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きめ細かい彼女の白い肌は、いつだってうっとりするほど綺麗なのだ。
手に手をとって眺めていると、おかしなアレルヤ、と彼女は笑う。僕の横で、ふんわり微笑む。
彼女がピーリスからまた、マリーへと戻ってから、僕はやはり彼女から離れなかったし、彼女もなにも言わなかった。夜になると彼女は、静かに寄り添った。
毎日のように僕らは抱き合い眠り、そのうちに、僕が彼女の手を慈しむ様にも彼女はなにも言わなくなった。ただ微笑んでいた。
彼女からはなにも言わなかった。
僕は彼女を抱いたことがない。渡された休暇を、ゆっくりと2人で過ごしていて、それは幸せであり、深くことを考えさせられた。
僕は彼女を汚してしまいたくないとか、プラトニックな付き合いをしたいだとかの思慮の上でそうしているのではない。
彼女には伝えていなかった。だから、今晩も僕は彼女のすべらかなその手を撫でて、笑う彼女と寄り添い眠る。
彼女がなにも言わないのをいいことに、僕は甘えているのだろうか、それでも彼女を手放したいとは思えないのだ。



アレルヤは幸せな過去を愛している。
ほぼ毎日のように、アレルヤが端末に記録しているものが、日記ではないことを私は分かってしまった。

一般常識など、ほんのお世辞程度にしか持っていない私だが、同僚の言葉に自分が理解したことは覚えている。子ども同士の恋愛の発展は、近親相姦のようなものだ。
私たちの愛はこどものお遊びと同然なのかと問われれば、そんなわけあるものかと思う。けれどこれが、ただ愛しいという、平和と安心の中だけにあるものから前進があるようには見えないのだ。
そのことに、嘆き悲しむこともしないで、ただ側に居れることだけを望む私の様は、酷く滑稽なのかもしれない。

ただ、私は幼稚で曖昧な感情だけで、行動しているのではないのだ。
だからアレルヤが、私に手を出さないことも日々手紙を書き連ねていることも、意図が明白に分かってしまう。あんなに優しく私の手を撫でる理由も、

私はさして、自分の手が好きではない。
世の女性がするようには生きてこなかったこともあるから、あまり手入れはされてない上、大きくて武骨だ。
なにより、人の生死に関わるトリガーを弾いてきた指だ。
けれど、アレルヤが美しいと言うのだ。私を通して誰かの手を讃えているのだとしても、それは意味のある言葉だった。アレルヤにはアレルヤの思うところがあるのだ。ならば私は、私は彼に一番近い場所で静かに時を過ごしたい、彼の許す限り。

それでいい。
いつまでも、アレルヤを産み落とした存在でありたいと思った。


眠りにつく前のほんの一時、
そっとアレルヤの大きな、けれどもしなやかな手に包まれた、己の手をひきぬいた。
ゆっくりと一度まばたきをしてから、力を抜けば、私でない誰かの生白い腕が、アレルヤの頭を撫で回した。
酷く驚いた顔をして、今にも泣き出しそうな顔をしていて、それでもアレルヤは沈黙を貫いた、されるがままに口を閉じてした。

アレルヤにはあたりまえに一言では言い表せないような多彩な表情があらわれる。こどもの時とは違うのだ。私のしらない長い年月の間にアレルヤは、誰かを愛した軌跡をのこしていた。
彼の目の先には、ここではない遠いところが見えている。透かされた私の先の誰かを、
胸の下の方でどうしようもない焦燥にかられるのは、また彼も私にとって愛す可し人であるからである。










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