太陽を追って地球の上を移動したのなら、



















今回のツーマンセルでの行動は長くなる予定なので、任務先の近くの里で小南に教えて貰った古い民宿を借りた。片田舎の民宿の主人は傘で顔を見せない二人組を怪しむ様子もなかった。
厠と居間と小さな個室が二部屋だけの狭いところだったが、なかなかにこぎれいで開け放された窓からは爽やかに風が通り過ぎた。
デイダラが居間のテーブルに置いてある菓子をつまんでいる間に、早速サソリは奥の個人の一つに入った。がしかしそこでサソリは動かなくなった。ヒルコの首がかくんとこちらを向く。

「襖がねえ。」

サソリからのびている青いチャクラ糸が、部屋の扉の縁まで辿っている。デイダラも急いでもう一つの個室を覗くがやはり、襖はついていない。

「開放的だな、うん。」

デイダラにとっては差し支えのあることではなかったが、サソリはそれが不満だったらしい。にやにや笑うデイダラを一瞥した後、舌打ちをした。女でもあるまいし。

山に四方を囲まれた小さな里のネットワークはたかが知れていて、ざっと見回ったところで里の構図は把握でき、また忍の影すら見えなかった。サソリもそうゆうのだから間違いは無いはずだ。任務は黄昏時を目安に進める予定なのでそれまでに数時間空く。準備は万端で今粘土の無駄使いをするわけにもいかない。デイダラはどうしようもなく暇を持て余した。荷物を投げ捨てコートを脱ぎ、香ばしい独特のかおりの畳にうつぶせて深く息を吸う。窓から午後の日差しが降り積もる。部屋の時計を見上げると、丁度三時を過ぎたところだった。
足の裏に日光を浴びて、目を閉じれば故郷のような気がした。
浅い眠りが訪れかけた頃、壁一枚通した向こう側の部屋から金属のたてるかちゃかちゃという音がしてきた。
サソリが傀儡のメンテナンスを始めたのだろう、デイダラのうわづいた気分はすっかり現実に引き戻され、そのままぼんやりと畳の上で寝転んでいると、ふと耳にかけられていた髪がふわりと揺れて顔に垂れた。先ほどはさして気にもとめていなかったが、もとから窓も開け放されていたらしい。
柔らかい感触に、ひどく安心する。
同時に油と鉄のかすかなにおいが鼻腔をくすぐった。

ふと、あのいつものサソリが自分と同じように風にふかれていると思うと少し笑える。
無駄に絡めばサソリは鬱陶しいと機嫌を悪くすると予想はしたが、好奇心には抗えなかった。

音を立てぬようむくりと起き上がり、壁に手を這わせデイダラはそれ一枚に隔てられた向こう側を覗く。



またしてもデイダラの長髪が風に靡くのと同時に、奔放な赤毛もが揺れていた。

目を見開いたのは、用心深いサソリがこのような場所で気難しい顔の老爺の皮を脱いでいたことにであるよりも、その端整でありながらも常に人形のような顔を柔和に緩ませていたからである。
不覚にもサソリの横顔に見惚れてしまい、彼にちょっかいをかけることもデイダラはできなかった。

風がそよげばデイダラの髪が舞い、サソリの短いくせ毛もふわりと揺れた。

あたりをすりぬければ心地よさにデイダラの目は閉じ、サソリの目も細まった。

ただの木材の薄い隔たりに顔も見えぬというのに、窓から通り抜ける気持ちのよい涼しさを運ぶ風が部屋を流れそれを共有するだけで、相手の心と自分とがまるでかよったようなのだ。

そう言えばサソリはどう言葉を返すだろうか。無意識下のようにもみえたあの微笑みを、彼がどう感じているかなど知るものではない。

午後の緩やかさに身をまかせ、デイダラはもう一眠りしようと思う。次に目を覚ますときはサソリに叩き起こされるときかもしれない。きっとそうなる。
その時には夕暮れから夜に近づいた空の下でまた、万人のいう罪を犯しにいく。



それでもこううとうとしていると、目を醒ませばすべてがゆめになっているのではないかと、思う。
この風はそう思わせるのだ。





















「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -