なたはどうなんです


河川敷で独り、黄昏ていた。
目の前に広がる小川。
夕陽に照らされてオレンジ色の輝きを放っている

空を見上げるとだんだん周りは紫色になってきていて、もう暗くなり始めているのを表していた。
グラデーション掛かった神秘的な空に俺は見とれてしまっていた、刻一刻と過ぎていく時間を忘れて。

気がついた時にはもう夕陽は半分沈んでいた
(俺もそろそろ帰らないと)

ゆっくり立ち上がってズボンに付いた砂を払う。
鞄を持って身を翻す

「ぅひゃ…!」
「あはは、何つー間抜けな声出してんだ」
至近距離に、大好きな先輩。
久しぶりに聞く声に、色んな箇所が震える
「っ…何で、」
「んー?たまたま」
「たまたま…って…」
積もっていた淋しさが涙となって溢れていく
「?どうした、そんなに俺に会い」
「会いたかったです!!喋りたかったです…!!」
ぼろぼろ流れ落ちる感情。
「そう、」
「すれ違うことすらなくって、もう俺っ…」
一緒に居たかった、という力もこめて
目の前の先輩に縋りつく。
普通なら異性に働くこの気持ちは俺にはどうしようもできなくてただ自分を苦しめるだけで

「ねぇ先輩…」
「ん」
「俺はこの数週間、苦しかった、辛かったです」
「…」
「貴方は俺と同じように辛かったんですか」
黙って先輩の言葉を待つ。
待ってる間の時間はとても永かった

すっと先輩の動く気配。
きっと顔を俺の耳元に近づけたのだろう、
先輩の息を吸って吐く行為が感じ取れる

「お前と同じにするな」
少し、いやかなり期待していたのもあって俺は壊れそうになる。
(やべ…また泣きそ)
しかし
「お前以上に辛かったよ」
続けられたのは正しく俺が求めていた答え。
期待以上だ
先輩の優しさに、温かさに俺は静かに泣いた。

「帰るか」
「…」
黙りこんだ俺にため息をつく先輩。
「ほら、泣くなって」
視界が先輩でいっぱいになった次の瞬間唇にさっきと同じような優しさと温もり。
「行くぞ、もう暗いから」
ぽかんとしている俺の手をぐんっと引っ張る先輩。

「はい」
紫色に染まっていた空はもう真っ黒だった。








南倉久しぶり…何日ぶりだろうか
ちょっと切なくなってもた

夕方ってセンチメンタルな気分になりますよね
近くに河川敷(土手)ほしい

南倉10作品目でした。


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