甘蜜夜咄

「赤司くん、大人の階段を昇りましょう。」
「は?」

急にテツヤが変なことを言い出したから、間抜けな声を出してしまった。そんな俺を可愛いというテツヤは相当な変わり者だろう。それで少し嬉しいと思ってしまう僕も大概変な奴というレッテルを貼られているんだろう。まあ、そんなことはどうでもいい。問題は、さっきテツヤが発した言葉の意味だ。

「僕たちもう付き合って半年ですよ?そろそろ赤司くんのバージンを僕に捧げてください。」
「待て。付き合って半年なのは分かっている。だが、なぜそこからそういう話になるんだ?しかも僕が受けポジションだといつ決まった?」
「普通、半年も経てばシますよ。」
「そのドヤ顔やめろ。言っている内容が内容なだけに変人に見えるぞ。」

いいんです、赤司くんの処女の為ならいくらでも変人になります。そう言うテツヤの眼は冗談を言っているようには見えない。僕だって、テツヤとのそういう行為をすることを想像したことがないと言えば嘘になる。少しくらいは、いつかヤるんだろうなと期待したこともある。半年も経てばそれくらい普通なのも理解できるし、僕だってそう思う。だが、問題は僕が受けということだ。

「なぜ赤司くんが受けなのか、ですか?」
「ああ。」
「いつもは赤司くんが優位な立場にいますからね。こういう時くらいは僕に主導権を譲ってくれても罰は当たらないはずですから。」
「………やっぱり受けは嫌だ。」
「なんでです?」

なんでって、そんなの決まっている。痛いからだよ。聞いた話によると痔になるかもしれないらしいじゃないか。そんなの僕は耐えられない。確かに、僕の処女を捧げるならテツヤ以外は考えられない。うーん、と唸っていると不意に胸のあたりに違和感を感じた。

「あっ!………ぃ、あ、…」
「感じてるんですね?」
「べ、別に…そんな、こと……ないっ…」

ピタッと急に止まったテツヤの動きにホッとしつつも内心少し残念な気がしている僕がいる。一体どうしたのかと、そういう意味を込めてテツヤを見る。

「いえ……ツンデレっぽい赤司くんを犯すのもありですが、調教されて淫乱な赤司くんを苛めるのもいいなと思うんですが。」
「どっちも却下だ。」
「まあ、始めのうちはツンデレっぽい赤司くんを楽しみます。日が経てば調教できますからね。」
「僕の話を聞いていないだろう。」

楽しみですね、赤司くんと勝手に期待するテツヤをもうどうにもできない。とりあえず今日のところはまだ、大人の階段を昇らないらしい。

「残念ですか?」
「なっ!そ、そんなことない!」

クスクスと笑うテツヤを睨んだら、赤司くんはどんな顔でも可愛いですと言われて顔が真っ赤になってしまった。気がする。でもまあ、いつか自然にどっちが受けとか決めないでヤれたらいいなと思う。

甘蜜夜咄
(本当に大人になったら)(結婚してくれますか?)
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提出:瞼の裏に星雲を
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