WA!TOSON


※ワットソン
ワワワ(ため)
ワトソン〜♪

初歩的に処方的! これがあれば治る!(台詞)

ワトソン〜♪
ワトソン〜♪
ワットソン〜♪♪♪



 常軌を逸しているとワトスンは目を閉じた。

 一度目は仕方ない。二度目はない。家を出てからは一時間経つのだが、悩みに暮れて悶々と過ごしてきた間に、相棒は床で身悶えしたながら腰を振っている。

「ああ。いいところにワトスン」ホームズははぁはぁと息を切らせて片手を上げた。「ちょっと待ってくれ。今とても忙しいのだ」

「そうらしいな」ワトスンは踵を返した。

「帰るのか? よく来てくれた。また今度」ホームズは激しく動きながらいった。「ところで、ポケットに入っているブラッドリーズで購入した煙草は置いてってくれるだろう。もちろん」

「……言いたいことは、それだけか」

「いや、他にもある。きみの愛しの奥さんが手を出している、慈善事業についての問題だがね。私が引き受けてもいい」息を切らして一瞬うっ。といって力を抜いた。「もちろん金はいらない――」

「なぜわかった」ワトソンはいいさして片手をふった。「いや、聞きたくない。煙草は嗅覚、メアリーについては私の様子。懐がさみしい事実は、私の傷病年金が今年から半額に……」

「今朝がた奥さんから手紙が届いた」ホームズは床から体を起こした。「神誓ってそれだけが理由だ。君のプライバシーにこれ以上立ち寄る気はない。切羽つまって身投げでもされたら、私の目覚めも悪いしね。これは奥さんではなく、君の話だが」

 用事の済んだホームズは淡々といって、水桶まで颯爽と歩いた。その様子がワトスンの目にはいっそう気味悪く映った。

「ホームズ――」

「新作を読んだよ」手を洗いながら答えた。「あれはよかった。だが私が褒めただなんて一言も書くな。ポーの二の舞になる」

 ワトスンは取っ手から指を離し、興味をひかれて顎をしゃくった。

「君の大好きな探偵デュパンはいくつかやらかしてしまった。そのひとつが語り手だ。お互いべったりしすぎて気持ちが悪いほどだ。君と違って勘が鋭すぎるのもいけない」

「どういう意味だ」自分の鈍感さを非難されている気がして、ワトスンは気色ばんだ。

 ホームズは指を丁寧に拭きながらいった。君が作り上げた人物がなかなか面白かったと言っているのだ、と。

「売るにはとても時間がかかっただろう。市場には頭の硬い連中のための馬鹿高い本が揃ってるが、今後は君の模倣にはしるぞ。それでも君の半分もうまくやれないに違いない」

「君が今あからさまに指摘したように、あれはポーの模倣だ」ワトスンは憮然とした。「それに一作目は買い叩かれた。知ってるだろう」

「だから待てと言ったのだよ。架空の偉人が君の中に確実にできあがるまでは、ただの開業医に甘んじていろと。まあ今後は分厚く退屈なばかりの娯楽本のなかで、聖書より大勢に読んでもらえるように今後もせいぜい頑張りたまえ」

「ホームズ」ワトソンは指をさした。「犬が喘いでる。脇から離してくれ」

 ホームズは先ほどまで腹の上にのせていた犬を見た。脚で蹴ったり投げたり抱えたり、運動とは名ばかりの動物虐待に励むうちに、犬のほうは涎を垂らしていたのだ。

 ワトスンは見ていられなかった。そしてブルドッグの子犬については二度と著作では触れないことを心に誓った。あまりに不憫すぎる。

「かわいい私のワンコちゃん」ホームズは歌い上げるように言って、両手で犬を持ち上げた。「ワトスン君。私と犬の聖なるアバンチュールをよくも邪魔してくれたね」

「犬のほうは迷惑だといい加減気づけ。君の片想いだ」

「よし」ホームズは犬の頭をグリグリとやった。

「事件の話を聞こう。座りたまえ――ああ、長椅子は処分したのだった。スペースがないからね。君を支点とした東経三十度北緯四十五度あたりに、おそらく椅子が」

 ワトスンはため息を吐いて、目の前の書類の山を蹴った。巻き上げた埃でようやく犬が目覚め、激しく鳴いてホームズの脇から逃げる。

 当然、書類のほうはすべて崩れた。

「ワトスン」ホームズは眉尻をさげた。「あまり乱暴はするな。犬の代わりはゴマンといるが、君が今落とした犯罪文献の値段は家が経つほどなのだ」


※ワットソン
ワワワ(ため)
ワトソン〜♪

初歩的に処方的! これがあれば治る!(台詞)

ワトソン〜♪
ワトソン〜♪
ワットソン〜♪♪♪



(……映画に音合わすとCM音声がひどいな)






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