ドキン、ドキン、と胸が高鳴る。こんなに甘酸っぱい気持ちになるのは、中学生ぶりくらいだろうか。
「…‥高城先輩」
意を決して名前を呼んでみる。だが、一向に起きる気配ナッシング。
これは…チャンスなのだろうか?ゴクリと生唾を飲み込む。
「……ん…」
「…あっ、先輩!起きましたか?」
あと数センチ、ほんのわずかな距離で届かなかった唇に口惜しさを感じながらも、私は素早く先輩から離れた。
「……あれ、白石…?」
「もう、先輩!昼休み終わっちゃいますよ」
白々しい笑みを顔に張り付けながら、私はデスクに散らばった書類を片付ける。
さっき、先輩の寝込みを襲って唇を奪おうとした際、誤ってコーヒーをこぼしてしまったのだ。
「…白石」
「何ですか?」
「見えてるぞ、ブラ」
「えっ!?」
先輩が指差している胸元に目をやると、確かに黒いブラジャーのレースの部分が、少しYシャツからはみ出していた。
「す…っ、すすすみません!!」
「そうか、白石は黒か」
なんて、のんきな声で告げられて、私は耳まで真っ赤になる。
「せ、先輩!」
「なあ、それ誘ってる?」
「……え?」
思いもよらない言葉をかけられて、なおさら私の頭はパニックになる。
「だって、そうだろ?下着チラ見せさせられた上に、人の寝込み襲うんだから」
「……っ!?」
…‥き、気付いていらっしゃいましたか!!
「…で、どうやって責任とってくれんの?」
「はいっ!?」
裏返った声を出した私にくすりと笑いをこぼし、先輩は狭いオフィスの会議室の壁に私を追い詰める。
「あ、ああああの」
「したかったんだろ、俺とキス」
そう言って、私の体の両脇に腕を置き、逃げ道を塞ぐ先輩。
(3秒以内にしろ、いいな)
(あ、あの、)
(3、2、1…)
≡≡≡≡≡≡
∵お題 コーヒー/オフィス「誘ってる?」
⇒エデンと融合さまへ
copyright(c)2011.03.24 まいみ
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