小話 | ナノ


▼ 少女万華鏡/記憶盗人

少女万華鏡




愛する少女を万華鏡に閉じ込めた。


覗き込んでくるくると回すと、少女は跳ね、倒れ、身悶える。

時折血を流し、青痣を作り、涙を流す。


僕はただ、飽きもせずにそれを眺めている。


少女は僕に抗えない、というのがいい。

これが、直接触れて押さえ付けては、意味はないのだ。


触れられない。僕に汚されない。綺麗なままで。硝子越しに、少女を支配する。



『愛しているなら、触れて汚してしまいたいものではないの』と、友人は言う。

なんとつまらないことを言う女だろう。

だからあの女は悪趣味だというのだ。


僕が触れた分だけ、少女の少女である部分が擦り減ってしまうではないか。

僕無しで、少女は完成している。

誰にも、僕にも、触れさせてはいけない。



閉じ込めて、くるくると弄び、ただ眺める。


決して言葉など交わさない。

少女の瞳には、僕の目玉だけが映る。


甘く美しい、痛ましくて清らかな、無垢に絶望した――次々と姿を変える愛しい少女を、僕は永遠に、眺めているのだ。

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