君の全部
不思議な夢を見た。俺の目の前には制服を着たすずちゃんがいて、思わず手を伸ばすんだ。すずちゃんは俺の手を受け入れてくれて、頬に触れるとそっと目を瞑る。今のすずちゃんより少しふっくらとした頬の感触はしっかり感じることができて、体温もいつもと同じ。首を傾げながらも俺はすずちゃんにキスをした。「……あなたは誰ですか?」
すずちゃんは不審がる様子もなく、素朴な疑問をぶつけるように尋ねてきた。誰かも知らない男のキスを受け入れたの?無防備さに眉をひそめながらも俺はすずちゃんの手を握る。ここはどこだろうと辺りを見渡してみたら、この前少しだけ入ったすずちゃんの実家の部屋のようだった。制服は多分高校のもの。寝る前にすずちゃんの高校時代のアルバムを一緒に見たから夢にまで出て来たのだろうか。
「俺はね、君の未来の旦那さんだよ」
そう答えるとすずちゃんは目を瞬かせて嬉しそうに笑った。
「未来の旦那様がこんなに素敵な人だなんて嬉しい」
ほんと、無防備すぎて苦笑い。可愛いと思うのは仕方ない。だって過去のすずちゃんだってすずちゃんだから。
ベッドにゆっくりと押し倒しながら、顔中にキスを落とす。すずちゃんは体を強張らせながらも俺にされるがままになっていた。
「すずちゃんは、セックスしたことはある?」
「っ、まだ、ないです」
「そう。じゃあ俺としてみよっか」
微笑みながら唇を首筋に押し当てると、すずちゃんは小さく声を洩らした。シャツのボタンをゆっくりと外し、徐々に現れる白い肌にキスをしていく。触れるところから赤くなっていくのは今のすずちゃんと同じだ。
……今思ったけど、この子は過去のすずちゃんであって浮気にはならないよね?違う子じゃないもんね、同じ子だもんね。うん、そうだよ。そう自分を納得させてすずちゃんを生まれたままの姿にする。まだ成長しきっていない体は真っ白で、未だ誰にも触れられたことがなくて。……興奮する。ダメだ、俺、変態なのかも。
「すずちゃん、可愛いよ」
「っ、恥ずかし、」
「これからもっと恥ずかしいことするんだよ。でも大丈夫。未来のすずちゃんは俺に抱かれてすごく気持ちよさそうだから、君も怖がらないで」
安心させるように何度もキスをして、頭を撫でてあげる。すずちゃんは俺にしがみついて目を瞑っていた。
「ここ、自分で触ったことある?」
胸の色が変わった部分を指でくるくると触りながら聞くと、すずちゃんは顔を真っ赤にして頷いた。……この頃からエッチだったんだ。たまらなくなって乳首に吸い付いた。でも怖がらせないように、そっと、優しく。
「んんっ」
吸い付きながらもう片方の乳首を指で弾く。ピクンと震えてすずちゃんは指を噛む。この癖、はじめからだったんだ。俺はすずちゃんの手を握ってベッドに縫い付けた。大丈夫、すずちゃんが傷付くようなこと、俺がいつか全部なくしてあげるからね。指を噛まなくなった今のすずちゃんを思い出して無意識に微笑んでいた。
すっと手が伸びてきて、ハッとしてすずちゃんを見るとまっすぐに俺を見つめていた。
「……優しい顔」
「え?」
「私、あなたに愛されてるんですね」
そうだよって、答えながら。俺の気持ちが全て伝わるようにまたキスをした。君にどれだけ辛いことがあっても、悩んでも。いつか俺が君を助けてあげる。絶対に、幸せにしてあげるからね。
「……すごく、愛してる。今の君も、過去の君も、未来の君も」
だから安心して。君には俺がいる。
「ここも触ったことある?」
足を大きく開いて、至近距離で見たそこは今と変わらないように見える。けれどまだ誰も受け入れたことがない場所。また真っ赤な顔で頷いたすずちゃんに微笑んでそこに顔を埋めた。
「っ、あああっ」
初めての刺激がすずちゃんは少し怖かったみたいで、目の端から涙が零れた。確か、俺と初めてした時もすずちゃんは気持ちいいのを少し怖がっていたから。俺は安心させるようにすずちゃんの手を握った。
「っ、こわ、い」
「大丈夫。気持ちいいのは怖くないよ。俺を信じて?」
すずちゃんは俺の目を潤んだ目で見て頷いた。信じやすく俺の言うことをすぐに受け入れてしまうすずちゃんが可愛い。すずちゃんの気持ちいいところはすずちゃん本人よりよく知っている。まだ処女のこのすずちゃんなら尚更。すずちゃんの気持ちいいところを開発していくような気分になって、高揚した。
「ん、なんか、変、」
「ん?」
「お腹、ムズムズする……っ」
「イきそうなんだよ。大丈夫。そのまま目を瞑って、俺だけ感じてて」
微笑むと、すずちゃんはこくこくと頷いて目を瞑った。突起を吸いながら舌で刺激するのが気持ちいいすずちゃんは、そうすると体を震わせてイッてしまった。
「うっ、うう……」
「大丈夫。気持ちいいでしょ?怖くないよ」
すずちゃんの隣に寝転び、抱き締めながら頭を撫でてあげる。すずちゃんは俺の胸に顔を埋めて泣いていた。
……すずちゃんの本当の初めては、確かお兄さんの友達。よくわからないまま初体験を済ませてしまって、気持ちいい感覚も分からずに苦痛なままで。夢だけど、セックスは苦痛なものじゃないって教えてあげたい。
「すずちゃん、愛してる」
汗で濡れた額にキスを落として、いつものように囁く。すずちゃんはくすぐったそうに笑って、俺を見上げた。
「俺、翔って言うんだ。名前呼んでくれる?」
「か、ける、さん……」
「そう。覚えておいてね。いつか出会うから」
ふっと笑って、すずちゃんに深いキスをした。体を撫でた後中心に指を這わす。ピクンと震えながらもすずちゃんは俺の指を受け入れてくれた。違和感はあるものの指は痛くないらしい。もしかしてもう潮噴いちゃったりするのかな。好奇心には勝てず、俺は中で指を折り曲げた。
「ひ、んっ」
また指を噛もうとしたすずちゃんの手を握って、キスをする。唇を吸い、舌を絡めて。そっちに気を取られているすずちゃんの中をかき混ぜると、ぴゅっ、ぴゅっと液体が飛び出した。
肩で息をするすずちゃんの脚を大きく開いて、服を脱ぎ捨てる。俺に見惚れていたすずちゃんは顔を真っ赤にして目を逸らす。ほんと、可愛い。
「……挿れるよ?」
何度も頷くすずちゃんの俺の腕を握る手に力が入る。怖いよね。痛いかもしれない。
「痛かったら言って。すぐやめる」
「っ、翔さんが知ってる私は、痛がらないんですよね?」
「……うん、まぁ、そうだけど」
「じゃあ、頑張ります。私も翔さんのこと、気持ちよくしたい」
「……」
泣き叫んでも止められる気がしないんだけど今のは可愛すぎるすずちゃんが悪いよね?そう思いながら、中心に押し当てて少しだけ腰を進めてみる。すずちゃんは「痛っ」と小さく洩らしてすぐに口を手で覆った。
「すずちゃん、無理しないで」
「っ、だいじょうぶ、です」
「でも……」
「翔さんに抱かれて愛される私が羨ましいんです、」
息も絶え絶えに言ったすずちゃんに頬が緩んで。俺はすずちゃんの唇を奪った。キスに気を取られているすずちゃんの中に押し込んでいく。狭くて気持ちいい。ハァと熱い吐息を洩らしたら、すずちゃんは泣きながら笑った。
「気持ちい?」
「……うん、すごく」
「翔さんの知ってる私と、どっちが気持ちいい?」
「どっちも。同じくらい気持ちいいし可愛いし愛しい」
少し不服そうなすずちゃんに笑ってしまう。自分に嫉妬するなんて、可愛すぎるから。
ゆっくりと、慣らすように、俺を覚え込ませるように何度も出し入れする。はじめは苦しそうな顔をしていたけれど、少しずつ甘い吐息を洩らし始める。さすがに初めてでイくのは無理だろうけど、少しでもセックスが苦痛なものじゃないって教えてあげられたら。
「……すずちゃん」
「んっ、」
「俺が知ってるすずちゃんはね、俺に抱かれると何回もイッちゃうんだ。自分から誘ってくることもあるんだよ」
「っ、翔さん、」
「だからね、俺に出会うまで我慢してね。嫌なこと、あるかもしれないけど」
すずちゃんをこのまま攫えたら。傷付くこともない。俺が守ってあげられるし気持ちいいこといっぱい教えてあげられる。でも、できないから。辛い思いした分、いっぱい愛してあげたい。俺の全てで、すずちゃんの全てを。
「俺の全部で、すずちゃんを愛してあげる」
すずちゃんをぎゅっと抱き締めたまま、一番奥に吐き出した。
***
ハッとして目を開けたら、視界にすずちゃんの顔が飛び込んできた。この子はどっちだろう。そっと手を伸ばすと、俺がよく知っているすずちゃんの感触だった。
「翔さん、どうしたんですか?汗かいてる。怖い夢見ました?」
心配そうに聞いてくるすずちゃんの頬を撫でながら笑うと、すずちゃんは不思議そうな顔をした。
「……変な夢見た」
「え?」
「夢の中ですずちゃんの処女奪ってた」
「え゛」
恥ずかしそうにするすずちゃんを抱き締める。ああ、やっぱりこの感触が好き。
「すずちゃん、俺のこと知らないのに簡単に抱かれてたよ。無防備すぎる」
「っ、そ、それは多分、その時から翔さんのこと好きで……」
「うん、嫉妬してた。未来のすずちゃんに」
恥ずかしそうにソワソワするすずちゃんの額にキスを落とす。
「……すずちゃんは今、俺に出会って幸せ?」
すずちゃんは一瞬キョトンとして、けれどすぐに花が咲いたように笑って答えてくれた。はい、と。高校生のすずちゃんも頭の中で笑ってくれた気がして。俺は感無量になってすずちゃんをぎゅっと抱き締めたのだった。