主催企画提出作品
ジャンルキ
温い性描写有
















自分のことは自分が一番知っているなんて、傲慢にも似た言葉だ。
そういう風に思っていたとしても所詮は思い込みでしかなく、生きていればその先には見たこともなかった自分の性質を嫌でも理解する状況に陥る時は必ずしも存在する。
だから、俺だって知らなかったさ。俺が意外と人に執着するタイプだったってことも、その執着した相手の全てを奪ってしまいたいと思うほど我儘な独占欲に溺れたくなるような人間だったことも。
あんたが初めてなんだぜ。こんな感情を持つのは。真面目な顔で、真面目な声で告げたものを、あんたはいつも鼻で笑って流すから。
勝気な眸で俺を見つめるから。絶対に俺のところに堕ちたりしないと言ってくるから、だからあんたを屈服させたいって支配欲が生まれる自分に最初は驚いた。そのことに後悔なんてないけれど。


「はぁ…っつっ!」
「ルキーノ、頑張って声抑えてくれな?あんま大きな声出すとベルナルド達のいる部屋にまで聞こえちまうよん?」

男二人で入るには狭っ苦しい本部のトイレの個室で、俺はルキーノの下を全部脱がせ払って蓋を下ろした便座の上に足を広げさせて奴の後ろの穴に指を二本埋め込ませていた。奥を抉るように突いたり、指を曲げて広げるように中を掻き回したりすれば、慣らされた体は悲鳴を上げるように震え、ルキーノの全身が赤く色づく。
普段は背が高い為に見上げることしかできないルキーノの顔が、トイレに座らせている今の状態では立っている俺へ向ける視線も見上げるものとなっていた。男の上目遣いなんて気持ち悪い以外の何者でもないと思ってたんだけど、恋は盲目っつー奴なのかねぇ、ルキーノの薄い涙で網膜を覆われたローズピンクの眸で見上げられると結構腰にクるもんがある。でもそんな眸してても俺を睨むことは忘れない。そんな顔で睨んでみせたって効果はないっていい加減気づけばいいのに。
そんな風に反抗的になりながらも俺の言われた通りに手を自分の口に当てて頑張って声を抑えているんだから、普段の伊達男っぷりからは考えられないような健気な様子に口角が上がるのを抑えられなかった。
こんな関係を続けて回数を重ねてはいるが、実は俺達は恋人同士でも何でもない。
俺はCR:5二代目ボスを襲名して数ヶ月が経ったばかり。それ以前は末席幹部としてルキーノの後をついて仕事を回る日々を送っていた。
ルキーノと俺の仲は至って良好。いいコンビだと思っていた。俺はルキーノには好意を持っていたから余計に。今だってそうだ。ルキーノも俺のことは気に入ってくれてたみたいで色々と気にかけてくれた。
でも、互いの感情は必ずしも同じものじゃない。俺がルキーノに対して持っている、世間一般から見れば"歪な感情"を、ルキーノは持っていなかった。俺とルキーノの気持ちは違うということは予想できることではあったけど、俺にとっては悔しくて、寂しいものだった。凄く、悲しいものだった。
どうすればルキーノは俺のモノになるんだろうか。どうすれば俺の方を見てくれる?考えたって答えは出ない。本人に聞いてみたって、きっと答えてはくれないだろうと知っている。だから。


俺は尤も最低な方法でルキーノを縛り付けることにした。


マフィア組織でオメルタの掟は絶対だ。余程理不尽な要求でない限りそれを拒否することはできない。
まぁ、ある意味これは理不尽な要求なのかもしれない。ボスとなった俺がオメルタの下、ルキーノへ命じた事。それは俺の要求を拒否せず、俺が望んだら素直に抱かれろというものだった。
勿論、ボスの要求だからといって女好きでホモでもないルキーノが言われた通り素直に俺の要求を飲むはずがない。だが、いつまで経っても笑って「冗談だよ」と言ってこない俺を見て、ルキーノは俺が冗談を言っているわけではないことを理解したようだった。そしてそれと同時に、今まで上手く行っていた俺達の仲は終わりを告げ、代わりに不安定で歪な関係が始まったんだ。

俺はそれからルキーノをところ構わず抱いた。夜呼びつけてベットで抱くこともあったし、ルキーノの家に乗り込んで抱くこともあった。外回りの途中に人気のない路地裏に入ってバックで犯したこともあったし、ルキーノが仕事の電話をしてるっつーのに俺とルキーノ以外部屋に誰もいないのをいいことに性的な悪戯をしたこともある。それらをやる度にルキーノは射殺さんばかりの勢いで鋭く睨みつけてきたりしたわけだが、俺が命令したら逆らえない。それがたまらなく俺の気分を高揚させると共に、俺の中の虚無感を肥大させていく。
んで、今は幹部会の真っ最中。俺はソファに腰かけて片肘ついて他の幹部達の報告内容にぼんやり耳を傾けているルキーノを見ていたら何かムラムラきて内心落ち着かなくなってたら長々続いた話合いに生き抜きしようっつーことで休憩時間に入ったのをいいことにルキーノを引っ張って、他の幹部達がまだ残っている部屋から少し離れたトイレに連れ込んで今に至る、と。


「ほらほら、どうっすか?どうっすか?奥ぐりぐりされると気持ち良い〜?」
「んんっ…!んん――…っ!!」

弱い部分を集中的に指で強く押し込むとルキーノの悲鳴が口元を抑えてある自らの手の中に吸い込まれていく。ルキーノのご立派な息子さんも喜んでだらだらはしたない液を流しているから、ルキーノが俺の言葉に何も答えなくても今ルキーノの中がどんな状態か嫌でもわかった。

本当はわかってる。わかってるんだぜ。

こんなことをしてルキーノの体は好きにできても心まで手に入らないって。入らないどころか俺の元から離れるばかりだ。
でも、あんたが俺をこんなにしたんだ。あんたが俺を構うから、あんたのことを好きになんてさせるから、こんなに好きな気持ちにあんたが気づかないから、気づいても、受け入れてくれなかったから、それでも諦めることなんてできないから、どんな形でもあんたを手に入れたいって思っちまったんだ。理不尽だってわかってる。あんたは何も悪くない。あんたはただの被害者なんだ。でも、それでも絶対に謝らない。謝ってこの関係を終わらせることも今の俺にはとても怖い。何よりも怖いことだった。

本当に知らなかったよ。俺にこんな感情があるなんて。貪欲で卑しく汚れた感情。どんなに触れても触れても収まらないこの情欲が、俺の中にも存在していたんだってことを。

あんたに会って気づいて、そしてこんなことは駄目だと頭でわかっていても止められない。

仕方ないんだ。みっともなくらいあんたのことが好きで、こんな歳になって、気持ち悪いくらいあんたに恋しちまってるんだからな。

だから、許さなくていいから。


「ルキーノ、俺から逃げるなよ?」

熱で浮かされた赤みの差した頬を撫でながら、俺は震える声で告げた。
ルキーノがそれに気づいたかはわからないけれど、俺の言葉を聞いた時、ローズピンクの眸が僅かに揺れた気がした。














2010/11/30


題名に合ってるのかわかりませんが、ジャン→ルキーノみたいな。badルートジャンなら結構鬼畜なこともやってみせるかなーと思って書きました。片思い関係も美味しいです!ジャンルキ!!
ルキジャンで書こうと思ってたのに結局ジャンルキにしてしまいました。ダークな話好きなので書いてて楽しかったです。









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