魅惑のWD





「せーんせっv」

 今日はホワイトデー。

 バレンタインでの失態を挽回すべく、この日のナルトは意気込んでいた。

「んー?今度はなぁに?ナールト」

 至極上機嫌な甘い声音でカカシは返事を返してよこす。カカシの上機嫌の原因は勿論ナルトの行動の所為だ。
 昨晩からやたらナルトはカカシに対して甘い行動をしてくる。
 時には誘惑するような素振りを見せたりするものだから、ナルトを愛して止まないカカシにとっては堪なかった。
 昨晩の情事中も、ナルトはとてもとても積極的&とても淫らで可愛らしい姿を晒し、カカシを酷く誘惑し惑わせた。
 今朝もカカシより先に目を覚ましていたナルトは、普段自分がされている事をカカシにしていた。
 カカシが目を覚ますと、柔らかく微笑んだナルトは、カカシが面食らう程に突然熱烈なキスを朝っぱらから仕掛ける。
 その所為でカカシは微睡む暇も与えられず、一気に意識を覚醒させた。
 ナルトからの一方的だった口付けを、淫らで甘い口付けに変えてふたりでお互いを貪りあう。
 飲み下せなくなった唾液が顎を濡らすのも厭わずに、ふたりは唇を離さず角度を変えては深く重ね合わせ、舌を卑猥に絡ませてはお互いを探り合った。
 自然と身体を密着させ、髪やうなじを弄り合いながらの口付けになる。
 唇を離しても、絡めあった舌同士を、粘ついた唾液の糸が紡がれていた。重力に寄って透明な糸が途切れるのをふたりで見守りながら呼吸を整え始める。

「どうしちゃったの?朝からこんな激しいキスしてくるなんて。珍しいじゃない?何かあったのか?」

 訳もなくナルトがカカシを激しく求めてくるなんて事が今までなかったから、カカシは素直に疑問を口にした。するとナルトは緩く頭を振る。

「…夢ン中でせんせぇに逢えなかったから、寂しかっただけだってばよ?」

 カカシの心臓の上辺りに額をことりとあてたナルトが、そんな可愛らしい事を呟いた。その言葉を受けてカカシは感涙する。
 愛らしい恋人を腕の中に閉じこめて、ぎゅっときつく抱き締めた。

「そんな可愛いこと云われたら、俺止まんなくなっちゃうけど……イイ?」

 そう耳元に囁いて。

 ベットに押し倒し、ナルトを組敷きながら、カカシは己を見上げる青い眸をしっとりと見つめた。
 熱情を含ませたオッドアイを、ナルトは誘惑の色を濃くした青い眸で挑むように見つめ返す。

「もちろん。望むトコだってばよ?せんせぇがオレの傍にいるってーのを感じさせて……っ」

 語尾はカカシからの激しい口付けによりかき消されてしまった。
 こうしてカカシには思いがけず濃蜜な朝になり、蜂蜜みたいな一日の幕開けとなった。

 そして。現在午後3時。

 甘い声で恋人の名を呼んだナルトは、上機嫌な恋人の隣に腰を下ろした。
 自分を見下ろす優しい眼差しのオッドアイを、愛おしげに見つめ返す。

「あんね…ちょっと目ぇ瞑ってくんねぇ?」
「なぁに…突然…変なコトでもすんじゃないだろうねぇ〜?」
「変なコトはしねーってばよ…いいから!!目瞑ってってば!!」
「あーはいはい。わかったから…耳元で騒がないでよ…」

 少々警戒しつつも、カカシは大人しくナルトに従って瞼をおろした。
 カカシが目をきちんと瞑ったかを覗き見て確認してから、ナルトは隠し持っていた小さな包みを開けた。

「せんせ。少し口開けてってば」

 はいはいと云いながら、カカシはナルトに望まれた通りに口を開ける。
 それを確認するとナルトは手の中のものを唇で咥えて、カカシに近づいていく。
 そして薄く開いた口に咥えていたものを押し込んだ。ついでに口付けもしてゆく。
 カカシは口の中に入り込んできたものに驚いて、しばし硬直してしまった。そうする間にも口の中のものが忽ち溶けだした。
 カカシの口の中ですぐに蕩けるこの甘さと独特な風味を感じて、カカシは口の中に広がる苦手な甘さに思わず呻いてしまう。

「あっまぁ…すぎる…よ…コレ…」

 苦渋の表情を浮かべるカカシに、ナルトは楽しげに笑った。

「そりゃそうだろ?ホワイトチョコだもん♪それ」

 も一個食う?とナルトはチョコをカカシに見せた。
 するとカカシが必死に首を横に振る。それにまたナルトが声を立てて笑う。

「俺が甘いの苦手って知ってるでしょ?ここにきて嫌がらせしたいのか?」

 甘い時間に水を差された気分のカカシは、眉を顰め少し恨めしげな視線をナルトに向けた。
 ナルトは心外だと云わんばかりに、頭を横に振る。

「違うってばよ。そのホワイトチョコはバレンタインのお返しだってばよ?」
「それは嬉しいけど、なにも一番甘いホワイトチョコをくれなくてもいいじゃない…」
「だって…だってさ!!本命相手にはホワイトチョコを返すってのがホワイトデーのルールなんだろ?」
「はっ?誰に訊いたのそれ」
「サクラちゃんだけど?なにもしかして間違ってるってば?」
「いや…サクラが云うのなら間違いじゃないだろうね…。そっか。それじゃあ、ナルトの本命は俺ってコトなんだ?」

 さっきまでの苦い顔は何処へやら。

 カカシは相好をすっかりと崩して、ナルトを抱き寄せた。

「当たり前じゃんか!!…オレってば、すっげぇ愛してん…なんだからな…せんせぇ‥のコト‥」
「うん。すっごく嬉しい。俺もナルトが大本命だからね。‥めちゃくちゃ愛してるよ」
「もう‥それは知ってるってばよ‥…///」

 すごーく愛されてっからな。けどもっと愛して?

 そう云ってナルトはカカシの唇にちゅっとキスをした。
 不意打ちの愛の言葉とキスに、カカシは不覚にも顔を赤らめてしまう。
 どうにも昨晩からナルトにやられっぱなしな気がしなくもないなと思ったカカシは、今晩はいつも以上にたくさんナルトを可愛がって、散々啼かせて愛しまくろうと心の中でリベンジを誓うのだった。





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