「あたし、引っ越すの」 夜空を見上げながら、できるだけ明るい声でそう言った。隣にいる銀ちゃんは、ふうん、と一言呟いて、ごろりと芝生に寝そべった。ああ、あたしは銀ちゃんにとってこの程度の存在なんだ。目尻にたまった涙をこぼさないようにまた上を見上げた。 「帰ろう」 気がついたら銀ちゃんが隣に立っていて、あたしの腕を引いて歩き出した。 「いつ、行くんだ?」 銀ちゃんはあたしの腕を離し、前を向いたまま口を開いた。あたしはスタスタと前を歩く銀ちゃんを小走りに追いかける。 「……明日、だけど」 銀ちゃんはまた、ふうん、と返事をすると、あたしの指に自分の指をからませて手をつないだ。ああ、あったかい。また、涙があふれそうになって、こぼれないように奥歯をかみしめる。 「なあ、なまえ」 「うん?」 「愛してるよ」 ああ、もうだめ。プツリと線が切れたように、涙があふれだす。拭いても拭いても涙は止まらない。そんなあたしを銀ちゃんがふわりと抱きしめたら、あたしのあげた香水のあまったるいにおいが鼻をくすぐった。 「好きだよ」 「うん」 「大好きだよ、銀ちゃん…」 「うん、俺もだよ」 目のはしに、きらりと流れ星が光って消えた。 きらきら星に あまいキスを 100926 |