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 はじめてのおつかい

「えっ!アルバートさん、きょうがおたんじょうびだったんですか!?」



俺は、面倒なことになったとため息をついた。



「……ステラ、ミリアムに余計なことを吹き込むなと何度言わせるんだ」


「だってアルバート様、お祝いしなくちゃいけませんでしょう?」


「誕生日にはしゃぐような年齢じゃない。だいたいミリアムがそんな話を聞いたら……」



ちらりと斜め下に視線を遣ると、案の定ミリアムは真剣な顔でこちらを見上げていた。


「わたし、アルバートさんになにかあげたいですっ!」


ほら見ろ、厄介なことになった。


「ミリアム、ペットは飼い主に誕生日プレゼントなんかあげないもんだ」

「アルバート様!それはおやめなさいと何度申し上げたらおわかりいだけるんです!」

「……悪かったよステラ。しかしプレゼントはいらないと言い含めるにはこれしかないだろう」

「そんなことございませんよ!」


ステラはミリアムの前にしゃがみ込んだ。



「ミリアムお嬢さん、私と一緒に今日のごちそうを作りましょう。そうすれば、アルバート様は喜んでくださいますよ」

「……!はい、ステラさん!」


ミリアムはこくこくと頷く。


成る程、ステラはやはり子供の扱いが上手い。


俺は少しだけ感心したのち、中断されていた昼寝に戻るため、ソファの方へ向かった。


と、


「ステラさん、おたんじょうびなら、ケーキはつくりますか?」


ミリアムがステラのスカートの裾を引っ張って尋ねた。


「ケーキ、ですか。いつもアルバート様がいらないとおっしゃるから用意していなかったんですけど……お嬢さんは食べたいですよねえ、うっかりしてたわ」


ステラは困ったように頬に手を当てる。


「ちがうんです。ケーキは、わたしたべたことないから、たべたいかどうかよくわかりません」


俺は思わず足を止めて振り返る。


「そうじゃなくて、えほんのなかでおたんじょうびのひとはいつも、ケーキをたべていたんです。だからケーキをたべたら、アルバートさんはもっとうれしいのかとおもったんです」



俺は、いくつか外していたシャツのボタンを留めた。

「……ケーキを買って来る」



しかし。


「だめです!おたんじょうびのひとはなにもしちゃだめなんです!だからわたしがかいにいきます!」


ミリアムが足にまとわり付いてきた。

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