補給班長の業務日誌
In the longest day in history! 01
兵站は大切だ。兵站、ロジスティクスとは大雑把に言ってしまうと戦闘行為以外の全て(憲兵や諜報は除く)のことだ。細かく言うとキリがないのでここでは割愛したい。ただ、軍の世界でどれだけ兵站が大切なのかをざっと整理してみよう。軍隊では兵士は一日に何十発もの弾薬・数キロの食料・最低(本当に最低限だ)2リットルの水を消費する。そしてそれらの物資は決まった間隔で補給・分配される。また、壊れた装備は速やかに修理されなければならない。それにも物がなければ始まらない。陸路や海路、または空路で物質は届けられ、それに関わる『すべての』人間にも当然、食料や燃料がなければ動かない。
また、前線の兵士は定期的に後方に送り返して入れ換えねばもたない。彼らを輸送するのにも莫大な食料と燃料が消えていく。
あと、兵士がとんでもなく頑丈なら別にいいのだが、戦闘になれば必ず怪我をする兵士が現れる。彼らを治療して再び戦地に送り返すための薬品も忘れてはいけない。また治す者たちにも食料や水、燃料はかかる。
全てを合わせれば戦いに必要な物資は莫大な量になることは想像できるだろう。戦争にとんでもないお金がかかることも。
第二次世界対戦、あの悪名高きマーケットガーデン作戦では―他にも山ほど要因はあるが―補給をおろそかにしたお陰で連合軍は手痛い敗北を喫した。そこから遠く離れた極東では、ガタルカナルで餓えた兵が続出し、屍の山を築いた。
今のは兵站のなかでも補給と輸送、医療、整備の部分だが、これ以外にも基地を作る人間や天気を予測する人間……他にもあらゆる人間が兵站に関わってくるのだ。兵站だけでは戦争に勝つことはできないが、軽視することは戦いに負けることになる。
そして兵站が重要なのはいろいろぶっとんだ人間が集うここヴァリアーも例外ではない。
彼らは人間として内面も外面も規格外だが、それでも人間だ。食べるし飲むし極寒地で真っ裸だと凍え死ぬし怪我もする。つまり食料も燃料も薬品も必要だ。火器をメインに扱うものには必要であれば弾薬も支給しなければならない。
加えてヴァリアーの場合は軍隊と違って大っぴらに物質を輸送することは難しいので、輸送手段のカモフラージュなども輸送部隊の仕事のひとつに加えられる。もちろん調達先も警察や軍に嗅ぎ付けられればただじゃ済まないので十分考えなければならない。
私は、ヴァリアーの補給部隊に所属している。業務内容は実に幅広く、物資の取得、貯蔵、移動、各支部への分配はもちろん、会計や物資の廃棄にまで及ぶ。計画的かつ経済的な補給と、戦況の変化に応じて必要な物資も変化する現場の声に対応できる柔軟さが求められる仕事だ。
我々はヴァリアーの総合商社といっても差し支えないだろう。
私は戦闘能力は大したことないが、このペンで戦っているのだ。
……その、はずなのだが。
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