恋愛のデータ

「天つ風 雲のかよいじ 吹きとじよ 乙女の姿 しばし留めん………まるで俺の心を歌っているようだ。」
「ん?どういうこと?」
「いや、こっちの話だ。気にしないでくれて構わない。」

-空を吹く風よ、天女の通る雲の隙間を吹きとじてしまってくれ。この美しい姿をもう暫く留めておきたいから。-
最初はただのクラスメートの女子、そのポジションに位置していた。全く興味のない存在。それが彼女に対する俺の第一印象だった。ただ、データは多いに越したことはないという理由から彼女のこともデータとして収集させてもらうことにした。それが始まりだったんだと思う。

「あはは、柳くんって意外と面白いんだね!」

彼女にそう言われた。彼女だけではない。いろんな女子から同じようなことを言われる。所詮彼女もミーハーなのだろう。安易なデータだった。ミーハーには正直いい思いはしないし興味もない。もう彼女のデータは要らないだろう。

《ガッシャーン》

勢いよく机が倒れた。いや、倒された。クラス中がざわめく。喧嘩か?そんな声が飛び交う教室で唯一俺の目に止まった人物がいた。彼女-苗字名前-だ。普段からは考えられない強い雰囲気をまとった彼女は、男の目から見てもかっこ良かったのだ。しかも、机を蹴り倒した超犯人でもある。先ほど消失した興味が一瞬で湧き返したのは言うまでもないだろう。

「あんたさ、ちょっと顔がいいからって調子乗ってんじゃねーよ?こいつに謝れ。」

俺の憶測では、ちょっとイケメンな男子が普通な男子を笑ものにしていた。そんなところだ。たぶん外れてはいないだろう。

「は?俺が謝る?んな意味わかんねーことしねえよ。」
「意味わかんないのはあんたの頭だ。人に無理難題を押し付けた挙句、出来なかったから笑い者にする。ほんと低レベルだよね。小学生に戻ったら?」
「お前に言われたくねー!人の会話に勝手に入ってくんじゃねーよ。女だからって手ださないとおもうなよっ…!!」

男の拳が勢いよく振り上げられる。マズイ、そう思って飛び出そうとしたが、その必要はなかった。サッと拳を交わし、そのまま腕を掴んで背負い投げをする彼女。クラスにいた総勢40名が呆気に取られていた。無理もない。女が男を投げ飛ばしたのだから。

「………」
「女だからってナメんなよ。今時守ってもらうだけのやわな女は流行りじゃないんだよバーカ。」

その頃からだろうか。彼女から目が離せなくなっていた。目ではいつも彼女を追っていた。自分でもらしくないなと思う。ただ、これがなんなのか。それはわかっていた。

「恋……未知の世界だな。」
「鯉?何言ってんの、柳くん?」
「いや、そっちの鯉じゃない。」
「へー。ついに柳くんにも青春がわかるようになったって訳か!」

あながち間違ってはいないが……その言い方はどうかと思う。

「なーんてね。知ってたよ。柳くんがちょっと前から恋してること。だって、顔に書いてあるもん。恋してますって。」
「そうか。苗字はこの歌を知っているか?忍ぶれど色に出でにけり我が恋はものや思うと人の問うまで」

-心に秘めてきたけれど、顔や表情に出てしまっていたようだ。私の恋は、「恋の想いごとでもしているのですか?」と、人に尋ねられるほどになって-
だいたいこんなような意味だ。まさに今の俺そのもの。

「聞いたことはあるけど、よく知らないなー。」
「そうか。ならばもっと分かりやすく言おう。」

お前はこんな俺をどう思う?最初はお前のことを興味などないと言っていた俺をどう感じる?

「俺はお前が好きだ。名前、俺と付き合ってくれ。」

沈黙が長い。たった数秒なのだろうが、何時間も黙っているような気分だ。鼓動が速い。静かにしろ。いつもの自分でない自分に、少し焦った。俺のデータには恋という経験はなかった。だが、ここでもし振られたとしても、恋というデータはきっと取れるだろう。だが、それは辛いだろうな。できれば二人で作って行きたい…

「うん、いいよ。」

幻聴が聞こえた気がした。今、なんて…?うん、と言ったのか?俺と付き合ってくれるのか。そんな確率、20%以下だと思っていたが…恋、それは時として人の才能、技術までをも狂わせるのだな。そうデータに書いておくとしよう。

*****
柊様、大変遅くなってしまい申し訳ありません!
しかも全然わけのわからない話になってしまいました…
結局何がしたかったんでしょう。
柳をせっかく所望してくださったのに、キャラ崩壊となってしまい…
そんな作品でよければ、煮るなり焼くなりお好きにしてください!

fin.2014.02.01.sat 清水爽凪
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