまうから。できれば無駄なことはしないでね……僕、おじ様にこれ以上酷いことはしたくないから、怒らせないでね」

可愛い笑顔を浮かべながら、そう私を脅すエミール。
どうしてこんなことになってしまったのだろうか。結婚などしようとしなければ、今でもエミールは可愛い甥っ子のままでいてくれただろうか。そして成人したら私にプロポーズするのか? 
そしたら私はエミールと結婚しただろうか。いや、やはり断わっただろう。
しかし、エミールがずっと独身で私以外と結婚しないと言い出したら、きっと皆諦め私を説得しただろう。エミールと結婚して子どもを儲けろと。そしたら私は皆がそう言うのならと流されるまま結婚したのかもしれない。

そんな未来はあっただろう。しかし、もし、と言い出しても今は変わり様がない。
私は結婚するつもりだったし、エミールが私の結婚を邪魔するためにはああするしかなかったのだろう。

エミールなりにああするしかなかった。それは理解できる。理解できるのに、愛せない。気持ちを返すことなどできない。

いつの間にか眠っていたのだろう。昨晩エミールのせいでほとんど寝ていなかった。
昼の温かな光が差し込んでいた。
エミールに言われたからではなく、この宿から出ようと思わなかった。どうせ宿を移したとしても、エミールの言うようにきっとどこにいても見つけられてしまうだろう。半年前につけられた痕跡ですら嗅ぎ付けてくるくらいだ。
変に移動してまた逃げたと思われるよりも、ここにいたほうが良いだろう。

そう思って寝起きに何か食べたほうがいいのだろうか、しかし食欲が沸かないと思っているとエミールが転移してくるのが分かった。

「おじ様、ちゃんといてくれたね。良かった」

「ちゃんと学校は行ってきたのか?」

「ちゃんと授業をしてきたよ。ねえ、おじ様この宿に何時までもいるわけにはいかないし、僕おじ様に同じ屋根の下で別の人間と一緒に寝起きして欲しくないんだ。さっき、屋敷を建ててきたからそこに行こう?」

エミールは宣言だけすると、私に抱きつき転移をした。

目の前は鬱蒼とした森で、そこには小奇麗な小さな家が建っていた。周りに人気はない。
探知してみても周囲10キロ以内には誰も住んでいないようだった。

「ここ、うちの領地の1つなんだ。この辺は誰も住んでいないから、おじ様に住んでもらうのにはぴったりだと思って、家を用意したんだ。もっと大きなほうが良かった?」

エミールは私を囲う気だ。

「エミール、叔父さんは旅をやめて王都に戻ろうかと思うんだ。せっかく家を用意してくれたんだけど」

元々この旅はエミールから逃げるためのものだった。エミールに見つかった今、旅を続ける必要もなければ、こんな辺鄙な所で住む必要もない。むしろ、王都の屋敷に戻ったほうがエミールの好き勝手に出来ないはずなので、戻ったほうが都合が良い。

「王都に戻って、僕を避けようと思っているんでしょ? おじ様は旅を続けている振りをして、ずっとここにいるんだよ。安心して。毎日僕が会いにくるから寂しくないよ」

エミールに手を引かれ、家に入らされる。必要な家具ももう揃っていた。

「僕が成人するまでここで一緒に暮らして、成人したら結婚しようね」

「エミール……」

「おじ様の考えていることなんか分かるから。僕にどうやって諦めさせようかとか、諭そうかとか色々考えているんでしょう? でも、おじ様のなにをどうしようと、僕は諦めないからね……このお風呂、素敵でしょ? 家は小さいけど、お風呂は一緒に入ろうと思って大きなのにしたんだ。おじ様、起きたばかりでお風呂も入っていないでしょう? 僕が洗ってあげるよ」

ローブだけ羽織っていた私はすぐにエミールに全裸にさせられた。

魔法で沸かしたばかりの湯を背中からかけられた。

「おじ様、お尻僕が汚したままになっているよね。中まで洗ってあげるから」

「あっ……嫌だっ」

こんな明るい昼間から小さな甥に陰部を弄ばれている。そのことに堪らない羞恥心を感じた。

「僕の出したのがまだたくさん入っていますよ、おじ様……おじ様がまた逃げないように、もっとたくさん僕の魔力を注ぎ込まないと駄目ですよね?」

「エミール、やめてくれ!」

「嫌です」

エミールの小さな身体が、私の後ろから犯す。

「おじ様っ、おじ様っ、大好きなんです……愛しているんです。どうか、僕を受け入れてください」

キスをするために、一度私から離れ、私を前向きにさせると、私の膝を割り再びエミールが入ってきた。入りながら私にエミールはキスをする。

年端も行かない少年に抱かれているなんか。こんな罪を犯している人間なんかこの国できっと私だけだろう。

「おじ様、泣かないで下さい……愛しています」

私を犯した後、エミールは湯船に私を入れ、エミールも入ってきた。

「エミール……お前が成人したら、その時にまだエミールが私と結婚したいんだったら、その時は覚悟を決めるから。こんな幼いうちからこんなことをしていては駄目だ」

「またおじ様、なんとか僕を諭そうとしていますね? 駄目ですよ。だっておじ様逃げようとしましたから。抱かないと、おじ様に逃げられたら見つけれなくなってしまうから駄目です。逃げたおじ様が悪いんですよ。僕もうすぐ13歳になるんです。あと5年で結婚できるようになります。そんなに長い間待たせません」

とにかくエミールに成人するまでの間だけでも何とかこの関係を止めさせようとしたが、何を言っても効果がなかった。余程私が逃げ出した事を根に持っているのか、実家に戻らせる許可も出なかった。
私もエミールに抱かれた身体で家には戻れなかった。ひょんなことでエミールとの関係が露呈してしまうかもしれないからだ。

止めさせようとしてもしても、最後にはエミール自身が自分を盾に脅してくるのだ。
逃げようとしたら、全部暴露をする。暴露したら、きっと僕の人生は終わりだよ、それでもおじ様は良いの?と……

そして私は結局エミールの言いなりになってしまう。後になって思う。私はこれ以外の選択肢はなかったのだろうか、と。



そんな日々が1年少し続いた。エミールは14歳になっていた。

私はエミールの言うがまま、エミールの作った家に住み続けていた。
エミールは昼間は学校へ行き、放課後は私の元に来ていた。ずっとというのは流石に怪しまれるからか、夕ご飯は寮で取り、その後寝る前に私の元へやってきて、朝起きる時間になると戻っていく。

私はエミールを待つだけの生活だった。

エミールは自分で作った花嫁の毒薬を私に飲ませ続け、私はエミールに抱かれる事でその熱を冷ましてもらう、ただエミールの言いなりの生活しか送っていなかった。

「おじ様……ごめんね。昨日は来れなくって。お母様に呼び出されていたんだ。お見合いとか、変な事言っていたから、そんなのするつもりないって断わってきたけど、だって僕のお嫁さんになるのはおじ様だけだから」

エミールは私が大人しくしているせいか、花嫁の毒薬を過剰投与はしていない。1日くらいならなんとか平気だが、それでもエミールに抱かれるとこの熱が無くなるため、たった1日でも来てくれないと精神的にも辛い。

「おじ様、早く皆に僕の花嫁になるのはおじ様だって紹介したいよ」

若い情熱をぶつけられ、私は無言のままエミールに抱かれていた。エミールと結婚するまでこんな日々が続くのかと、半ば覚悟していた頃だった。

突然エミールが私から身体を離した。

「誰だ!」

「エミール?」

「誰かが結界を破って入ってきた」

エミールほどの高位魔力の持ち主の結界を破ることができる人間はそうは存在しない。結界は全力で張っているものではないので、エミールより強いとは限らないが、それでもそこらの人間にできることではない。しかもこんな辺鄙な所に現れることなど、可能性としてないと言っても過言ではないほどだ。
何の目的か分からずエミールは緊張しているようだったし、私も不安で一杯になった。

「エミール……おかしな行動をしていると学校から報告があったので、跡をつけてみれば……何をしているんだ!!!」

「お母様、お父様……」

現れたのは、一番知られたくなかった相手だった。



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