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「みょうじはー…」

なんで西浦に入ったの?

舌の上でころりころり、あまったるい葡萄味をころがしながら浜田くんが首をかしげました。
なぜあまったるいかどうかがわかるのかというと、それはわたしの舌の上にもおなじものが転がっているからで、ちなみにわたしの感覚ではこのあまったるさは少々厳しいものがあるのだけれど、まあせっかく水谷くんが浜田くんづてにくれたものなので、というなんとも理性的な理由で、結果この飴は吐き出されることなく無事にわたしの口の中をころがっているわけです。
さてなぜわたしが西浦に入ったのかと言うとそれはやっぱり、

「当時のノリとテンションかな」
「そんなもんか」

しかし、なぜ唐突にそんなことを。机の中から教科書を引っ張り出しながら、浜田くんの横顔を見る。その髪は、まるで大型犬みたいな豪快な毛並みをしている。

「なんで?」
「え?なにが?」
「なんで急にそんなこと聞いたのかなあって」

ああ、それはねえ、と浜田くんがノートを取り出す。次は数学です。田島くんはまた寝るのかしらと思いつつ口のなかでころころしている葡萄を噛み潰しました。がりりといやな音がして、噛むなよーと浜田くんが不満げに教科書を取り出します。浜田くんは飴は噛まない派なのかしら。わたしもふだんはそうだけど、だってこの葡萄味やけにあまったるいんだもの。がりがり。ざりざり。噛み砕くボリュームが小さくなっていく。そんなことよりねえなんで。そんなに気になる話でもないけれど、せかすようにペンを回すと、浜田くんはわざとらしいためいきをつきました。

「べーつにい」
「うわー浜田くん言い逃げだ」
「逃げるが勝ちって言うもんよ」

いじわるだなあと肩をすくめると、浜田くんがわるかったなと机につっぷしました。どうも言う気をそいでしまったらしい。うーん失敗。どうしたものかな。

「浜田くーん」
「…………いや、さあ」

浜田くんがそうっと身を起こす。どうやら結局言うつもりらしい。

だってほら、いつも世話んなってるし?応援団も手伝ってもらってるし?うーん、だから…えー…うまく言えねーけど…みょうじが西浦に入ってきてくれてよかったなー…と…思って…なんで西浦選んだのかなーって…

大きな手が金色の髪をかきあげる。浜田くんて意外と髪質かたいんだよね。その髪のすきまから見える耳があかいから、なんだかこっちまでちょっと照れてしまう。あらまあしあわせだこと。

「浜田くん、そんなにわたしが好きかい」
「もー好きめちゃくちゃ好き」

舌の上の飴は、いつのまにやらすっかりなくなっておりましたとさ。そんな昼休みでしたスタジオの泉くんお返しします。



六月十日
(おまえらまじうぜー)





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