へんなかお。

















実はサソリは引き笑いをする。人付き合いが良いとは言えないが、彼は人を引き寄せる。ポーカーフェイスのサソリも、仲間内だとたまに笑うのだ。いつもの感じの悪いニヒルな笑いとは違う、すこし下品な、それが彼の中の爆笑なのかもしれない。
デイダラは、サソリの引き笑いが好きだ。お世辞にも可愛いとか綺麗とかそんなこと言えるようなものじゃないけれど、いつもの整いすぎている顔が崩れるのが嬉しい。自分の前で自分によって起きたことだとことさらに。かくん、と肩から首にかけて小さく揺れた。あぐ、とおかしな音をたてて顔をあげると訝しげにつり上がった大きな目がこちらをみていた。

「ごめん、きいてなかった。
もっかい言って?」

茶色に長い髪を染めている目の前の女子生徒が、何か言っていたのは知っていたが、主にサソリのことを考えていて肩を揺すられるまで彼女が自分に向かって話しかけていたことに全く気づかなかった。

「だから、今彼女いないのって聞いて―

内心至極どうでもいいめんどくさいだるい。彼女なんていつの間にかいなくなっていた。確か高校で新しくできた彼女がいたはずだけれど、二年生になってから一度もあってない。記憶にないけれどきっと別れたのだろう。

「いないよ、うん。」

サソリの彼女はとっかえひっかえだ。興味ないですみたいな顔しておいてとりあえず女の子はべらせていて、それでもすぐ別れるのは興味ないからなのか。そういえば前に綺麗な奴は純粋に好きだ。モデルにできるしな、とか言っていた。サソリは絵やらなんやら描くことが好きで、その趣味に使ってでもいるのだろう。やなやつ、と思ってデイダラは自然に笑いをこぼした。

再び向けられた怪訝な眼差しに、適当に笑ってそれじゃあ今度合コンでも誘ってねと言う。もろとも行く気などさしてないのだが、意味もなく騒ぐのは好きだ。イタチあたりを呼べば喜ばれるだろう。





「ホモ?」

「うん?」

放課後の教室でデイダラと酷似している金髪が、だるそうに揺れている。くんだ行儀の悪い足の間から今にもスカートの中が見えてしまいそうだ。

「あんたって人当たりいいし女の子にも優しいけどさー、最近こう、うざさがとんじゃってる気がする。」

誰かのところに、そういのは続けた。曖昧な笑いを浮かべていて、なんだかいらつくのにそれに驚愕が上回っている。ホモ?

「ホモ…」

口をついた。自分のそれって今どこに飛んでるのだろう。言われてみれば周りに淡白になった。気がする。

「ホモ。」

繰り返してみればますます、そんな気、しないでもない。気、ってどんな気だ。机の上でジュースの缶が汗をかいている。握ると、手の中が水浸しになった。

「あ、委員会終わったって。」

光った携帯を手にいのが呟く。相手はサクラだろう。このクラスの保健委員その2だ。缶に口をつける。ラベルによるとミックスフルーツ風味なそれを、なるべく味わわぬように一口大きく飲みこんだ。

「あげる、うん。」

(図々しくも)デイダラの机に座っていたいのの腰あたりに、ジュースの缶を押しつけた。





保健委員その1は、待ってると言っていてもすぐに帰ってしまう。下駄箱に先回りすれば赤い頭がのぞいた。やっぱり。
猛スピードで駆け寄る。

「お。」

「待ってるっつったじゃん!」

「あっそ、」

「ねえ。」

ジュースの甘さが喉の奥から口内に這い上がってきて吐きそうになる。甘いばかりで吸収したはずの水分はどこへいったのか、喉はからからだ。ああ、体中から吹き出るこの汗に変わってしまったのかも。

「好き。」

いつもは気怠そうなアーモンド型の大きな瞳が、猫の目のように見開いた。中途半端に口が開いている。若干、猫背。

「かも。」

後についた曖昧さ。サソリの顔は未だにおかしなままで、そうゆう変な顔も好きだと思い一人満足した。



















消化不良。
彼らはこの後どう帰るのか。

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