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「ティエリア、」
無視。
「熱いね。」
無視。
ロックオンには、未だに何故アレルヤとティエリアの仲が良いのかよく分からない。アレルヤの愛想が悪いということはないが、だからと言って彼が積極的あるとか話が上手いタイプかといえばそうとは言えない。
ティエリアのやや冷淡冷徹な性格に、アレルヤが挫けないのが謎である。
「髪を切ればいい。」
ティエリアに向けた笑顔を固めたままのアレルヤのはねた長い襟足を、刹那が指摘した。
そういえば刹那の黒髪は数日前からすこしさっぱりしていて、はねも目立たない。心なしか様子も涼しげだ。
「確かに、でも僕この前切ったばっかりだしなあ。」
顔を傾けて毛先を弄る、まるで年頃の女の子のような仕草が、妙にアレルヤには似合う。彼の身長はゆうに180cmを越しているというのに。ロックオンは苦笑した。
「髪が伸びるのが早い奴はエロいっていうよな。」
「なっ、」
途端にアレルヤの頬から耳にかけて赤みがさした。すっとしている切れ長の目が、情けないくらい困惑に見開く。
「あまり切って貰わなかっただけです!」
前のめりになってあまりに勢いづいて言うものなのでロックオンは笑って、くしゃくしゃにアレルヤの頭を撫でた。ティエリアの赤い瞳がそれに潔く反応したように見えたので目を合わせて曖昧に眉をあげて笑えば、強く睨み返される。
「今度、髪切ってやろうか?」
慌てて乱れた前髪を正すアレルヤにそう言って肩を叩くと、変な声を出してびっくりされた。そこまで驚かなくてもいいのにと、ロックオンは思う。
「その必要はない。」
様子をじっと見つめている刹那が思っている以上にロックオンの手は強くティエリアにはたかれて、いつの間に取り出したのか小さな髪ゴムを巻きつけた手先でアレルヤの髪をかき集めた。
ティエリアの細く青白い指は、奔放な深緑の髪を器用に纏め上げた。アレルヤの首筋があらわになる。
「わざわざ切る程の長さでもないと思います。」
無表情の中にどこか優越感をもつようなティエリアに鼻を鳴らされて、ああそうなの?、としかロックオンには思えない。今日のティエリアはどこかむきになっている。なんだかつっかかるところがあった。
刹那に端末を向けてもらい、光の反射で映った自分をみたアレルヤは、感嘆にぽかりと口をあけた。髪を結うことを今までしなかったのだろうか。自分をじっと見つめる姿はどこか滑稽だったが、端からみてもラフなその出で立ちは新鮮だしよく似合っていた。
「ありがとう、ティエリア。」
へにゃりと顔を綻ばせアレルヤが微笑む。幸せそのものといったかんじで、これはロックオンもあまりみたことのない類のものだ。
「そのくらい、いつでもできる。」
あっさり告げたティエリアの様子も、そこはかとなく優しげだ。
ふたりの柔らかな空気はしかし、ロックオンからすればすこし息のつまるもので、ふたりをみる刹那の瞳もどこかしか訝しげであった。
(確信の違和感は、とろけるようで)
地上で4人でだらだらしてそうな、