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シスター服を纏っているにも関わらず、どこか背徳的な匂いさえ漂わせる彼女を、わたしはかみさまのような女性だと、思っていた(そして事実、彼女はちゃんとかみさまだった)。その双眸から柔らかく放たれる光に目を焼かれるような気がするのは、わたしが綺麗な人間でないからだろうか。しなやかな体躯に馴染む黒。

「なまえちゃん」
「……、…」

はい、といつものように返事をしかけて、きゅっとくちびるをむすんだ。そんなわたしを見て、八重さんが困ったように眉を下げる。その目に宿る、ゆらゆら、ちゃぷちゃぷ、騒ぐ波の中で揺らがない灯台のような光。

「しかたのない子」

窓の外から差し込む昼下がりの陽光が、そっと気遣うように彼女の髪に溶ける。その色を認識して、はじめて、わたしは自分が泣きそうになっていることに気付いた。わたしの髪に触れている細い指が八重さんのものであることにも、瞬間、やっと気付く。

「……八重、さん」
「ん?」

優しい指先がわたしの頬をなぜる。泣き出しそうなわたしの目尻に指をおき、八重さんはこどもをあやすようにわたしの顔を覗き込んだ。まるで痛みのない、ひたすらの静けさの世界。穏やかな焦燥が、ちりりと胸を焼く。わたしは、とうとう、熱くなる頬に手を置いた。

「八重さん、」
「うん」
「八重、さん」

うん。八重さんはただわたしの目を見て頷くだけだったけれど、わたしにはそれでじゅうぶんだった。確固たる安堵が胸の奥へコトリと落ちる。ステンドグラスを通してわたしに注いでくる光にくらくらした。

「大丈夫よ」

あなたはわたしが守ってあげるから。額にふれる柔らかい熱。わたしは綺麗な人間などではないが、確かに神に愛された娘であった。頭をだきよせられて、よしよしと背中を撫でられて、それからやっと、わたしは泣いた。

わたくしの目が焼かれる日









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