世界の果てまでイッてHOL!



「ホームズさん。言うのに飽きましたがそれは猫でなく犬の毛ですよ」

 ドイル君が言った。彼は『シャーロック・ホームズ』の出版代理人である。私より五歳下。親愛なるボズウェル君より七歳下である。柔らかな茶髪。生やし始めたばかりの山羊髭。人のよさそうな端整な顔が多少は可愛い。

「は。競馬協会から苦情がくるから適当に書くのはよせ? 面白ければ正しくなくてもいいでしょう。所詮はフィクションなのだ」

 ちょっと新作の表紙を見せただけで顔をしかめた。理解が早い。

「頭でっかちのエセインテリ共はほっとけばいいんです。彼らは情緒的な表現も嘘も許さず、文学はおろか人間とは何であるかさえ理解してない気の毒な連中なのだから――」

 私が書物をパンパンと叩くと、彼は大きくため息をついた。

「文句をいうなら次の連載は前半登場させません。荒野でボッチですよ。いいですね? コカイン描写も指摘が入りましたし、早くやめてください」

 今度はベッドの中で大きく手を広げた。

「相手をしろ? 知りませんよ。私は次の小説を書くのに忙しいんです。貴方に人生狂わされたといっても過言では……」

 私はぐいっと彼の腕を引っ張った。しなやかな動きでベッドに膝をつく。ドイル君は目を丸くして、とっさに拳闘の構えをとった。

 しかし――禁断の場所を掴む私の動作のほうが早かったため、彼の垂れ下がったキュートな眉毛はつり上がった。

 身体を割り込ませながらこめかみの辺りにキスをする。なっ、やめっ、と耳まで真っ赤になって抵抗する姿に股間が熱くなる。首筋にむしゃぶりつきながら抱きしめた。

「やっ。あっ……んっ。死ねっ。もう一回殺す!」

 やわやわと揉みしだくと言葉と裏腹に抱きついてくる。ポロンと外気に晒せばどちらのパイプも、煙を噴き上げんばかりに上を向いていた。

「あっ……ああっ。あああっ」

 時代錯誤の愛用品をパクリとくわえる。誰がまっすぐなパイプしかこの時代にはないと言ったのだ? この丸くて太くて硬くて熱くて膨張しきっているパイプは最高だ。

「やっ、いいっ……いい! ああんっ」

 あますところなく見ることのできる拡大鏡と合わせて、私の名前とセットで象徴になるのもいい。そうなればいつもくわえられるというものだ。

 ベッドに横たわったドイル君は私の頭を太股で挟みながら悶えだした。ふるふると小刻みに揺れる顔から火が出そうだ。

「や……やめろ! あ、も、離して。だめ。出……!」

 ガチムチの代名詞がその一瞬だけ顔を歪ませ、可憐な乙女も同義の恍惚とした表情を浮かべ


※放送休止のお知らせ

放送倫理委員会に寄せられた苦情により来週は番組を差し替えさせていただきます。尚、当番組内で使用された食べ物はすべてスタッフがおいしく頂きました。あしからずご了承ください。



♪ズンチャッ

ズンチャッ


♪ending musicと共に来週放送を予定していた一部をご紹介しながらのお別れです。サヨナラ サヨナラ サヨナラ!


「ドクター・ワトソン、わかりきったことをなぜ何度も繰り返すのか、なんてそれこそわかりきったことですよ。貴方が主役じゃないからです。まがりなりにも医者だから発砲するのは意思に反する? なに笑えないジョークぬかしてるんですか。キャラ崩壊するからやめてください。貴方は単なる引き立て役。っていうか僕はロマンスが書きたいんですよね。このヒロインと結婚してくれませんか。……やだ? わかりました探偵助手変えます。名前を間違える嫁があるか? 愛称愛称。あっ……いっ。やめっ……肩も足も負傷したことにするぞ! 頻繁に名前や日付忘れさせて恥かかせてやるぞ! ああん……いやっ。最近読者が、し、出版代理人とか、き、共同作者とかいってくるからホントやめて。実は仲良しなのバレちゃったら社会的に殺されちゃうからやめ……っ!」


 【提供】

 禿頭連盟
 ブック京極堂

※この番組は ご覧の提供で お送りしました。






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