悪人街道 | ナノ

貴也side



由比が自分は最悪だし、そういうことをしてもおかしくない男だけど、と言い訳をしているのを見て可愛くって仕方がなかった。


知っている。由比が無実だって言うのも、でも俺のためにそれくらいしかねないっていうのもね。実際に由比がそうしてくれても良かったんだけど。由比は俺に抱かれるだけで満足していたから、栄をそこまで追い詰める気はなかったんだ。


だから、俺がそうしたんだけどね。


俺の家は一条家の遠縁で、父が死んだ時から一条家の支配を受けることになった。母一人だけでは、金の亡者の親族から俺たち子どもを守る事はできず、一条家に身を預ける事で俺たちを守ったつもりだったのだろう。実際に金銭面では不自由はしなかった。

だが精神面で、一条家に支配されていたのだ。


栄は一条家の一人息子で、俺を見て一目で気に入ったと言って、俺を欲しがった。小学生だった俺は母の懇願で栄の奴隷になった。嫌だといったら、一条家は簡単に俺達を見放すだろう。

栄はそんなつもりじゃなかったのかもしれない。奴隷じゃなくて玩具だ。高級な玩具を見せびらかしたくてたまらなかったのだろう。実際に少しでも俺が栄に反抗的な表情を見せただけで妹たちを甚振って、大怪我をさせたこともあった。だから俺は栄に服従するしかなかったのだ。

実際にライバルの近衛家の息子の由比が俺に恋心を抱いて何度もアタックする様を見て、そんな由比を虜にした俺が栄に逆らえないのを見て愉悦に浸っているの知っていた。
栄は俺に由比を振るように言った。

小学生の俺に拒否ができただろうか。栄よりもずっと頭も容姿も良く素直で純粋な由比に俺は惹かれた。俺に振られても振られても好きだという、ひたむきさに何度栄のせいで答えてやれないのだと言いたかったか。

しかし、学生の俺は母も兄弟も一条家に人質に取られているようなものだ。栄の機嫌を損ねたらどうなるか。まだ何の力もない俺では、家族を守る事も由比を守る事もできなかった。

いや、由比は近衛家の息子なので守るまでもないだろう。心も強い。それにどんなに振っても由比は俺だけが好きだと分かっていた。だから月日がいった。

栄を滅茶苦茶にするために。一条家を潰すために。

それでも由比は待っていてくれると思っていたから。


俺の事を玩具や付属物のように扱っていた栄だったが、高校生になると性にも目覚めてきたのか、由比への当てつけなのか俺に抱いて欲しいと言い出してきた。正直栄を抱くなんて作戦のためでも反吐が出る。

栄を大切にしたいんだなどと、あほらしい言い訳をして抱くことはなかった。作戦のためとはいえ、俺たち家族を隷属させてきたこいつを触れたくもなかった。

栄のお気に入りとして一条家の中枢の情報にもアクセスできた俺は、数々の一条家の不祥事をマスコミに流し、勢力を削いでいった。

風前の灯まで追い詰めてやろうとしていたが、その前に由比の我慢の限界が来てしまったらしい。

由比が栄を誘拐し、それをネタに俺と体だけでも結ばれたい、そんな可愛らしい作戦に出たようだ。由比は自分の事を卑しいと思っているようだが、実際に脅迫しても輪姦までさせようとしないのは甘いと思う。

俺だったら目的を遂げてもなお、脅迫を実行するがな。

ここで、俺にとっても由比にとっても一石二鳥の作戦を取る事にした。できれば由比とは栄を排除してからと思っていたが、すでに由比は限界のようだったし、ここで少し思いを発散させておかないと、絶望して他の男に逃げられても困る。

それに加えて栄を地獄に落とす事ができる。

由比の部下の一味に金を握らせ、栄を輪姦させる。その上で俺が優しく由比を抱いている姿を見せた。

俺と由比が繋がっている姿のまま、ボロボロになった栄を見たときは笑いをこみ上げてくるのを止めるのに苦労した。

そしてその映像をいたるところにばら撒いた。栄にも何度も見せた。目に付くところには置きまくったし、サーバーを乗っ取って一条家の息子の輪姦動画をホームページに掲載してやればもう立場はないだろう。

一条家は一連の不祥事や献金疑惑、証券取引法違反などで逮捕者も出て、もう目も当てられない状態になって行っていた。当然、栄などは放逐され、一族の名を汚したということで一条を名乗る権利さえ奪われた。

精神的におかしくなった栄は精神病院に隔離され、訪れるのは俺だけになった。しかも輪姦された時に妊娠までしてしまったらしい。

栄はどうしたら良いのかと、ボロボロ泣いていたが、どうしたら良いのかじゃないだろう。普通は輪姦された子どもなんか産まないだろう?だけど、俺が父親になるから一緒に育てようと言えば、馬鹿らしく産むと言い出した。

勿論父親になんかなる気なんか更々なかったが。ただ、中絶できない時期になるまで騙せれば良かっただけだ。俺までいなくなって父親の知れないお腹の子どもと途方にくれれば良い。


しかし最後の絶望に何かもっと与えてやれないだろうか。

由比を抱きながら、そんなことを思っていた。由比は相変わらず可愛かった。俺が栄の代わりをさせていると思い込んでいても、喜んで抱かれているのだから。

そんな由比が栄を最後につき落とす、爆弾を持って現れた。俺も想像しなかったが、栄を地獄に突き落とす事ができる最大のアイテムを持って。

最高だ。笑みが止まらなかった。流石俺が愛した由比だ。最後の仕上げまでしてくれるなんて。

由比は俺がどうしてこんなに微笑んでいるか分からないようだった。

栄を酷い目に合わせて、軽蔑しているんだろ?どうせ、俺は最悪な男だと自嘲する由比に、俺が全部やってきたと言ったらどんな顔をするだろうか?


正直に話してあげても良いが、もっと先に言うべきことが有ったから今は止めて置いた。



「由比……俺は、由比のことがずっと好きだったって言ったら驚くかな?」


貴也side end




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