甘く痺れるかなしばり

「メイド&執事喫茶やってまーす!良かったらおこしくださーい!」
「お化け屋敷やってますよー!カップルの方、是非入ってくださーい!」
「3○アイスクリーム売ってまーす!いつもよりも50円お得です!」

今年も帝光中名物の文化祭の時期がやってきた。学校内は模擬店やクラス出し物の喫茶店やらお化け屋敷やらで賑わって熱気でいっぱいだ。そんな中僕、黒子テツヤはある教室を目指して歩みを進めていた。

「男女逆転、メイド&執事喫茶です!良かったらどうぞ。」

お目当ての場所はここ。別に、格段メイドや執事が好きなわけでも、はたまた女装や男装が好きなわけでもない。ではなぜここに来たのか。

「お帰りなさいませ、ご主人さっ…まっ……!?」
「こんにちは、赤司くん。あ、僕この人指名でいいですか?」
「もちろんですー。征ちゃんご指名入りましたー!」
「なっ、まて!僕はそんな指名制度しらないぞ?!」
「お客様のいうことは?」
「「「ゼッターイ!」」」
「人のキャッチフレーズをパクるな。そしていつそんな話になったんだ?」
「暗黙のルールでーす!ささ、どうぞ征ちゃんを持って行ってください!」
「ありがとうございます。では、遠慮なく。」
「おいおい、ちょっと待て。本気か、テツヤ。」
「本気ですよ?」

スタスタと歩いて席につく。もう理由はお分かりだろう。要するに赤司くんのメイド姿を見たかったというだけなのだ。そのためだけにこんな恥ずかしい店に入ったのだ。はっきり言って僕の勇気も褒めてほしいくらいです。

「そうですね、とりあえず僕のそばにずっといてください。」
「いや、それは困る。」
「さあ、どうぞ座ってください。」
「おい、人の話を聞け。せめて注文くらいはしてくれ。」
「しょうがないですね……それでは、赤司くんが“ご注文は何になさいますか、ご主人様”って言ってくれたら頼みます。」
「はあ!?そっ、そんなこと言えるわけないだろ!」
「では、注文は取り消しd」
「待て待て待て待て、わかった。言うから、注文してくれ…」

赤司くんを弄って楽しんでる僕は、傍からみればとんだ変人でドSなんだろう。でも例えそうだったとしても、楽しいのですからやめられません。

「ご、ご注文は何になさいますか…ご、主人、さ…ま…っだぁあああああ!これでどうだ!」
「そうですね……もう少し笑顔がほしいですね。」
「………は?」

目を見開いて口をポカンと開けている赤司くんの顔は、普段の態度からは想像できないくらい隙だらけです。そんなレアで可愛い顔を見られる僕は幸せだなと思います。まあ、これが恋人の特権というやつですかね。

「もう少し笑顔でお願いします。もう一度どうぞ。」
「なっ!………ご注文は、何になさいますか?ご主人、様………こ、これでどうだ!」
「ふふっ、そうですね合格です。では、注文は赤司くんで。お持ち帰りでお願いしますね。」
「は?」

本日二回目となるレア顔を写真に収めたいと思いつつ、ニコニコと赤司くんを見つめる。さて、どんな返事が帰ってきますかね?まあ、ノーという選択肢はありませんけどね。

「ヒュー!やるなあ黒子!」
「どうすんだよ赤司?!」
「もういっそのことこのまま帰ってイチャついて来いよ!」
「だ、そうですけど、どうしますか?」
「こ、こちらこそ、お願いします…」

パチパチという拍手に包まれ、歓声と共に満面の笑みを浮かべた。

そして今、再びその歓声と拍手に包まれ笑顔でを咲かせている。あれから10年、僕らは25歳になっていた。同棲を経て、結婚を決めたのはつい最近のことである。僕らの結婚式には、バスケ部のみんなや、当時のクラスメートが顔をのぞかせてくれた。そして、僕はずっとこれからも赤司くんだけを愛し続けるのだろう。これはきっと恋の金縛り、なのかもしれない。
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提出:想いの果て
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