ああ、むさ苦しい。周りを見れば、男、男、男……。あれ?女ってあたしだけじゃね?


「リザさんは?」
「帰ったよ」


隣のハボックに話しかければたばこをくわえながらそう言う。ふぅん、リザさん、仕事終わらすの早いもんなぁ。でも、あれ?じゃあ大佐のめんどうは誰が見るんですか?まさかと思って大佐のほうを振り向くと、あぁやっぱり、仕事をほっぽらかして机に突っ伏してる。


「大佐!さぼらないでくださいよ」
「…あぁ、コーヒーを持ってきてくれないか」


コーヒー?そんなのお手のもんだ!あたしはやっとこのむさ苦しい部屋から抜け出すと意気揚々と給湯室へかけた。


「えーと、コーヒー?」


ええ?ないんですけど。いつもならあるはずの場所にコーヒーがない。あぁどうしよう、緊急事態だ!代わりのものを持ってくか?いや、それはそれで負けた気がする。


「あ、おい中佐!」
「ん?」


振り向くとコーヒー豆のビンを持った大佐が立っていた。はぁ?コーヒーあるんじゃん。


「すまん、コーヒーあった」
「……チッ」
「舌打ち!?」


くそう、手間かけさせやがって!まぁ、あのむさ苦しい部屋から出られたのはよかったけど。


「なまえ、」


ん?今なまえで呼んだ?


「今、誰もいない」


そう言うと大佐は顔を近づけてきて、ちゅっと音をたててキスをした。ななななんですかっ!?顔を離すと今度はあたしを抱き締めた。なに、なんなの!?大佐、今日おかしいよ。


「好きだなまえ」


み、耳元でささやくなぁぁあ!バカ!バカ大佐!あたしの顔は熟れたトマトみたいに赤くなって、また大佐がおでこにちゅーなんてするからもう胸が苦しくて呼吸困難になりそうだ。


「た、たた、たい、さ」
「なんだね?」


ああ、なんでそんなに平然としていられるんだ。なにその大人の余裕?あたしはようやくのどから声を絞りだした。


「あたし、も、好き、です」


ああ、だめだめ!うるさいよ心臓!大佐に抱き締められてるままだから、この心臓の音が大佐に聞こえてるんじゃないだろうかと心配になる。


「愛してる、なまえ」


バーカ!大佐のバーカ!もう大佐のせいであたしの心臓は爆発寸前。あたしが死んだら大佐も道連れなんだからね!


「バカ大佐っ」
「なまえで呼びたまえよ」



100812