「あー」


かすれたがらがら声が部屋に響く。久しぶりに、声を発した気がする。ほこりをかぶったカーテンを開ける。まぶしい。あたしはその光に耐えきれなくなって、またカーテンを閉じた。


だめ、無理だよ。あたしは引きこもりから抜け出せないんだ。あたしはまた暗い部屋のベッドにもぐりこんだ。重たくないまぶたを無理に閉じる。こうして今日もなにもせずに過ごすんだ。


コンコンコン


さっきカーテンを開けた窓が叩かれる。もう、誰?まぁ久しぶりに人と会話するのもいいかもしれない。あたしは恐る恐る窓を開けた。


「椿?」
「……げ、元気か?」
「うん、まあ…」


椿はチョロチョロと目を泳がせる。まあしょうがないよ。久しぶりだし、引きこもりのクラスメイトだし。


「で、なに?」
「……単刀直入に聞くが、なぜ学校に来ない?」
「…デリカシーないのね」
「んなっ…!?」


フフフとあたしは小さく笑った。あー、久しぶりに笑ったなぁ。


「んー、めんどくさいから」
「めんどくさいって…」


椿はあきれたようにため息をつくとあたしの腕をつかんだ。ちょ、痛い痛い!


「学校に来い」
「………いや」
「なぜだ」


いやなものはいや。今さら学校に行ってなんなの?しかも高校は義務教育じゃないし。あたしが学校行ってなにになるんだ。


「…ぼ、僕は君に来てほしい」
「は?なんで?」


椿はあたしの腕をつかむ力をいっそう強くして、赤い顔をあたしに向けた。


「き、君が好きだからに決まってるだろう!」


もう、そんなこと言われたら行かざるを得ないでしょ。バカ椿!



100810



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