誕生日2017 | ナノ

色んな人の誕生日記念のお話

スクアーロ誕生日 01
補給班として物資の流れを見ていると、ヴァリアー本部で行われるイベントの気配が分かる。普段以上に小麦粉やらなにやらの消費が増えたり飾り付けに使われると思しき見慣れないものが要求リストに上がっていたりする。

今回の常にない要求は漁師の方に外道とか言われそうな魚、ブリ、パスタ、大根……なんだこれ。確かボスは魚は嫌いだったから、あんまり魚の注文はしない。珍しいな。食料品以外だとブービートラップに用いる手榴弾に処刑する方の安楽椅子、毒針。これを贈られる相手は随分と嫌われているのかじゃれのつもりなのか。

まあ食料品はサービスで通してあげよう。だが、それ以外は認められない。明らかに私刑に用いるだろう物資の要求に容赦なく不可の判子を押して書類の山に新たに置いていく。

遠い極東の沢田綱吉殿のいる国、ジャッポーネでは3月が年度末らしいが、ここイタリアでは9月が年度末だ。したがってこの時期はさほど忙しくない。忙しいのは取引先の半数がヴァカンツァとかいう腑抜けた習慣にどっぷりと浸かる前の6月だ。このときは書類ラッシュになる。去年、初めて経験したが、死ぬかと思った。

今日、私の目の前にある書類も6月みたいな量があるのではなかろうか。今日に来てどっと増えた書類に気が重くなる。重い溜息をついてペンホルダーからペンを抜いた。

「誰か誕生日?それともヴァリアー創立記念日?」
「スクアーロ作戦隊長のお誕生日ですよ」
「ああ……作戦隊長の誕生日か」

知らなかったんですか?と非難やら驚きやらが混じった言葉を部下二名からかけられる。まあ去年から居たのに知らないのは変かもしれない。その時は私も毎日になれるので精一杯で、人のことに構う余裕はなかった。頷くと彼らは微妙な表情を浮かべて顔を見合わせる。そしてプレゼントはどうするんです?と聞いてきたからちょっと考えて答える。

「確か取引先が良いグラッパを手に入れたとか言ってたからそれでいいでしょう」

即断即決。こんな山のような書類と毎日毎日向き合っていると、決めることはさっさと決めないとやっていけない。あーだこーだ悩むよりも直感で選んでしまったほうが良いこともある。確か作戦隊長はお酒はそこまで嫌いではなかったはずだし、多分大丈夫だろう。部下が何事か言っていたが、君たちはこの書類の山を見ても何も思わないのか?といえば山の大部分を持っていってくれた。ふむ。

さて、書類を片してもやるべき仕事は山のようにある。私は紙面にペンを走らせた。

*

そんなやり取りが補給版にあてがわれた部屋でなされてから数時間後、返却された書類を手にベルフェゴールとレヴィが不満げにしていた。

「ちぇー却下だってよ」
「融通のきかん女だ」

ふてくされた顔つきのベルが机の上に書類を投げ出し、ルッスーリアはそれを拾い上げて視線を動かす。そこに書かれた品目はブービートラップに用いる手榴弾。彼の場合、ワイヤーは自分で調達できると考えた故のこの注文なのだろうが。

「そりゃあ断られるわよ」
「王子の要求断るとかありえなくね?あーアイツじゃなかったら殺してるのによー」
「あら、ヴァリアーのことを、ひいてはあなたの事を思うが故よ。彼女の厳しい姿勢は」

諭すようなルッスーリアの言葉にふいと窓の方に顔を向けるベル。仕方ないわねとこっそりと肩をすくめた彼女(?)はレヴィに向き直った。彼も彼でかなり不満そうである。

「で、レヴィあなたは何を頼んだの?」

ルッスーリアは、すっとベルよりも幾分か丁寧に(内心は見下していたとしても)渡された書類に目を通した。そしてあらまあと声を上げた。そこに書かれていた品目は安楽椅子。安楽椅子と言ってもおばあちゃんが編み物をしていそうな椅子ではなく、処刑に使われる電気椅子の方だ。これはまた明確に殺意が伺えるそれにルッスーリアも苦笑する。というかそもそもどうやって彼を座らせるつもりだったのか。

「これも断られるわね」

彼女にまでそう言われ、レヴィはがっくりと項垂れた。やれやれとお上品な手つきで肩をすくめた彼女はにこやかだ。それが癪に障ったのか彼は彼女に絡む。

「貴様の要求は通ったというのか!?」
「ええ!食料品はあらかた通ったわ〜!あの子ってこういうところは見逃してくれるのよ」
「レヴィ、毒魚注文しようぜ。フグとかよくね?」
「それを貴様のナイフに塗りつけて投げるのだな!」
「なんでオレだけ労力使うんだよ。お前のサーベルにも塗れよ。まあノロマなレヴィが隊長に傷つけられるかはわかんねーけど」
「なぬっ貴様ァ!表にでろ!成敗してくれるわ!!」

一触即発の状況を和らげたのはみんなの太陽とごく一部で呼ばれているルッスーリアだった。パンパンと手をたたき、喧嘩はだめよ〜暗殺したいなら自分でものを調達なさい、そう言うと二人共が静かになった。

こうしてヴァリアー本部の夜は更けていくのであった。
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