恋をした。きゅうきゅうと締め付けてくる胸の内の切なさを知った。だからどうかと切に願う我が儘は。抑えきれずに溢れ出した俺の思いと涙を止めたいなら、俺のそばで生きてよ。


敵だった関係のお互いが許し合って友達になるのは漫画でもお約束の展開だ。サッカーを捨てろ。そうバダップは言ってきた。サッカーは未来の人間を弱体化させた。全てはお前のせいだ。未来を弱くさせたのがサッカーとどういった関係になってくるのか俺にはさっぱりだった。だから言ってやったんだ。強くなければ意味がない。そう叫ぶバダップに強さっていうのはその人の心じゃあないのかって。力っていうのは例えば力こぶができるかできないかじゃなくて、絶対できるって信じること何じゃないのかなって俺は思ってる。多分意味が分からないっていう人の方が多いと思うんだ。俺だってよく分からないもん。ただバダップにはそれだけじゃない考えを伝えたかった。俺が押さえた胸と同じところを自分の胸をトントンとまるで何かを確認するみたいに軽く叩いたバダップに、分かってくれたとほっとした。それと同時にあの時は分からなかったけど、俺はきっとバダップに恋をしてしまった。消えてしまったバダップを考えて胸に穴が空いたようにひゅうっと北風が吹いた気がした。お腹すいてるのかな、なんて馬鹿なことを考えてたのも最初のうちだった。寂しいのかな、悲しいのかな、自分は一体どんな感情で今いるんだろう。ぐるぐるとお腹の底から締め付けてくるような、回っているような妙な感覚。経験したこともなかった。でもそれもその内解決した。風丸に聞いてみたんだ。これって病気かな。その時の俺はよっぽど泣きそうな顔をしていたらしい。泣くなよと言いながら俺の頭を撫でてくれた風丸のほうが何故だかもっと泣きそうな顔をして。それは、こいだよ円堂。言われたとき強い違和感を感じずにはいられなかった。敵だったバダップは今は友達なんじゃないのかな。だって漫画には主人公はその人に恋をしてしまったのですなんて、描かれてなかったもの。友達は恋人じやないよ風丸。そう言うと風丸はそうだなと突然ぶれはじめた俺の目をそっと押さえた。俺は泣いていたらしい。急に苦しくなって息がし辛くなって、会いたくなってバダップ、と彼の顔を思い浮かべて小さく呼んだ。円堂と俺の名前を呼んだ風丸の声も震えていた。


鮮烈に胸に刻まれたままの思いは切ない、だ。二度と会えないだろうなと思えば嫌だ嫌だと心が叫ぶんだ。ぎしぎしと古くなったドアが軋んでなかなか開かない。バダップはきっとこのドアをノックしたんだ。ドアの中にいるのは俺の心臓で。でもバダップはいない。抱きしめてほしいと軋み続ける心臓はきっと報われない。外からこじ開けてくれる人がいないから。二度と会えないところへいったまま。会いたいよ泣きたいよそばにいてよ。我が儘を思いつく限りめちゃくちゃに喚いた。会わなければよかったのに。何故バダップでなくちゃいけないんだろう。こんなに好きになってしまったのに、俺は今日を、今をお前がいない時を生きてます。


そして十年たって円堂さんを迎えにくる…!そんなバダ円どこかに落ちてませんか。バダ→←円←風なのにバダップが出てこない。

阿部真央♪「いつの日も」