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兄の後輩として紹介された時点では、ライルに彼と深く関わりを持とうという気は更々なかった。
ニールの友人は揃ってライルをニールと比べたがるのだ。それには、ニールがどうかはしらないが、誰もが優しい兄を慕い、人並み以上に好感をもってしているからというニールの人格上からしてもっともな理由があり、ライルもそれは熟知していた。
ライルに罪がなければ同様にニールにだってそんなもの無いのだ。
そうであったとしても、それなりに歳を重ねた今であったとしてもやはりライルは、他人から兄と自分についてとやかく思われることにいちいち感じてしまう不快感に苛まれていた。内心、気になんかなってはいないとそう素直に納得も諦めもできなかった。

兄の後輩として紹介されたアレルヤという青年は控えめだが穏やかで、困ったように優しく笑う姿に、ライルは好印象を抱いた。

そして兄を挟んでのしばらくの談笑の後に、アレルヤが案外近場に住んでいることが分かった。
思えばそれがきっかけで、ライルはアレルヤとの友好を深めたのであった。少々天然気味の彼であったが、付き合いの長いだろうニールと出会ったばかりのライルとに、差をつけることなく会話を重ねるところをみると、ニールと同じようなタイプなのか、それとも彼にも兄弟がいるのだろうか、そうゆうところには抜け目が無いのかと思ったが、あまりにもその様子が自然なのでつまらない考察をする自分がライルは嫌になる程だった。
それでもアレルヤの人の良さは嫌みがなく、ライルは心地よく感じた。





「アレルヤってさ、兄さんに好かれてんだな。」

「え、そうですか?」

嬉しいなあとほわほわ笑うアレルヤにとくりと心臓が少しずれるような気がして、ライルは気色悪いそんな自分を押しやった。

「嬉しい?」

「それは、
尊敬してますし、」

例の、眉を下げた笑いをするアレルヤに、ライルまでつられて苦笑いを零した。
よくわからなかったけれど、この歳になってそんな、とか、色々思う。

「尊敬、ねえ。」

ライルの目は伏せられて、ほんの少しため息を残した。アレルヤも言葉を繋げないので、空間がいやに静かになる。沈黙も、楽に感じられるのはアレルヤにとってライルが気の置けない存在であるからだといえて、ライルはくすぐったい喜びのようなもどかしさに身が捩れるように感じた。
突然、ライルが震えるように低く笑ったので、訝しく思ったアレルヤの肩に、奔放なくせ毛がふよふよと舞った。アレルヤ自身には重い人の上半身がどっしりと覆いかぶさった。

「どうしたんですか?」

くすりと、女性がするように柔らかにアレルヤが笑う。
しかししっかりとライルを支える体は、逞しく引き締まっている。ライルはもう一度ため息をもらす。

「だるいんだよ。」

ぐてりとバランスを崩したライルの頭が、ゆっくりと意思をもって黒いローライズに包まれた太股に落ちつく。
鈍い衝撃に、アレルヤは小さく声を出したあと少しして、長い指でライルの髪を梳いた。
ふわふわ広がっている髪の間に埋もれていたライルの耳に、アレルヤの指が触れる。
ライルにはそれが酷く純粋に嬉しく感じられた。




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