『ねぇ、沖田くん!沖田くんってば!』

「なに?さっきからうるさいなあ」

『だって、歩くの早いよ!そうでなくても沖田くんの荷物重いんだもん』

「なにいってんの甘ったれないでよね。早くしてくんないと練習遅れちゃうんだけど」

そう言って歩く歩幅をさらに進める沖田くんに私は頑張ってついて行く。彼は沖田総司といって剣道部に所属している。顔は上の上と言ったところで容姿は完璧。しかし、性格にこの上ない難をもっている…と思う。そんな沖田くんにあっけなくも惚れてしまったのは私でずっと彼に届かない片思いをしてしまっていた。そんな沖田くんとの関係が変わったのはついこの前のことであった。


ーーーーーーー。


夕暮れの教室。委員会が長引いてしまい。普段部活にも入っていない私がこんな時間まで学校に残ることになってしまっていた。早く帰って夕御飯の準備をしなくてはと思いつつも席を立つが私の視界に入ってきたのは愛しいあの人の机だった。

『沖田くん…』

少しだけならいいかなと思い、彼の机に近づくそっといつも沖田くんが座っている席に腰をかけ机を触る。自分でやっていても気持ち悪い行為なのは分かっているが、たまには大胆になって見てもいいだろう

『沖田くん…好きっ』

ガラガラ
私が沖田くんへの思いを口にした瞬間開かれた教室。とっさの事でびっくりした私は硬直してしまった。

「あれ?立花ちゃん?珍しいねこんな時間まで学校にいるなんて?」

『え、ええ?あ、う、うんそう。たまたま委員会が長引いちゃって…』

教室に入ってきたのは紛れもなく沖田くんで、私は動揺を隠せるわけもなく声は裏返るは視線は泳いでしまうわで大変だった。沖田くんと二人っきりなこの状態で嬉しいとかそんな気持ちはひとっつもなくてただただ、早くこの状況を打破したくてたまらない思いだった。


『あーー。私早く帰らなくちゃ!夕御飯の準備あるし!じゃあまた明日ね沖田くん!!!』

足早に教室を出ようとした瞬間。ぐいっと腕を掴まれた。

「ねぇ、君僕のこと好きなの?」

『え、あ、はい。』

「ふぅん」

なんなんですかこの状況。もう穴があったら入りたいというのはまさにこの時のために生まれてきたんじゃないかと思うぐらいマッチしてる言葉で気まずすぎてほんとにどうしようと慌てていた


「じゃあ僕の言うこと聞いてよ」

『はい?』

「だって僕のこと好きなんでしょ?」

じゃあ、明日からよろしくね立花ちゃん。と真っ黒い笑顔を浮かべながら意味のわからない言葉を残し私の頭をぽんっと撫でていった沖田くんに不覚にもときめいた私はなんてバカなんでしょう。
というわけで話は冒頭へと戻るのであった。




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