▼ 空は、あおいろ
あなたは、とってもふしぎなひとです。
だってあなたは、わたしの心の色を、いともたやすく、何度でも、どんな色にも、塗り替えてしまうから。
暗い海の底みたいな、孤独の藍色を、日だまりの丘みたいな、あたたかい橙色に。
疲れ果てた灰色を、くすぐったくなるような桃色に。
それはまるで、束になったカラフルな色画用紙を一枚ずつめくっていくときのように。あなたのひとことや、表情や、触れた感触が、わたしの心の色を、ひとつひとつ、変えていく。
心がこんなにも色づくものだったなんて、知りませんでした。
わたしの心の色は、あなたに出会って、鮮やかになり、やさしくなり、ときに濁って、澄み切って――ほんとうに、めまぐるしい。
自分でも笑ってしまうくらい。
魔法みたいで、嘘みたいで、笑ってしまうくらい。
さっきまでわたしは泣いていたはずなのに、慰めるわけでもないあなたの少しのことばで、あっさりと泣き止んで、冗談すら言えるわたしになっている。
だれのことばも、素直にきけなかったわたしが。
心の色が変わる瞬間が、わかる。
こんなことは、はじめてです。
だけど、心の色を変えるひと、だなんて伝えても、あなたは首をかしげるでしょう。
笑い飛ばすかもしれません。
目には見えないものを、伝えることは難しい。
だからわたしは、心のなかで、あなたがくれた無限の色彩を、描いていく。
この、純白のドレスの上に。
こうすれば、あなたにもきっと、見えるでしょう?
あなたの心に、届くでしょう?
そう。ぜんぶ、あなたがくれたものです。
「病めるときも、健やかなるときも」
これからはわたしが、あなたにたくさんの綺麗な色を、見せてあげたい。
そんなことを今、思っています。
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