縮まる距離と生まれる不安

 それからは順調な交際が続いた。一緒にいることも多くなったし、不安になるようなこともなかったし、強いて言うなら文化祭から立花がセクハラ発言をかますようになったのだけが不満。

「ヨリー、クリスマスはどこ行きたい?」
「温泉ー」
「えっ、俺と一緒にお風呂入りたいの!それなら今日にでも」
「あー違う違う。クリスマスは毎年家族で温泉旅行なんだー」

 12月も半ば。もちろん行き先も宿も決めて予約済み。楽しみだなーとテンションが上がっていると、隣を歩いているはずの立花がいないことに気付いた。振り向くと、顔面蒼白で立ち尽くしている。

「え、どうしたの?」
「どうしたのじゃないんだけど!クリスマスってカップルで過ごすもんでしょ!」
「えー、欧米では」
「ここ!!日本!!!」

 あまりに鬼気迫った表情に若干引く。もしかしてクリスマスに一緒に過ごすの楽しみにしてくれてたのかな……?そう思うとやっぱり少し嬉しくて、立花に触れたくなった。……そんな勇気はなかったけど。

「あー、ごめんね?クリスマスは毎年の恒例行事だからどうにもできないんだ。23日なら予定ないんだけど、その日じゃダメかな?」
「……」
「ごめん、私ちゃんと彼氏できたのも初めてだからさ、そういうの気が利かないよね。でも……」
「いや、ごめん。俺がわがままだった。何日でもヨリと過ごせればそれだけでいいよ。どこ行くか決めよ」

 ふわりと笑って立花が手を差し出す。いいのかなぁ、本当に。さっきはあんなに不満そうだったのに。
 でも私はそれ以上何も言えず、立花の手に自分の手を重ねた。

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