悪人街道 | ナノ




俺は貴也のことがずっと好きだった。それこそ小学生の頃からだ。

だが、貴也は俺の家の敵対する一条グループの1人息子である栄(さかえ)の恋人だった。

どんなに奪いたくても、一条家は俺の家よりも家格が上で勝てなかった。
俺は一条に負けているものはないつもりだった。唯一経済力で若干劣っているが、それも今日までだった。


貴也と初めてあったときには、すでに貴也は一条のもので、俺がどんなに貴也を思っても無駄だった。貴也は一条以外を好きになるつもりはないといわれた。
悔しかった。俺のほうがずっと貴也のことを愛しているし、貴也に何でもしてやれるのに。

貴也の家はそれほど裕福な家庭ではなかった。それは俺や一条の家から見たらで、一般的には充分裕福な上流階級の出だったが、貴也の外見や頭脳やカリスマ性に比べ不釣合いなことは確かだった。しかし俺なら貴也に相応しい身分を用意してやれるのに。

一条家では栄がペットとして貴也を飼っているようなもので、貴也に相応しい扱いをしていない。俺だったら、貴也を自分の伴侶として迎え入れて、いずれは当主の座をあげるのに。それが貴也には似合うのに。


どうして何時までも一条のペットのような扱いで我慢しているのだろうか。栄は貴也を好きなのかもしれないが、一番上等な男を自分だけのものにして自慢しているだけにしか見えない。

あいつには相応しくない。そんな思いが何年も何年もあった。


「ねえ、貴也。どうして俺のものになってくれないの?」

「栄のことを愛しているからだ」


いつもの答え。


「俺のほうがずっと愛しているのに?栄なんか、貴也のことをアクセサリーにしか思っていない!知っている?栄のやつ、この前取引先の社長の息子と婚約したんだって。貴也は捨てられるんだよ?」


一条家が勢力を誇っていられたのは、この前までだ。関連会社で不祥事が次々と発覚し、政治家との金銭問題も発覚し、いまや風前の灯状態。取引先の息子との婚約も、事業を立て直すためのものだったようだが、このままでは何時破棄になってもおかしくない状態だ。


「栄は家のために仕方がなく婚約しただけだ。事業が立て直せば、そんな話はなくなるだろう。余計な気はまわさなくても良い」

「たとえ事業が持ち直しても、栄が貴也と結婚するとでも思っているのか?俺なら違う!貴也のためなら何でもしてあげるのに!」

「地位なんか要らないんだ。俺はただ栄が好きなだけだから」


いつものように素っ気無く俺を拒絶する貴也。でも今日までだ。


「ね、じゃあ、そんなに好きな栄のために何でもできる?」

「……ああ、勿論」

「じゃあ、これな〜んだ」


俺はスマフォの動画を見せる。






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