心からの願い
すずちゃんは俺にとって癒しの存在だ。可愛いし、抱き締めると温かくて穏やかな気持ちになるし、いつだって触れていたいと思う。俺の感情を揺さぶるのはすずちゃんだけだ。ということはつまり、俺の負の感情。例えば嫉妬だとか、劣等感だとか。そんなものを感じるのは、すずちゃんに関することだけで。「ふ、ぁっ……」
「すずちゃん、男には隙見せちゃダメだよっていつも言ってるのに」
「っ、あ、ごめんな、さ……」
すずちゃんの両手をベッドに縫い付けて。右手はすずちゃんの気持ちいいところをひたすら弄ぶ。俺の体にすっぽりと収まってしまう小さいすずちゃんは、ビクビクと体を揺らして何度目か分からない絶頂を迎えた。
マンションの前のすずちゃんお気に入りのケーキ屋さん。牽制しといたつもりだったんだけど。明らかにすずちゃんを特別な目で見ていた。そこまではいい。すずちゃんは可愛いから、好きになってしまうのは仕方ない。でも問題なのはそこから。閉店後にすずちゃんを呼び出して、告白。断ったすずちゃんを襲ったのだ。すずちゃんを好きになりすぎておかしくなっちゃったんだね。そこまでは俺と一緒。違うのは、すずちゃんが好きなのは俺だということだ。俺はすずちゃんの恋人だから、こうやって触れられる。すずちゃんを抱けるのは、恋人である俺だけの特権なのに。
「すずちゃんの体に傷が付くのは嫌だっていつも言ってるのに……」
何とか逃げ出して家に帰ってきたすずちゃんは、俺が帰ってきた時も隠していた。でも、すぐに分かる。すずちゃんの体に、心についた傷は。すずちゃんを傷付けることを何とも思わない男に、すずちゃんを渡せるわけがない。
「ごめ、なさ、翔さ……っ」
「違う、謝ってほしいんじゃない」
その時、俺たちの世界に耳障りな着信音が割り入った。すずちゃんが反応するから。俺は躊躇わずにすずちゃんの携帯を取った。
「もしもし」
『っ、あ……』
ケーキ屋さんの、声だ。俺が出たことに動揺したらしい彼は、震える声で言った。
『す、すずさんに話が……』
「その前に聞いていい?どうして電話番号知ってるの?」
ベッドに突っ伏したままのすずちゃんのお尻を上げさせて、躊躇なく自身を挿入していく。必死で声を押し殺そうとするすずちゃんの腕を、引いて。
『す、すみません、ポイントカードを作った時に記入してくれたので……』
「すずちゃん、話せる?」
「っ、か、けるさ……」
濡れた声。いつもの天真爛漫で少女のように無邪気なすずちゃんの、欲に塗れた声。もっと奥まで欲しい?知ってる。俺に何度も抱かれたすずちゃんは、こんな刺激じゃ物足りないよね。
「すずちゃん、電話」
すずちゃんの顔に携帯を近付けると、すずちゃんは首を横に振った。ああ、まだ理性が残っていたのか。
「ふっ、んんんっ」
すずちゃんの気持ちいいところを擦り上げた。すずちゃんは腰をくねらせて、もっともっとと俺を呑み込む。
嫉妬、劣等感、焦り、苛立ち。すずちゃんのせいで生まれるこの負の感情は、全部俺の中で何とか処理するから。
「翔さ、好き、大好き」
「……うん」
「翔さん以外、いらない……っ」
君に注ぎ込むのは全部、優しくて甘い愛情だけだ。だから、こんなに身勝手で醜くて愚かな俺を、許して欲しい。
「警察には言わないから、二度とすずちゃんに近付かないで」
ぶちっと電話を切って、すずちゃんを見下ろす。こぷりと膣から溢れる白濁をまた奥へ奥へと押し込んで。
「すずちゃんに愛されるのは、俺だけがいい」
心からの願いを口にして、俺はまたすずちゃんを抱くんだ。今なら死んでもいいと思えるほどの、幸福を胸に。