Winning Shot

《ずっと前から好きだったんだ。付き合って欲しい。》
《あ、わ、私も…!》

「はぁ〜………」

うまくいきすぎやっちゅーねん!と一人ツッコミをいれてテレビのチャンネルを変える。見たい番組もなく、カチカチとただひたすらにチャンネルを操作しているとある番組が目に止まった。

《続いてのカップルは大学生のカップル!なんと、中学生の時から付き合ってるそうです!それでは、ご登場いただきましょう!》

よくもまあそんなに長々と付き合うてられるなあと、感心しつつもチャンネルを変えようとリモコンを握った。が、そんな俺の目を奪ったのはそこから登場してきた人物たちだった。

《どうもー、よろしゅう。》
《そぎゃん騒がんちょって。》
「………は!?」

丸くした俺の目に写っているのは、今まさに同じ大学で勉強をしている二人、白石蔵ノ介と千歳千里ではないか。いつの間にとかいろんな質問や疑問は仰山あるんやけど。大きく息を吸って叫ぼうとした瞬間、ピンポーンというインターホンが鳴った。おかげで叫べなくなってしまった、タイミング悪いわほんま。

「ども。」
「………ひ、かる…?」
「何ですか謙也さん。そんな間抜けな阿保面しよって。流石、四天宝寺一の阿保顔っすわ。」
「ちゃうわ!しかも四天宝寺一てなんやねん!!」
「そのまんまの意味っすわ。とりあえず、上がらせてください。」

おじゃましますわと言ってズカズカと人の家に上がり込んでくる態度とか、毒舌な割に優しいところとか、昔と何も変わっとらんことに安心した。ああ、この安心感。足りなかったもんを埋めていく感覚が体全体を巡る。

「お茶でええか?」
「はい、ええです。」
「………久々、やな。」
「そうですね。」
「………」
「………」

非常に気まずいこの空間に冷汗ダラダラの俺は、白石がいたら“お前どんだけシラけとうないねん!”と突っ込まれるんやろな。まあ、目の前のTVにはあいつおるけど。

「部長ら、TV出たんっすね。」
「せやな。ホンマビックリやで。」
「というか、未だに付き合うてられることにビックリっすわ。」
「せやろ?!俺、大学でもなんやめっさ気まずいねん。」
「はっ、謙也さんらしくてええんやないですか?ラブラブしとるカップルの周りでオロオロしとる謙也さんとか、最高に笑えますわ。」
「笑えるとか言うなや。これでも結構気つこうてんねん。」
「さよですか。そらご苦労様っすわ。」

絶対思ってないやろと思いつつ、昔みたいにまたやり取りできることに喜びを感じていた。中学の頃は光と白石とよくつるんでいたが、高校では光だけバラバラになって。それではじめて、“光がおらんとアカンなあ”と自覚できるようになったが、それじゃあもう遅いんだってことくらい自分にだって理解できた。

「………そっちは大学、どや?」
「まあまあ、てところっすわ。」
「さよか……」

難関大学への進学率の高かった自分の高校からは、結構な人数が自分と同じところを受けてサラッと合格した。かくいう俺も、サラッと合格できた。対して光の通った高校は、レベルはそこそこあるものの難関大学への進学率はあまり高くなく、またバラバラになっていた。自然と、それが普通であるように時が進んだ。元々光だけが別だとでもいうように。

「謙也さん。」
「ん?なんや?」
「俺……ほんまはめっちゃ後悔しとってん。」
「………は?」

急に後悔していると言い出した光に、本気で首を傾けて“は?”何がやねんという意味を込めて聞いてしまった。流石にこれはしょうがないやろ。唐突すぎて頭がついてかへんわ。

「せやから俺、後悔しとんねん。」
「いや、何にやねん。」
「勉強せんかったことに、や。」
「勉強しとったやん。」
「受験前だけっすわ。」

受験前に必死にするものじゃないのか、少なくとも自分は受験前に必死になって焦った思いでしかないと思った。それの何がアカンのか、後悔の要素になっとるんか、全く理解できていない俺に光は更に言葉をつなげてきた。

「せやから、中学時代の3年間をもっと勉強に使えばよかった言うてるんすわ。」
「いやいや、そんな必要あらへんやんけ。光は十分ええ高校、ええ大学に進学しとるやん。」
「それじゃアカンのです。」
「何がアカンのや?」
「そもそも、謙也さんがホンマはめっちゃ頭ええっちゅーことを黙っとったんがいけないんすわ。」
「いやいや……」
「俺が高校を決断する時にどれだけ焦って、ショックだったか知らんでしょう?自分の学力じゃ、また謙也さんの後輩になることは不可能だという事実。俺には地獄でしかなかったっすわ。」
「光………」
「なんすか。」
「何で、泣いとるんや……?」

は?泣いてへんし。これは汗や。そういって目元をゴシゴシとこする光の腕を掴んでやめさせる。目の周りがヒリヒリするようになんで、光。後で痛くて後悔するんは光なんやで?

「あんな、光。」

今なら言えそうな気がした。光が今まで散々後悔してきたというのなら、俺も今なら後悔しても耐えられそうな気する。せや、頑張れ謙也。

「俺な、言わなアカンことあんねん。」
「な、んです、か…?」

スウッと息を吸い込み、大きく深呼吸する。一泊おいてから意を決したように俺は目を見開き光を捉えた。今ならできる。

「俺、中学ん時からずっと光を好きやってん。」
「………」
「はは、すまん。気持ち悪いよな。」

はははーと乾いた笑をする俺はまさに惨め、や。まあ、振られる覚悟で告白したんやし、後悔してもええって思ったんやし、そこは我慢や。

「………くない……」
「ん?」
「気持ち悪くないっすわ…!」
「え?」
「俺やってずっと好きやったのに。せやのに謙也さん無駄に頭ええから、俺が追いつけへんくて結局ずっとバラバラのまんまで。どんだけ俺が悔しくて淋しかった思ってんすか……!」
「光………すまんかった。泣かんといてや。」
「ええんです、これは嬉しくて泣いてるだけっすわ。」

微笑んだ光に“勇気を出して良かった”と思い、苦しい思いをさせて悪かったなと抱きしめた。久々に触れたその身体は自分なんかよりもずっと細くて、守ってやらなアカンなと思わせた。未だ変わらず10cmくらいの身長差があるのは、光が伸びても自分も成長していたからで。心もそんな風に成長して、これから二人で一緒に歩んでいけたらええなとこれからの明るい未来を想像していた。
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提出先:半濁音
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