短い夕方

お祝いにとマリーたちからもらったロッキングチェアで、僕は毎日ゆらゆらしていた。外に出ない分、ベランダの近くまでよせてカーテン越しの光を楽しんだ。適度な運動を取るようにはしていたが、ニールが彼がいないときには外出して欲しくなさそうにするので僕はあまり出かけないのだ。
家の中にばかりいることは新鮮で、そこまで暇を感じたりはしないがどうしても考えごとで頭の中がいっぱいになってしまったりする。
これから先のことを考えると不安になるし苛立ちも覚えて、そんな自分に自己嫌悪して溜まった感情は自分に吐き出した。分かち合うことが愛だとは思えなかったのだ。
もともと、ニールの精子が己のからだに残されることさえ欲深すぎて億劫に感じていた。こんな愛は重たすぎる。毎日のように仕事に行くニールの左手にある指輪も、いつかその指を落としてしまいそうだった。かたちで束縛したくないのに。僕が孕んだものが僕の意地汚い恋幕と彼の優しさから生まれるのだったら、それは本当に愛すべき存在なのだろうか。そのこと僕が出会えたら、僕は僕の愛しい存在になれるのだろうか。こんなに近くにいるのになにもわからない。
自分を追い詰めることばかりしていると自然に涙がでる。僕は大人になっていつの間にか、見せたいひとのためだけに泣くようになっていたから、こうしてひとりでいることに耐えられない。いつもニールにそばにいてほしい。そうすれば涙は無駄にならない。僕の愛で湿らせて潰したくなどないのに、だれよりも近いところにいてほしい。僕は、自分のそうゆうところが嫌いだ。大嫌い、もう始まってしまったことなのに。いまさら自信がないだなんて、誰に言えばいいのだろう。3時を過ぎると、あっと言う間に冷え込んできた。冬の日は短くて夕方を通り越してすぐに夜がやって来る。もうなにをしたってどうにもならないのなら、せめてはやく帰ってきてほしい。

(あなたがいるだけで、本当に、)

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